日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
55 巻 , 3 号
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目次
尼子賞受賞講演
総説
  • 海老原 覚
    2018 年 55 巻 3 号 p. 311-318
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    本邦の呼吸リハビリテーションには急性期呼吸器疾患に対するリハビリテーションと慢性期呼吸器疾患に対するリハビリテーションの両方を指す.急性期呼吸器疾患に対するリハビリテーションの主体は肺炎に対するリハビリテーションであり,嚥下リハビリテーションが重要な意味を持つ.慢性呼吸器疾患患者は共通して呼吸困難のために身体活動性が低下し,骨格筋廃用をもたらし更なる呼吸困難を生じるという悪循環・負のスパイラルを導き,結果的に予後の悪化につながる.この負のスパイラルを断ち切るのが,慢性期呼吸器疾患に対する呼吸リハビリテーションである.呼吸リハビリテーションの均霑化と継続性が今後の課題と思われる.

老年医学の展望
  • 佐竹 昭介
    2018 年 55 巻 3 号 p. 319-328
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    基本チェックリストは,近い将来介護が必要となる危険の高い高齢者(二次予防事業対象者)を抽出するスクリーニング法として開発され,2006年の介護保険制度改正の際に,介護予防把握事業の一部として導入された.基本チェックリストは,「はい」または「いいえ」で回答する自記式質問票であり,日常生活関連動作,運動器,低栄養状態,口腔機能,閉じこもり,認知機能,抑うつ気分,の7領域25個の質問群からなっている.この各領域において,二次予防事業対象者または留意すべき対象者の選定基準が決められており,地域在住高齢者を対象とした疫学調査において妥当性が検証されている.選定基準の中で,「うつを除く20項目中10項目以上に該当する場合」に自立機能を失う危険性が最も高く,多面的な評価の重要性が示唆されている.

    基本チェックリストに含まれる各領域は,近年注目されている「フレイル」の要素としても重要なものである.これらの要素をすべて含む基本チェックリスト総合点は,他のフレイル評価法と有意な相関性を示す.また,総合点に基づくフレイル状態の評価は,予後予測の点でも有用性が認められ,フレイル評価法として妥当性があると考えられる.総合点による評価と各領域別の評価を組み合わせることで,フレイル状態の把握のみならず,介入すべき対象領域の特定にも利用できる.

    基本チェックリストは,介護予防事業の変遷とともに,その存在意義や役割が変化しているが,決して有効性がなかったわけではない.むしろ,国内外のフレイルに関するガイドラインでも,妥当性のあるフレイル評価法として挙げられている.介護予防事業における変遷は,より有効な活用を模索する過程として捉え,健康長寿社会の構築に向けたフレイル予防のために,高齢者を取り巻くさまざまな場面で基本チェックリストが活用されることが望まれる.

特集
高齢者の腎障害
  • 湯村 和子
    2018 年 55 巻 3 号 p. 329-331
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー
  • 湯村 和子
    2018 年 55 巻 3 号 p. 332-337
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    高齢者におこるフレイルや認知症など身体的に日常生活に支障がでる場合大きく取りあげられるが,腎臓という臓器は,障害が起っても症状が現れてこないので腎障害を身を持ってとらえることが困難である.腎臓の病気,腎障害にも色々あるが,どんな病気も治りきらないと,腎臓の組織が荒廃し腎機能が低下して尿毒症(腎不全)になる.近年,65歳以上の高齢者が増加し高齢化率が23%に達し,超高齢社会を迎えて久しい.高齢者が,末期腎不全に至る疾患としては,新規透析導入患者数が一番多い糖尿病腎症だが,導入時平均年齢は67.3歳である.糖尿病性腎症より新規透析導入平均年齢が高い疾患としては,腎硬化症が75.3歳で,ANCA関連血管炎の1つである顕微鏡的多発血管炎(MPA)の急速進行性糸球体腎炎(RPGN)症候群による末期腎不全からの新規導入平均年齢は73.1歳である1)

    この様な高齢で腎不全に至ることの多い腎疾患を中心に,腎障害の特徴をあげると共に,腎代替(透析)療法になる以前,潜在的に起っている腎障害に,様々な診療科が関わっていることを理解していただき,腎障害に目を向けてもらうことを目的に,高齢者の腎障害を解説する.

  • 武井 卓
    2018 年 55 巻 3 号 p. 338-344
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    加齢により腎の形態は縮小し,機能は低下する.形態変化の原因は動脈硬化性変化,アポトーシスなどによる老性萎縮で,それに伴い機能の低下が生じるが,体液組成や循環動態の変化も影響する.腎機能を正確に把握するためには糸球体濾過量を実測することが必要であるが日常臨床では煩雑なためクレアチニンによる推定糸球体濾過量(eGFR)(mL/min/1.73 m2)を指標としている.しかし高齢者では筋肉量が低下し体格が小さくなり過大評価となるため体表面積補正を行わない値やシスタチンCを用いたeGFRが推奨されている.腎予備力が低下しており,水分や薬剤の影響を受けやすく注意が必要である.水分過多の場合,尿濃縮力の低下から夜尿症を引き起こしやすく,水分摂取不足の場合,容易に脱水を生じ熱中症となる危険性がある.

  • 板橋 美津世
    2018 年 55 巻 3 号 p. 345-351
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    加齢に伴いGFRは低下し75歳以上では50%以上がCKDステージG3以降(eGFR 60 ml/min/1.73 m2未満)に該当するといわれる.CKDは認知症発症リスクの増大,筋肉量減少(サルコペニア)を起こしやすく容易にフレイルに陥る.CKDに対し集学的治療を行うことは腎機能悪化を阻止するだけでなく心血管疾患へのリスクも軽減し生命予後の延伸につながる.QOL維持・向上,要介護状態への移行阻止,健康寿命の延伸を念頭においたCKD診療が重要である.日本腎臓学会ではCKDガイドライン2018およびCKDステージG3b-5診療ガイドライン2017のなかで高齢者のCKDを取りあげており参考にされたい1),2)

  • 府川 則子, 湯村 和子
    2018 年 55 巻 3 号 p. 352-357
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    CKDは透析予備軍であり,腎保護効果を期待し,高齢患者においても,0.8 g/kg・標準体重/日を目安にたんぱく質摂取制限が推奨されている.しかし,高齢CKD患者では,食事全体量が少なくなり,摂取エネルギー量が低下,体蛋白異化により低栄養が進行する場合も散見する.高齢CKD患者においては,CKDステージ4~5であっても十分な余命が見込まれる場合においてのみ,現状のBMIを維持すべき十分なエネルギー量を確保した上で,たんぱく質の摂取量を考慮する必要がある.

原著
  • 赤津 裕康, 間辺 利江, 竹尾 淳, 川出 義浩, 木村 雄子, 近藤 麻央, 伊藤 禎芳, 長野 弘季, 野崎 耀志郎, 土井 愛美, ...
    2018 年 55 巻 3 号 p. 358-366
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    目的:今後の超高齢社会を乗り切っていく重要な1つの方策は意識改革である.その要になるのはヘルスケア・メディケーションを行いつつ自らの最終ゴールを見つめる,即ちアドバンスケアプランニング(Advance care planning:以下ACPと略す)と事前指示(Advance directive:以下Adと略す)を行うことである.また,パーソナルヘルスレコード(Personal Health Record:以下PHRと略す)の匿名開示,病理解剖はあまり言及されていない.しかし,死後のことも事前に考え,意向を聞いておく環境整備も必要である.この死後対応を含めたAd/ACPの啓発・浸透が国民の意識改革にもなっていく.本研究は地域住民の意識をアンケート形式で把握し,講演(啓発活動)での変容を捉えることを目的とした.方法:高齢化の進む大都市旧ニュータウン住民へAd/ACP啓発講演を行い,その前後での意識調査を行った.意識調査はアンケートでの自記式4択を主体に末期認知症になった状況を主に想定した6大項目,38問を設けた.結果:参加者は35名(男7名,女22名)で40歳代~80代以上で70歳代が25名であった.途中退出者が数名発生したため,前後変容に関しては,統計的解析は不可能であったが意識変容の傾向は得られた.特に死後の対応(献体)に関しては有意差をもった意識変化を認めた.また蘇生・延命の希望者数と救急搬送希望者数に乖離を認めた.結論:医療行為への希望・不安はその情報量に加え,置かれた状況でも変容する.今回の意識調査で,死後の社会貢献意識に講演前後で変化が観られた.また蘇生・延命と救急搬送は別物と捉える地域住民が多い点も明らかとなった.今後のAd/ACPの普及,意識改革では,この点を念頭においた地道な活動と医療・介護者,地域の方々,家族,本人との連携が必要である.

  • 岡部 大地, 辻 大士, 近藤 克則
    2018 年 55 巻 3 号 p. 367-377
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    目的:高齢者総合機能評価は有用とされ,その一つとして自記式質問紙の基本チェックリストがある.一方,要介護状態の最大原因は脳卒中であり,特定健康診査(特定健診)などで検出しうる糖尿病や脂質異常症などが基礎疾患と分かっている.しかし高齢者において総合機能評価と健診のどちらが健康寿命喪失リスクの予測力が大きいか比較検討した研究はない.そこで本研究では,高齢者総合機能評価と健診のどちらが健康寿命喪失の予測力が大きいか明らかにすることを目的とした.方法:要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象とした日本老年学的評価研究(JAGES)の2010年の自記式郵送調査データを用いた.同年の健診データを得られた6市町において,データ結合が可能で,その後3年間の要介護認定状況および死亡を追跡することができた9,756人を分析対象とした.基本チェックリストから判定される7つのリスク(虚弱,運動機能低下,低栄養,口腔機能低下,閉じこもり,認知機能低下,うつ),メタボリックシンドロームを含む特定健診必須15項目を説明変数とし,要介護2以上の認定または死亡を目的変数としたCox比例ハザード分析をおこなった(性,年齢,飲酒,喫煙,教育歴,等価所得を調整).結果:要介護2以上の認定または死亡の発生率は,19.4人/1,000人年であった.基本チェックリストからは口腔機能低下を除く6つのリスクにおいてhazard ratio(HR)が1.44~3.63と有意であった.特定健診からは尿蛋白異常,BMI高値,AST異常,HDL低値,空腹時血糖高値,HbA1c高値の6項目においてHRは1.37~2.07と有意であった.メタボリックシンドローム該当のHRは1.05と有意ではなかった.結論:血液検査を中心とした健診よりも問診や質問紙を用いた高齢者総合機能評価の方が健康寿命喪失を予測すると考えられた.

  • 中里 和弘, 涌井 智子, 平山 亮, 島田 千穂
    2018 年 55 巻 3 号 p. 378-385
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    目的:現在の我が国の終末期ケアでは,子が高齢な親の意思決定の中心的役割を担いうる現状にあり,高齢者が事前に終末期ケアの希望について子とコミュニケーションをとることは,高齢者本人と家族の終末期ケアに備えた準備行動といえる.ただし親子間コミュニケーションの実態について,子の立場から量的に検討した研究は限られている.そこで高齢の親を持つ子を対象に,終末期ケアに関する親子間のコミュニケーションの実態とその関連要因を検討することを目的とした.方法:65歳以上の実親を持つ1,590人を対象にインターネット調査を実施した.2015年10月の3日間で回答した1,010人を分析対象とした.調査内容は,対象者及びその親の属性,終末期ケアに関する親子間の会話の有無及び親との会話に対する子の態度であった.結果:回答者の平均年齢は48.5±8.8歳,男性が52.7%であった.親の平均年齢は77.1±7.9歳,男性が38.4%であった.これまでに親と終末期ケアに関する会話をしたことが「ある」は22.8%,「ない」は77.2%であった.終末期ケアに関する会話の有無を目的変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った結果,息子-父より息子-母(オッズ比<OR>=3.01)・娘-母(OR=3.15),親の年齢が高い(OR=1.03),親に大病経験あり(OR=1.47),親と同居(OR=2.08),子の会話に対する必要性の認識が高い(OR=1.36),子の会話に対する情緒的回避が低い(OR=0.68)と有意な関連がみられた.結論:高齢の親と子の終末期ケアに関する会話は乏しい現状が示された.親子の会話は,自然発生的に生起するのではなく,親側と子側の両方の要因を総合的に理解した上で,コミュニケーションを支援することが重要であるといえる.

  • 鈴木 みずえ, 服部 英幸, 阿部 邦彦, 中村 裕子, 猿原 孝行
    2018 年 55 巻 3 号 p. 386-394
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は高齢者施設における認知症高齢者の生活支障を具体的に明らかにするために,認知症高齢者の生活支障尺度を開発することである.研究方法:平成29年3月~5月に介護老人保健施設に入居しており,認知症と診断された高齢者,または認知症高齢者の日常生活自立度II以上と評価されている高齢者で研究協力の同意が得られた者を対象に,生活支障尺度などを調査した.対象者は191名(男性47名:24.6%,女性144名:75.4%)であった.平均年齢は85.72(±6.96)歳,平均要介護度は3.73(±1.22),平均MMSEは9.11(±8.80)であった.生活支障尺度の因子分析の結果,第1因子は「基本的生活行動やコミュニケーションに関する生活支障」,第2因子は「焦燥や混乱に関連した生活支障」,第3因子は「感情や判断力低下に関連した人間関係のトラブル」,第4因子は「意識の変化や繰り返される行動に関連した生活支障」と命名された.4因子ともクロンバッハのα係数は0.705~0.884,NPIおよびクリクトン高齢者行動尺度と有意な相関が認められた.結論:以上の結果から,生活支障尺度の尺度としての信頼性・妥当性は確保され,今後,老人保健施設の生活上のトラブルを解決する有効な尺度であることが明らかになった.

  • 齊藤 美香, 平野 浩彦, 宮腰 重三郎
    2018 年 55 巻 3 号 p. 395-401
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    目的:本邦において,高齢者人口の増加に伴い,造血器疾患の発症頻度は増加傾向にある.造血器疾患の根治療法として造血幹細胞移植が選択されるが,大量の放射線,抗癌剤などの前処置による毒性により,患者適応年齢は50~55歳以下とされてきた.しかし,高齢者や臓器障害がある患者に対し,前処置の強度を弱め,移植片対白血病反応による効果を期待した骨髄非破壊的移植が,臍帯血を用いて実施されるようになった.今回われわれは高齢者の臍帯血移植に対し,移植前の口腔内診査と歯科治療を行い,移植後の口腔粘膜炎発症について調査したので報告する.方法:調査期間:2009年1月~2016年12月.調査対象:臍帯血移植実施前に,当科へ診察依頼があった106名の患者(男性66名,女性40名,平均年齢65.2±7.2歳).調査方法:診療録と看護記録から以下を調べた.(1)血液疾患(2)歯科治療有無,治療内容(3)歯科初診から移植までの平均日数と歯科治療有無,治療内容との関連(4)移植後口腔粘膜炎発症有無と治療内容との関連(5)移植後口腔粘膜炎発症日,消失日,発症時と消失時の顆粒球および血小板値の比較.結果:歯科治療有群は治療無群と比較し,移植までの日数が長期であった.特に歯周治療有・抜歯有群が長期を要していた.移植前のう蝕治療有群は,無群と比較し,口腔粘膜炎発症が有意に多かった.移植後口腔粘膜炎発症時の顆粒球数,血小板値は口腔粘膜炎消失時と比較し,いずれも低値であった.特に顆粒球数は有意に低下していた.結論:移植患者に対し,迅速な口腔内診査が必要であり,早期に歯科治療を開始,終了することが大切である.口腔粘膜炎発症が懸念される時期は,血液内科担当医や看護師と連携し,患者の状況に合わせて適切な口腔健康管理を提供することが大切である.

  • 岡部 慎一, 佐藤 明善, 粕谷 泰道, 杉山 耕一, 遠藤 聡, 光成 誉明, 鎌田 健一, 山形 勝, 片柳 達也
    2018 年 55 巻 3 号 p. 402-410
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    目的:心原性脳塞栓症の主原因である心房細動は,医療機関一般外来において,充分に検知されているとは言えない.心房細動は加齢とともに罹患率が上昇し,人口の高齢化により将来的に増加が予想されている.そこで,当院外来において,パルスオキシメーターを応用した脈拍解析機器による心房細動スクリーニングを行い,脳塞栓予防へ繋げているので,その有用性を検討した.方法:2014年救急患者以外の外来初診および通院患者(延べ患者数:50,875人,実患者数:16,356人)の中で,主に午後受診の65歳以上患者を中心に,心房細動スクリーニングを行った.実患者数のうち5,013人(30.6%),8,656回に施行された.スクリーニングに使用した機器は,脈波情報を取得するパルスオキシメーターと,脈波解析専用アプリを搭載したタブレットである.両機器はBluetooth通信で送受信する.専用アプリでは,脈拍間隔変動が大きいものを心房細動と判断するアルゴリズムを採用した.機器の心房細動検知感度も調べた.結果:心房細動の新規診断患者が40人,未治療の既知心房細動再確認患者が16人で,計56人において,抗凝固療法が検討・導入され,スクリーニングが有用と判断された.スクリーニング実施者の1.1%,外来実患者数の0.34%であった.平均年齢は76.9±7.7歳,CHADS2スコア2以上が67.9%,半数で過去に不整脈指摘があり,初診患者の割合は37.5%であった.心房細動に対する専用アプリの感度は89.7%であった.結論:本研究の手法で,脈拍間隔不整を解析することにより,多くの無症候性心房細動患者が発見された.心房細動患者の外来スクリーニングの一方法として有用である可能性が示された.

症例報告
  • 明石 哲郎, 松本 一秀, 高松 悠, 橋本 理沙, 高岡 雄大, 大野 彰久, 中村 由佳里
    2018 年 55 巻 3 号 p. 411-416
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

    急性胆囊炎の治療では,高齢者は臓器障害の併存や長期臥床のため,手術困難で経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)を施行する場合も多い.ドレナージが奏功すれば,食事開始も可能となるが,PTGBDは胆汁が外瘻化されており,脂肪の吸収障害も懸念される.脂肪の乳化剤である卵黄レシチンは胃酸による低pH条件下でもエマルションが壊れにくく,乳化状態が安定している.胆管結紮ラットでの検討でも卵黄レシチンの乳化液が他の乳化剤を使用した乳化液よりも脂質吸収に優れ,下痢が少ない報告がある.卵黄レシチンによる乳化は,胆管外瘻例などの胆汁排泄障害時の栄養改善に寄与する可能性が考えられる.今回,急性胆囊炎に対するPTGBD後に,卵黄レシチン配合流動食による経腸栄養で良好な経過をえた症例を経験したので報告する.症例は80歳,男性.心筋梗塞,認知症の既往あり,胆石性胆囊炎の診断で,保存的治療を開始した.胆囊炎の増悪あり,12病日にPTGBDを施行した.入院後は嚥下不良あり,胃管より経腸栄養を開始するも嘔吐を認めた.画像上,十二指腸下行脚は炎症の波及により浮腫状のため,再度絶食とし,グルタミン製剤のみ投与した.胃管からの廃液が減少した23病日より卵黄レシチン配合流動食K-LEC(1 Kcal/ml)200 mlを粘度調整食品REF-P1併用で1日3回投与より開始した.25病日には900 Kcal/日,29病日から食物繊維が付加されたK-5Sを1,200 Kcal/日と増量できた.全身状態も向上し,トランスサイレチンも上昇傾向で,体重も増加した.その後,嚥下訓練により37病日からは経口摂取へと移行できた.絶食期間が長く,胆囊炎の炎症波及に伴う十二指腸通過障害を併発した症例であったが,下痢などの消化器合併症なく順調に経腸栄養投与量を上昇することができた.胆汁排泄障害を伴う病態での卵黄レシチン配合流動食の有用性が示唆された.

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