日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
53 巻 , 4 号
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目次
尼子賞受賞講演
原著
  • 守谷 恵未, 松山 美和, 犬飼 順子, 道脇 幸博, 岩渕 博史, 小笠原 正, 松尾 浩一郎, 角 保徳
    2016 年 53 巻 4 号 p. 347-353
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    目的:口腔細菌は,誤嚥性肺炎を含めた全身の疾患と密接に関係していると考えられている.誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが極めて重要であるが,その方法は施設や術者により様々であり,中には誤嚥のリスクを伴う口腔ケア方法も存在する.口腔ケア中の誤嚥性肺炎起炎菌を含む洗浄水の誤嚥のリスクを低下させるため,本研究では,水を使わない口腔ケアに必要かつ適正な物性を持つジェルを開発し,その物性およびプラークの除去,咽頭への流入しにくさについて評価・検討を行った.方法:ジェルの物性評価は,医療従事者31名を評価者とし,VASを用いた主観的物性評価と口腔内官能評価から,試作ジェル3種類(A~C)と市販の保湿ジェル3種類(D~F)を比較した.プラーク除去効果の評価は,健常者20名を対象とし,物性評価において最も評価が高かったジェルをジェル使用時,水道水を水使用時とし,歯科衛生士によるブラッシングにより評価を行った.評価はModified PCRを用い,ブラッシング前後のプラークの減少率を比較した.また,ブラッシング時の吸引回数をカウントし,咽頭への流入しにくさについてジェル使用時と水使用時における差を評価した.結果:物性評価において,試作ジェルBはその他5種類のジェルに比べ,有意に評価が高かった.プラークの除去効果において,Modified PCRの減少率はジェル使用時の方が水使用時よりも有意に高かった.また,吸引回数はジェル使用時の方が有意に少なかった.結論:新規に開発した試作品ジェルBは物性評価にて良好な結果を得た.さらにプラークの除去効果や咽頭への流入しにくさにて有効性を確認した.洗浄水ではなくジェルBを使用することにより口腔ケア時に流入しにくくなる可能性があるため,今後の臨床試験に期待したい.

  • 宮前 史子, 宇良 千秋, 佐久間 尚子, 新川 祐利, 稲垣 宏樹, 伊集院 睦雄, 岡村 毅, 杉山 美香, 粟田 主一
    2016 年 53 巻 4 号 p. 354-362
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,地域に暮らす高齢者が自分自身で認知機能や生活機能の低下に気づき,必要なサービス利用につながるようにするための自記式認知症チェックリスト(以下チェックリスト)を作成することにある.本研究では先行研究で因子的妥当性と内的信頼性を確認したチェックリストの併存的妥当性と弁別的妥当性を検証した.方法:特定地域に在住する65歳以上高齢者7,682名を対象に3段階の調査を行った(一次調査:郵送留め置き回収法による自記式アンケート調査,二次調査:看護師による訪問調査,三次調査:医師と心理士による訪問調査).併存的妥当性を確認するために,チェックリストの得点と心理検査得点のSpearman相関係数を算出した.弁別的妥当性を確認するために,チェックリスト総合得点の平均をClinical Dementia Rating(CDR)スコアの群間で比較し,Receiver Operating Characteristic(ROC)分析を用いて認知症の弁別力を検討した.結果:三次調査まで完了した131名を分析対象にした.チェックリストの得点は,Mini-Mental State(MMSE)およびFrontal Assessment Battery(FAB)の得点と有意に相関し(MMSE:r=-0.536,P<0.001;FAB:r=-0.457,p<0.001),CDR1以上群の平均得点はCDR0及びCDR0.5群より有意に高く,認知症(CDR1以上)と非認知症(CDR0または0.5)を有意に弁別した(曲線下面積AUC=0.75,95%信頼区間:0.62~0.89,P<0.01).両群を弁別する最適のカットオフ値は17/18で,感度72.0%,特異度69.2%であった.結論:チェックリストの併存的妥当性と弁別的妥当性が確認された.しかし,認知機能低下高齢者のスクリーニング・ツールとして使用するには弁別力が不十分であり,普及啓発用のツールとして使用することが推奨される.

  • 菊地 和則, 伊集院 睦雄, 粟田 主一, 鈴木 隆雄
    2016 年 53 巻 4 号 p. 363-373
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    目的:認知症の徘徊による行方不明死亡者の死因の違いによる,行方不明から死亡に至るまでの過程の違いを明らかにし,捜索の効率化と死亡の予防に資することを目的としている.方法:2013年中に警察に行方不明者届が出された人の中で,認知症(疑いを含む)により行方不明になった10,322名の中から,死亡者全数である388名の家族を対象として,厚生労働省が警察庁の協力を得て自記式調査票による郵送調査を行った.郵送調査は2015年1月5日から2月2日に実施された.個人情報を除いたデータが厚生労働省から研究班に提供され,死亡者の中で死因が記載されていた61名を分析対象とし,χ2検定(Fisherの直接法)と残差分析により,死因の違いに関連する要因を検討した.なお,死因は先行研究を参考に「溺死」,「低体温症」,「その他」の3つに分けた.結果:分析の結果,死因が「低体温症」では死亡推定時期が行方不明から「3~4日目」,死因が「その他」では「当日」が有意に多くなっていた.また有意差は無かったが溺死の場合,4割以上が「当日」に死亡していた.結論:徘徊による行方不明死亡者には,死亡に至るパターンが少なくとも3つある可能性が示された.即ち,①行方不明後すぐに自動車事故などによる外傷や溺死,病状悪化などによって死亡するパターン,②数日間徘徊して徐々に体力を奪われた末に低体温症などで死亡するパターン,およびこれら2つに当てはまらない,③その他のパターン,である.

  • 西岡 弘晶, 荒井 秀典
    2016 年 53 巻 4 号 p. 374-378
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    目的:超高齢社会である我が国では後期高齢者(75歳以上)が増え,その死亡者数が増加している.終末期においても高齢者特有の問題があり,高齢者終末期の医療やケアをどうするのがよいか,は大きな課題である.これまで,終末期の医療やケアについて,後期高齢者自身がどのような考えや希望を持っているかを,若い人たちと比べて検討した報告はほとんどない.今回その特徴を明らかにする目的でアンケート調査を実施した.方法:2005年3月に行った高齢者医療に関する市民公開講座の参加者にアンケート調査を行い,回答のあった176名(平均64.7歳)を解析対象とした.リビングウィルや尊厳死の宣言書を知っているか,終末期の治療方針を決めるのは誰が適当か,終末期に希望する栄養補給法はどれか,終末期に受けたくない医療行為はどれか,を質問した.74歳以下群と75歳以上群にわけ,回答を比較した.結果:リビングウィルを知っている人は全体の49%,作成済みの人は8%で,2群間で差はなかった.治療方針の決定者に「自分」を選ぶ人が両群とも最多であったが(74歳以下76%,75歳以上63%),75歳以上では「担当医」の割合が増えた.「家族」を選ぶ人は両群でほぼ同じであった(74歳以下16%,75歳以上14%).終末期の栄養補給法に経口摂取だけを望む人は全体の54%で,2群間で差はなかった.終末期に受けたくない医療行為については,75歳以上のほうが,それらを選ぶ人の割合が少ない傾向があった.結論:後期高齢者も74歳以下と同様に終末期医療やケアについて自己決定を望む人が多かった.終末期に希望する栄養補給法や希望しない医療行為に,大きな違いは見られなかった.高齢者本人の意思決定をサポートし,高齢者の過剰医療にも過少医療にも注意を払うことが大切であることが示唆された.

  • 奥山 真由美, 西田 真寿美
    2016 年 53 巻 4 号 p. 379-386
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    目的:特別養護老人ホームに入居中の要介護高齢者の脱水症の前段階状態に関連する要因を,腋窩皮膚温・湿度,口腔内水分量,唾液成分との関連から検討した.方法:特別養護老人ホームに入居中の要介護高齢者78名(男性11名,女性67名,平均年齢86.6±7.3歳)を対象とした.本研究では,血清浸透圧値により2群に分類した.血清浸透圧値の基準値上限である292 mOsm/kg・H2O以上かつ脱水症の診断基準値300 mOsm/kg・H2O未満の者を境界域群とし,292 mOsm/kg・H2O未満の者を正常域群とした.調査項目として,基本属性(年齢,性別,自立度),BMI,食事形態,体重1 Kgあたりの1日水分摂取量,生理学的指標(血圧,脈拍,体温,腋窩皮膚温・湿度,体水分量,体水分率,内液率,外液率,血液成分,口腔内水分量,唾液成分),室内環境(室温・湿度)を測定した.統計解析は,境界域群・正常域群別の比較を行い,そのうち,血液成分を除く有意水準が0.05未満の変数を選択し,境界域群を目的変数とし,年齢,体重1 kgあたりの1日水分摂取量(25 ml未満/25 ml以上)を調整変数としてロジスティック回帰分析を行った.結果:単変量解析にて有意差のあった項目は,血清ナトリウム値,血清クロール値,血糖値,血清クレアチニン値,尿素窒素/クレアチニン比,腋窩皮膚温,部屋湿度であった.ロジスティック回帰分析の結果,最終モデルにおいて腋窩皮膚温(オッズ比:3.664,95%信頼区間:1.101~12.197,p=0.034)のみが有意な関連を示した.結論:腋窩皮膚温が1単位上昇するに伴い,正常域群に対して境界域群であるリスクが3.67倍であった.以上より,脱水症の前段階状態には,腋窩皮膚温が関連することが示唆された.

  • 駒井 さつき, 渡邊 裕, 藤原 佳典, 金 憲経, 枝広 あや子, 河合 恒, 吉田 英世, 大渕 修一, 田中 弥生, 平野 浩彦
    2016 年 53 巻 4 号 p. 387-395
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    目的:地域在住高齢者における栄養評価指標(BMI,Alb,体重減少の有無)とサルコペニア重症度との関連について,その分布状況を明らかにすること.方法:対象者は,2013年包括的健診に参加した65歳以上の地域在住高齢者758名.長寿医療制度(後期高齢者医療制度)に準じ75歳をカットオフ値として2群に分類した.調査項目は,基本属性(性別,年齢,MMSE,基本チェックリスト,老研式活動指標),身体計測(身長,体重,体脂肪率,四肢骨格筋量),運動機能評価(握力,歩行速度),血液生化学検査(Alb,Cr,HbA1c,HDL-chol,Hb,Ht).四肢筋肉量の測定にはBIA法(InBody720(Bio Space社製))を用い四肢SMIを算出した.対象者は,栄養状態の評価指標としてBMI,Alb,「6カ月間で2~3 kgの体重減少の有無」を用いた.BMIはBMI判定基準分類に基づき3群に分類し(以下BMI 3群:<18.5;低体重群,18.5~25.0;普通体重群,>25.0;肥満群),Albは,3.8 g/dLをカットオフ値として2群に分類(以下Alb 2群:Alb高値群,Alb低値群),体重減少の有無は基本チェックリスト「11.6カ月間で2~3 kg以上の体重減少はありましたか.」より2群に分類し検討を行った(以下 体重減少2群:体重減少なし群,体重減少あり群).サルコペニア重症度の分類は,European Working Group on Sarcopenia in Old People(EWGSOP)の診断概念に基づき,カットオフ値はAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)に準じ4群に分類した(以下サルコ4群:non- 群,pre- 群,sarco- 群,severe- 群).結果:サルコペニアの出現頻度は,男性ではsarco- 群5.6%(n=18),severe- 群1.2%(n=4)であり,女性ではsarco- 群7.8%(n=34),severe- 群1.6%(n=7)であった.BMI 3群別のサルコ4群の分布状況では,後期高齢者の普通体重群(BMI 18.5~25.0)においてsarco- 群が10.4~15.6%存在し,特に女性後期高齢者では肥満群(BMI>25.0)においてもsarco- 群が5.7%(n=2),severe- 群が2.9%(n=1)存在することが明らかとなった.また,Albの水準によりサルコペニア重症度の分布に影響は認められず,体重減少の有無においては男性後期高齢者においてのみ関連が認められ,体重減少あり群は男女ともBMI 18.5 kg/m2ならびにAlb 3.8 g/dL以上に80.0%以上出現していた.結論:後期高齢者では,普通体重群においてもsarco- 群とsevere- 群が存在し,特に女性後期高齢者においては,肥満群においても存在していた.Albの水準によりサルコペニア重症度の分布状況に影響は認められず,体重減少の有無との検討においては男性後期高齢者においてのみ関連が認められた.体重減少あり群はBMI 18.5 kg/m2ならびにAlb 3.8 g/dL以上にも存在し,BMIとAlb,体重減少の有無による栄養状態の評価だけでは低栄養高齢者,サルコペニア高齢者を十分にスクリーニングできないことが示された.

  • 岡田 浩佑, 山口 弓子, 鎌田 七男, 岡田 正浩, 加藤 重子, 佐々木 秀美
    2016 年 53 巻 4 号 p. 396-403
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    目的:われわれは,多剤処方(Polypharmacy)に関する研究の一環として,高齢者に対する必要性の低い薬剤,特に抗潰瘍薬につき検討を行った.方法:原爆養護ホーム神田山やすらぎ園の2012年4月~2015年11月の入園者160名について,必要性の低い薬剤,特に抗潰瘍薬の節減に関連して,プロトンポンプ阻害薬の長期間内服者の便ピロリ菌抗原,血中抗体,血清ペプシノゲンIおよびIIを測定した.結果:2012年4月と2014年8月時点での6剤以上使用者は,それぞれ55.2%と49.0%で,抗潰瘍薬の使用者は,それぞれ50.0%と49.0%であった.抗潰瘍薬使用者のうち20名について,ピロリ菌やペプシノゲンについての測定を行ったが,その測定結果は抗潰瘍薬使用の継続や中止の判断に役立たなかった.むしろ,自覚的症状,他覚的徴候にもとづき中止を試みたところ,抗潰瘍薬使用者の多くが中止可能で6.0%になった.結論:特別養護施設において,多剤処方の形で最も頻繁に使用されている抗潰瘍薬は,入園者がステロイド薬服用中その他特別の状態であることを除けば,自覚症状や他覚的徴候のもとに多くの場合,使用中止が可能であると判断された.すでに実施した利尿薬節減による転倒骨折の減少効果,高カリウム血症治療薬の使用中止,造血薬葉酸の使用中止などを参考に,今後,高齢者の睡眠薬,下剤,その他の薬剤使用の改善について検討することが必要である.

  • 坂井 敬三, 増田 靖彦, 宮西 邦夫
    2016 年 53 巻 4 号 p. 404-411
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    目的:介護老人保健施設(老健)を利用する重度認知症高齢者(重度認知症者)の緩和ケアの導入には施設ケアアセスメントが不可欠であるが,その諸因子と予後に関する研究報告は皆無に近い.本研究は認知症者の入所時諸因子のうち予後関連因子を明らかにすることである.方法:緩和ケアを望む当老健に入所した重度認知症者177名を対象とした.諸因子として,基本情報(年齢85歳以上,性別男性,要介護5,入院歴),生活動作機能(ADL:食事摂取,着座,語彙,車椅子移動,排便),合併症(3カ月以内の肺炎歴:肺炎歴,BMI<18.5,低アルブミン血症:Alb<3.5 g/dl),慢性腎臓病:ステージ3以上,うっ血性心不全)をあげ,これらの該当状況別に,3・6・9・12カ月毎の死亡率などとの関連を検討した.緩和ケアの内容は,本人・代理人へのインフォームド・コンセントを踏まえた嗜好,嚥下能力,病状などを評価した療養食,合併症の予防,管理,早期診断・内服治療などの多職種協働による包括的施設ケアである.結果:①「経口食自己摂取不能(経口食全介助)」および「低アルブミン血症」のそれぞれの該当群は非該当群に比し,すべての3カ月毎の死亡率が有意に高かった.②「肺炎歴」群の死亡率と「経口食全介助」群および「低アルブミン血症」群との死亡率が有意の関係を示した.③「経口食全介助」と「低アルブミン血症」の2因子の該当状況の3群化による経時的死亡率は「2因子該当」群>「いずれか1因子該当」群>「2因子非該当」群となり,これらの関係に有意を認めた.結論:諸因子のうち「経口食全介助」と「低アルブミン血症」が重度認知症者に対する予後関連因子と思われ,この2因子の保有状況が予後予測尺度になる可能性が示唆された.

  • 林 悠太, 波戸 真之介, 今田 樹志, 小林 修, 阿部 勉, 大沼 剛, 島田 裕之
    2016 年 53 巻 4 号 p. 412-418
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    目的:本研究では,通所介護サービスにおける理学療法士(以下,PT)・作業療法士(以下,OT)配置の有無が利用者の歩行機能に与える影響について調査し,重度化予防及び活動と参加の自立支援を目的とした効果的なサービス形態について,普遍化することを目的とした.方法:対象は全国のデイサービスを利用していた高齢者で,ベースライン時と1年後に通常歩行速度を測定できた830名(平均年齢83.7±6.8歳,男性252名,女性578名)とした.調査項目は,ベースライン時の性別,年齢,要介護,通所介護利用回数とした.対象者をPT,またはOTが配置されている事業所を利用している者(以下,PTOT群)と,配置されていない事業所を利用している者(以下,対照群)の2群に分け,ベースライン時の各変数に差がないことを確認するため,単変量分析を行った.次に配置の有無と時間を要因とした反復測定分散分析を行い,その後の検定として,各群でのベースライン時と1年後の歩行速度の差と各時点における群間差を確かめるために単変量解析を行った.結果:反復測定分散分析により,歩行速度に関しては,時間の主効果はなく,PT・OT配置の有無に関する主効果,時間と群の交互作用は認められた.また,群ごとにベースラインと1年後の歩行速度を比較すると,PTOT群では有意差は認められず,対照群では有意に低下していた.さらに,群間差を比較すると,ベースラインでは有意差は認められないが,1年後は有意差が認められた.結語:通所介護サービスにおいて,PT・OTの配置が歩行機能低下の抑制につながっていることが示唆された.要介護高齢者の歩行速度はADLや死亡率と関連してくるため,通所介護サービスにおけるリハビリ専門職配置の必要性が示唆される.

症例報告
  • 入來 泰久, 桶谷 直也, 大石 充
    2016 年 53 巻 4 号 p. 419-423
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    症例は85歳男性.高血圧,脂質代謝異常に対し内服加療中.以前より起立時にふらつきを自覚していたが,胸部違和感およびふらつきを自覚し当科外来受診.頭頸部MRIおよび心エコーでは異常を認めず,心筋シンチで虚血が疑われたが,冠動脈造影検査では有意狭窄を認めなかった.ホルター心電図では最長2秒の洞停止のみで症状との関連もなくペースメーカーの適応はなかった.原因精査のため,植込み型心電図ループレコーダーを植え込んだ.植込み後,同様の症状を多数自覚.遠隔モニタリングを行っていたが,高齢の為上手く送信できておらず,有症状でも不整脈イベントが認められなかったことからループレコーダー摘出目的で入院.入院時にレコーダー記録をチェックしたところ洞不全による3秒以上のポーズ271件,最長4秒のポーズがあり,症状とも一致し洞不全症候群と診断した.ループレコーダー摘出とペースメーカー移植を行った.ペースメーカー移植後には症状は消失し洞不全がふらつきの原因であったことが確認された.高齢者のふらつきは多く,原因を特定しかねることがあるが,植込み型心電図ループレコーダーが有効であったこと,高齢者の遠隔モニタリングが容易ではないことが確認されたため報告する.

  • 斉藤 誠, 森岡 正信
    2016 年 53 巻 4 号 p. 424-430
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/24
    ジャーナル フリー

    後天性血友病Aは凝固第VIII因子に対する自己抗体(インヒビター)が原因と考えられる出血性疾患である.その治療は出血に対する止血治療とインヒビターの除去を目的とした免疫学的療法に大別されるが,今回,われわれはそれぞれの治療に難渋した高齢者・後天性血友病Aの2例を経験したので報告する.症例1は89歳,女性.10日程前から左下腿に皮下出血がみられ,入院となる.APTTが127.7秒と延長,第VIII因子活性は1.0%と低下,第VIII因子インヒビターが陽性(48 BU/ml)であり,後天性血友病Aと診断した.入院後に下血もみられ,大腸内視鏡検査では粘膜から血液の滲出を認めた.プレドニゾロン(PSL 0.5 mg/kg)投与を開始,3週間後からシクロホスファミド(CPA 50 mg)を併用し,治療開始から約2カ月後で第VIII因子インヒビターは3.4 BU/mlまで低下した.しかし,活性型第VII因子製剤(rFVIIa)の投与中はほぼ止血できるが,休薬後に再出血をきたし,止血のコントロールが不良となり,さらに肺炎も併発し,死亡された.症例2は81歳,女性.4カ月前から皮下出血がみられ,貧血(Hb 9.2 g/dl)とAPTTの延長(78.7秒)を認め,入院となる.第VIII因子活性は0.9%と低下,第VIII因子インヒビターは1,364.9 BU/mlと著しく高値を呈し,後天性血友病Aと診断した.PSL 0.5 mg/kgで治療を開始し,1カ月後からCPA 50 mgを追加したが,奏効せず,出血徴候は遷延し,Hbは8.0 g/dlまで低下した.その後に肺炎も併発したが,リツキシマブ(375 mg/m2)を週1回,4週間投与した後から第VIII因子インヒビターが確実に低下し始め,治療介入から1年5カ月後にインヒビターが消失した.この間,時に鼻出血や打撲部の皮下出血を呈したが,一度もrFVIIaなど,バイパス止血製剤を投与することなく止血できた.

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