日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
54 巻 , 2 号
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目次
総説
  • 真鍋 一郎
    2017 年 54 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/07
    ジャーナル フリー

    慢性炎症は生活習慣病やがんを含む加齢関連疾患に共通する基盤病態である.また,高齢者では慢性炎症が起きやすくなっており,加齢に伴う炎症(inflammaging)が加齢関連疾患の発症や進展に寄与していることが考えられる.高齢者で慢性炎症が起きやすくなっている原因として,加齢に伴う免疫系自体の変化(免疫老化),組織の変化や全身的な代謝や内分泌系の変化など,多様な要因が複雑に絡み合っていると考えられる.免疫老化は,免疫系の正確性と効率を低下させ,獲得免疫系の低下をもたらすだけでなく,慢性炎症も起こりやすくする.組織では自然免疫系を活性化するダメージ関連分子パターンの増加や,老化細胞からのSASP因子が炎症を誘導・促進する.ホルモンや代謝の変動による体内の内部環境の変化も炎症の基盤となる.加齢に伴う慢性炎症の誘導と拡大を制御する分子機序の解明は加齢関連疾患の理解の上で重要であり,新たな治療標的やバイオマーカーの同定にもつながるだろう.

老年医学の展望
特集
老年医学update―被災地の高齢者医療
原著
  • 根本 裕太, 佐藤 慎一郎, 高橋 将記, 武田 典子, 松下 宗洋, 北畠 義典, 荒尾 孝
    2017 年 54 巻 2 号 p. 143-153
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/07
    ジャーナル フリー

    目的:要介護認定を受けていない地域高齢者を対象に認知機能低下の有無と身体活動,座位時間,社会参加活動の有無との関連について横断データを用い男女別に検討した.方法:地域在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者1,133名を対象に,郵送法による質問紙調査を実施した.調査対象者1,133名のうち,調査項目に欠損のない有効回答者929名(有効回答率82.0%)を解析対象者とした.認知機能低下と身体活動,座位時間,社会参加活動との関連を検討するため,ロジスティック回帰分析を男女別に実施した.解析においては3段階のモデルを踏まえて行った.モデルIでは調整変数を投入せずに解析し,モデルIIでは年齢,最終学歴,飲酒状況,喫煙状況を調整変数として投入した.さらに,モデルIIIではモデルIIの調整変数に抑うつを加えて検討した.結果:男性の32.9%,女性の26.4%が認知機能低下を有していた.ロジスティック回帰分析の結果,男性においては,社会参加活動はモデルIおよびモデルIIで有意な関連が認められたが,モデルIIIでは有意な関連がみられなかった.社会参加活動の内容においては地域組織活動と政治経済活動がモデルI,IIで有意な関連が認められた.一方,女性においては,身体活動はモデルIでは有意な関連が認められたが,モデルII,IIIでは有意な関係は認められなかった.社会参加活動はモデルI,IIで有意な関連が認められたが,モデルIIIでは有意な関係は認められなかった.社会参加活動内容はボランティア活動がいずれのモデルにおいても有意な関連が認められた.結論:本研究の結果から,女性のボランティア活動がいずれのモデルにおいても有意な関連が示された.今後は本結果を踏まえ,抑うつ状態を考慮した上で社会参加を促す認知症予防プログラムの開発が望まれる.

  • 池田 登顕, 山田 拓実
    2017 年 54 巻 2 号 p. 154-164
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/07
    ジャーナル フリー

    目的:高齢者の社会参加に対する支援や介入は介護予防の観点から重要である.しかし介護予防において重要とされている要介護度認定を受けていないフレイルや軽度要介護度認定高齢者に対して適用可能な社会参加指標は存在していない.そこで本研究では,地域在住のフレイルおよび軽度要介護度認定高齢者の社会参加指標原案を開発することを目的とした.方法:原案開発に用いた調査票は先行研究より抽出した37項目とした.本研究対象者の取込み基準として日本語を母国語としている東京都三鷹市在住の65歳以上で要介護度認定を受けていない高齢者,要支援1および2,要介護1および2の認定を受けている高齢者とした結果,計342名の高齢者が調査に参加した.一次集計にて調査項目全てを回答していない対象者14名を分析から除外し328名を分析対象者とした.次に分析対象者を「非フレイル」,「フレイル・ハイリスク」,「要支援1」,「要支援2」,「要介護1」,「要介護2」の6グループに分けそこから各グループ男女それぞれ15名ずつをランダムに抽出した.ランダム抽出後,ランダム抽出対象者においてRasch分析を用いて原案の項目精選を行い,infit値およびoutfit値が>0.7,<1.4となるまで続け最終的に残った項目を原案とした.また信頼性の検証として,Cronbachのα係数を原案の質問項目において算出し内的一貫性を検証した.結果:ランダム抽出した170名におけるRasch分析の結果,37項目から最終的に22項目が残った.またCronbachのα係数は全22項目において0.86~0.87であった.結論:今回,地域在住のフレイルおよび軽度要介護度認定高齢者の社会参加指標の原案を開発した.Rasch分析により精選した22項目を社会参加指標の原案とし,信頼性および妥当性ともに確認された.本尺度の完成により社会的フレイルの有用な評価尺度としての利用が期待される.

症例報告
  • 野本 愼一, 内海 桃絵, 笹山 哲, 出木谷 寛
    2017 年 54 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/07
    ジャーナル フリー

    われわれは,療養者が情報発信の中心となる「Patient-Centricity」というコンセプトを有するクラウド型在宅医療情報共有システム(電子連絡ノート・システム)を独自に作成した.このシステムが在宅医療における療養者と医療介護職(多職種)間の連携に及ぼす効果と課題について検討するため,療養者が散在しアクセスが容易でない中山間地域で実証実験を行ったので報告する.

    人口15,732人,高齢化率34.8%,総面積の83%が森林で占められている中山間地域で,7医療施設の多職種18名と,療養者9名が実証実験に参加した.

    電子連絡ノート・システムは療養者と多職種を個別に紐付けするシステムで,二つのアプリケーションから構成されている.一つは療養者自身が主体となって日々の健康情報を発信するための「電子連絡ノート」であり,もう一つは多職種が担当する療養者の情報を共有し閲覧・応答するための「ケアサポ」である.これらをプレインストールしたiPadを療養者と多職種に配布し,54日間の入力件数,入力内容を検討した.

    その結果,療養者からの入力は全体の61.6%で一番多く,ついで訪問看護師からは19.9%であったのに対し,医師からの入力は0.7%であった.高要介護度群の療養者と多職種からの合計入力件数は低要介護度群のそれに比べ有意に多かった.

    療養者を情報発信の中心とするクラウド型在宅医療情報共有システムは,療養者には日々の状態をいつでも伝えられる安心感を,多職種には訪問前に療養者の健康情報を把握できる安心感をもたらした.また,その入力件数は多くの医療職が関与している高要介護度群に有意に多かった.

  • 神野 文香, 井出 佳奈, 栗田 健市, 寺野 隆, 山本 恭平
    2017 年 54 巻 2 号 p. 172-178
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/07
    ジャーナル フリー

    症例は80歳の女性.低血糖を主訴に紹介となり,精査の結果からインスリノーマの診断となった.御本人・御家族が外科的治療を拒否したため,補食,あるいはオクトレオチドによる内科的治療を検討した.

    オクトレオチドは膵臓のインスリン分泌を抑制するが,その効果は一定ではないため,明確な投与基準は存在しない.そこで,本症例では持続皮下血糖測定器(以下CGMと略す)を用いてオクトレオチドの効果を確認した.解析結果より,午後11時に100 cal程度の補食をした場合,あるいは眠前にオクトレオチドを投与した場合に夜間の低血糖を防止することができた.しかし患者本人は,高齢であり軽度の麻痺があるために自己注射は困難であった.そこで補食による低血糖予防を選択し退院となった.しかし,就寝時間に制限のある生活に疲労がみられたため,病院で注射が可能なオクトレオチドLAR10 mgを投与し,効果をCGMにて確認したところ,低血糖予防に有用であった.来院時に月1回オクトレオチドLARを投与し低血糖を予防したところ,患者の生活制限も軽減しQOLの向上が見られた.

    高齢インスリノーマ患者で,オクトレオチドLARにより低血糖の予防を試み,患者のQOLを向上させることができた症例を経験したので報告する.

  • 大野 一将, 小原 聡将, 竹下 実希, 井上 慎一郎, 水川 真二郎, 長谷川 浩, 神﨑 恒一
    2017 年 54 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/07
    ジャーナル フリー

    症例は86歳男性,ADLは自立しており,70歳で遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia:以下HHT)と診断された.以来当科外来に通院していたが,今回初発の意識障害を来し,当院に緊急入院となった.受診時に羽ばたき振戦を認め,血清アンモニア値は128 μg/dlと高値であり,肝性脳症と診断した.精査のため血管造影を行ったところ,肝内びまん性門脈肝静脈シャントを認め,それに伴った肝性脳症と診断した.HHTの本態は,血管構築の異常による末梢血管拡張やシャント血管の形成が特徴であり,さらに年齢を重ねるごとにシャント量が増加する.そのため,高齢になると肝内びまん性門脈肝静脈シャントをも形成し,ごく稀に肝性脳症を来たすことがある.近年,本疾患の管理の質が向上しHHT患者は高齢化してきている.今後肝性脳症をきたすHHT患者が増加すると予想されるため貴重な症例と考え,ここに報告する.

  • 川上 恭子, 芳野 弘, 五十嵐 弘之, 千葉 義幸, 芳野 原, 弘世 貴久
    2017 年 54 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/07
    ジャーナル フリー

    特発性正常圧水頭症(Idiopathic normal pressure hydrocephalus:iNPH)はくも膜下出血,髄膜炎などの先行疾患がなく,歩行障害を主体として認知機能低下,尿失禁をきたし髄液循環障害に起因する脳室拡大を伴う病態である.今回,インスリン手技困難を契機にiNPHを診断しえた高齢2型糖尿病患者について報告する.症例は80歳,男性.当院内科に糖尿病にて外来通院中であった.20XX年3月中旬,自分で打っているインスリンの単位が分からなくなり,最近は他院の薬剤が内服できていないことに家族が気づいた.外来受診時の採血でHbA1c 8.4%と増悪し同年4月初旬に記憶障害および糖尿病精査加療目的にて入院となった.身体所見では外股,歩幅狭小といった歩行障害を認め,検査所見ではCK 326 IU/lの軽度上昇,随時血糖243 mg/dl,HbA1c 8.0%と糖尿病の血糖コントロールが不良であった.入院後より家族の問診からインスリンの手技が覚えられない,歩行障害,転倒,尿失禁があったことや長谷川式スコア(HDS-R)が10点と低値であることから,神経疾患や認知症の存在の可能性を考慮した.画像検査にて頭部MRIでは高位円蓋部の狭小を,水平断でEvans index 0.29とわずかに基準値以下であったものの脳室の拡大を認めた.以上の臨床症状や画像所見からiNPHの可能性を疑った.iNPHを評価する上でTap testを施行したが,HDS-Rが10から22と著明に改善,Up and Go testにおいても改善を認めた.以上から本症例はiNPHと診断した.その後,第31病日に右脳室腹腔シャント術を行い第55病日に退院し,術後のHDS-R,MMSE,Up and Go testも改善した.糖尿病については入院時インスリン頻回注射を継続していたが,退院後の生活を考慮しBasal oral therapy(BOT)に変更し,HbA1c 7.5%まで改善した.今回のiNPHの診断の契機となった認知機能障害とインスリン手技についてMMSE 23点以下は,インスリン自己注射が困難であり介護者に注射を依頼することが多くMMSE 24~25点で目盛の確認などの一部の援助を必要とする.今回,インスリン手技困難,歩行困難,排尿障害からiNPHを認めた2型高齢糖尿病患者の一例を経験した.高齢糖尿病患者でインスリン手技の困難がある場合は認知機能低下の存在に留意し,歩行障害や尿失禁があればiNPHの存在の可能性を考慮すべきである.

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