日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
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目次
総説
  • 日本老年医学会CGAツール選定・最適化WG, 小宮 仁, 梅垣 宏行, 川嶋 修司, 小島 太郎, 竹屋 泰
    2021 年 58 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    著作権とは,無体財産権の一つで,著作物に対する独占的・排他的権利で,著作者を保護するため,その精神的な創作活動の所産である著作物に対して著作権法が認めたものである.老年医学の診療・研究において,高齢者総合機能評価(CGA:Comprehensive geriatric assessment)ツールが汎用されているところであるが,個々のCGAツールは著作物であり,その使用にあたっては,著作権侵害にならないように留意する必要がある.著作権法は無方式主義を採用しており,著作物の創作とともに著作権は自動的に発生する.また,著作権の保護期間は,原則著作者の死後70年間である.したがって,ほとんどのCGAツールは著作権法の保護を受ける.著作物を複製(コピー)する場合,私的使用目的などの例外的場合でない限り,著作権者に無断で行えば著作権を侵害する可能性がある.参考のために,CGAツールの著作権に関する情報について,可能な範囲で調査を行い,その結果を表で提示した.著作権者が不明で許諾を得ることができない場合には,著作権者の許諾を得る代わりに文化庁長官の裁定を受け,通常の使用料額に相当する補償金を供託することで,著作物を適法に利用することができるとする制度がある.

  • ~NCGG-HEPOP 2020の開発
    大沢 愛子, 前島 伸一郎, 荒井 秀典, 近藤 和泉
    2021 年 58 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行に伴い,国内外を問わず,感染予防目的で他者との接触を制限する風潮が続いている.日本でも2020年4月に緊急事態宣言が発出され,なるべく自宅内で生活し,外出を伴う活動の自粛が推奨された.その後,人の移動に関する自粛傾向は緩和されたものの,特に感染症が重症化しやすい高齢者や内科的合併症を持つ人に関しては活動を自粛したり,受診を抑制したりする傾向が続いている.このような活動自粛は,身体的な活動のみならず社会的な交流も激減させ,身体機能や認知機能の低下,栄養状態の悪化などを引き起こし,サルコペニアやフレイルの進行が危惧される.しかし,COVID-19が終息する傾向は未だ見えず,不活発な生活は,今後も長く続くことが予想される.そのような社会的情勢のなか,コロナ禍にあっても,正しく将来を見据え,感染予防と活動のバランスをとりながら高齢者の健康を維持することは,高齢者医療を実践する我々医療者に課せられた課題と考える.このような背景から,我々は高齢者がその時の心身状態に適した運動や活動を自宅でも簡単に実施できるよう,国立長寿医療研究センター在宅活動ガイド2020(NCGG-HEPOP2020)を発行した.本稿では,このHEPOP2020の開発のコンセプトと特徴について概説しながら,改めてコロナ禍におけるサルコペニア,フレイル予防について考える.

  • 阿部 紀之, 井手 一茂, 渡邉 良太, 辻 大士, 斉藤 雅茂, 近藤 克則
    2021 年 58 巻 1 号 p. 24-35
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:社会的フレイルはリスク因子として重要だが,評価法が統一されていない.本研究の目的は専門家の評価による内容的妥当性のある社会的フレイルの要素を明らかにすることである.方法:PubMedで検索し入手した社会的フレイル関連26論文から抽出した要素のうち,7名中5名以上の評価者が4条件(負のアウトカム予知因子,可逆性,加齢変化,客観性)を満たすと評価した要素を抽出し分類した.結果:4条件を満たす要素は経済的状況(①経済的困難),居住形態(②独居),社会的サポート(③生活サポート者の有無,④社会的サポート授受),社会的ネットワーク(⑤誰かと話す機会,⑥友人に会いに行く,⑦家族や近隣者との接触),社会的活動・参加(⑧外出頻度,⑨社会交流,⑩社会活動,⑪社会との接触)の5分類11要素が抽出された.結論:先行研究で用いられている社会的フレイル22要素のうち,内容的妥当性が示唆された要素は11要素であった.

  • 小谷野 肇
    2021 年 58 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    日本では急速な高齢化により,自己管理能力の低下した高齢糖尿病患者が増加している.これらの患者のうち在宅自己注射,血糖自己測定が必要な患者には,家族が患者に代わってこれらの行為を行っているが,家族の援助が受けらない場合は施設に入所して治療を継続している.しかし,看護職員の不足を主な要因として,受け入れが可能な施設が充足していないのが現状である.この対策としては,配置看護師の増員,訪問看護の活用と介護職員の関与の増大の2つの対策が考えられるがどちらを優先すべきかを慎重に検討する必要がある.

  • 藤崎 智礼, 宮下 智
    2021 年 58 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    米国ニューヨーク市では,新型コロナウイルスの爆発的な感染力と,強力な病原性により多くの方が犠牲となった.医療崩壊が目前まで迫る中で,患者の尊厳を守り,充実したものにするために,Advance Care Planning(ACP)やインフォームド・アセントをはじめとした緩和医療分野の重要性に焦点が当てられた.新型コロナウイルス世界的大流行を契機として,今後,日本でもACPをはじめとした緩和医療の重要性が増してくると予想される.

特集
高齢者のウイルス感染症の現状と対策
  • 朝野 和典
    2021 年 58 巻 1 号 p. 47
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー
  • 浅田 秀夫
    2021 年 58 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    帯状疱疹は,体内に潜伏感染していた水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化して生じる疾患で,高齢者に好発する.わが国においては帯状疱疹の罹患率は右肩上がりで増え続けており,今後もさらなる増加が予想される.2016年より水痘ワクチンが帯状疱疹の予防にも適応拡大され,さらに最近では新規サブユニットワクチンの発売も始まった.また近年,新規薬理効果をもつ抗ヘルペスウイルス薬も登場し,帯状疱疹診療を取り巻く環境は新しい時代を迎えつつある.

  • 奥野 英雄
    2021 年 58 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    インフルエンザは歴史の古い感染症であるが,現在も高齢者への疾病負荷の大きな感染症である.インフルエンザによる入院症例では60歳以上の患者が多くを占めており,重症化もしやすい.呼吸器症状の悪化のみならず,中枢神経症状や,心筋梗塞・脳梗塞のリスクとする報告もある.日本国内で接種されている不活化ワクチンは,インフルエンザの変異に対応しきれない,感染阻止効果が期待できないなど課題も多い.今後は,不活化経鼻インフルエンザワクチンなど新規の予防手段の実用化が期待される.

  • 本村 和嗣
    2021 年 58 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    ノロウイルスの特徴は,ウイルスの中では小さい部類に属し,物理的に安定性の高いウイルスで大変,感染力が強い.米国のボランティア研究では,ウイルス粒子が口腔内に10~100個入るだけで感染が成立することが報告されている.よって,人の密集する閉鎖空間では集団食中毒が頻繁に発生する.食品産業,医療施設,高齢者施設,教育施設での発生が報告されており1),その結果,甚大な被害をもたらしている.本稿では,ノロウイルス感染症に関する基礎知識について紹介したい.

  • 忽那 賢志
    2021 年 58 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症は世界では増加の一途を辿っており,2020年12月現在日本でも第3波を迎えている.発症から数日~約7日間は「かぜ」のような症状が続き,約8割は軽症のまま改善するが,2割は重症化し数%が致死的となる.高齢者・基礎疾患のある患者では重症化リスクが高い.レムデシビル,デキサメタゾンが標準治療になりつつあり,致死率は低下傾向にある.接触感染・飛沫感染により拡大するが,発症前に感染性のピークがあり感染対策上はユニバーサルマスクが重要である.

原著
  • 鈴木 みずえ, 浅井 八多美, 内山 由美子, 阿部 ゆみ子, 阿部 邦彦, 澤木 圭介, 田島 明子
    2021 年 58 巻 1 号 p. 70-80
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,介護老人保健施設における1年間の認知症ケアマッピング(DCM)の医療・福祉職の連携によるパーソン・センタード・ケア(PCC)をめざした発展的評価が及ぼす効果を明らかにすることである.方法:2016年9月~2017年8月に介護老人保健施設においてDCMを実施し,医療職・福祉職を対象にアンケート調査とフォーカス・グループインタビュー調査の両方による混合研究法を用いて調査した.なお,狭義ではケアスタッフは看護職・介護職をいうが,本研究では,医師・理学療法士・作業療法士の医療職もケアスタッフとしてDCMに取り組んだ.結果:対象者は合計24名,施設経験年数7.2年であった.介護職の仕事有能感尺度の下位尺度の仕事上の予測・問題解決,PCCに対する自己効力感の最終評価が有意に改善していた.フォーカス・グループインタビューの結果,「マッピングの展開を通してケアスタッフの気づきや高齢者の変化」「マッピングに対するケアスタッフの肯定的な感情」「マッピングに対する否定的な感情」「マッピングの有効性と効率化の必要性」「参加者のマッピングの時の状況やマッピングの期間」などの6つの大カテゴリーに分類された.結論:医療・福祉職の連携によるDCMの発展的評価はPCCの自己効力感を向上させ,問題解決能力を改善した.

  • 成田 美紀, 北村 明彦, 谷口 優, 清野 諭, 横山 友里, 野藤 悠, 天野 秀紀, 西 真理子, 武見 ゆかり, 新開 省二
    2021 年 58 巻 1 号 p. 81-90
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:在宅高齢者における食品摂取の多様性得点(DVS)の加齢変化パターンを類型化し,その関連要因を検討する.方法:対象は,群馬県草津町で2012~17年に実施した高齢者健診を一度でも受診した1,195名である.食品摂取多様性はDVSにより評価し,混合軌跡モデリングにより65~90歳の加齢変化パターンを検討した.DVSの加齢変化パターンの関連要因の検討は,多項ロジスティック回帰分析を用い,従属変数はDVSの加齢変化パターンのうち該当者の割合が最も高い中推移群を基準とし,説明変数は性,年齢,家族構成,教育年数,BMI,主観的咀嚼能力,TMIG-IC,GDS-15,MMSE,喫煙,飲酒,既往歴(高血圧,脂質異常症,糖尿病,脳卒中)とした.結果:DVSの加齢変化パターン及び該当率は,高推移群16.6%,中推移群44.5%,低推移群38.8%であった.DVSの加齢変化パターンの関連要因として抽出された変数は,DVS中推移群に比した低推移群の調整オッズ比(95%信頼区間)では,主観的咀嚼能力(全く噛めない)2.69(1.02~7.08),GDS-15 1.11(1.06~1.17),現在喫煙1.76(1.14~2.73),過去喫煙1.70(1.19~2.43)であった.一方,中推移群に比した高推移群の調整オッズ比では,男性0.61(0.37~1.00)年齢1.04(1.01~1.07),主観的咀嚼能力(噛みにくいものがある)0.58(0.38~0.89),GDS-15 0.88(0.82~0.96),高血圧既往有り0.55(0.37~0.83)であった.結論:在宅高齢者のDVSの加齢変化パターンは3つに類型化されることが明らかになった.食品摂取の質をより高く保つためには,主観的咀嚼能力,抑うつ状態等の精神的健康に加え,生活習慣病のリスクである高血圧の管理や,喫煙等の生活習慣にも留意すべきであることが示された.

  • 釘宮 嘉浩, 本川 佳子, 山本 かおり, 早川 美知, 三上 友里江, 岩崎 正則, 小原 由紀, 白部 麻樹, 枝広 あや子, 渡邊 裕 ...
    2021 年 58 巻 1 号 p. 91-100
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,後期高齢者の質問票の口腔機能類型質問に採用された基本チェックリストの質問項目で地域在住高齢者の口腔機能を評価した場合の該当者率と,該当者の栄養素等摂取量を明らかとすることである.方法:本研究は,地域在住高齢者511名(男性217名,女性294名,平均年齢73.1±5.6歳)を対象とした.対象者の口腔機能は,後期高齢者の質問票の口腔機能類型質問であるNo.4とNo.5の基となった基本チェックリストのNo.13とNo.14を用いて評価した.No.4に採用されたNo.13は咀嚼機能を,No.5に採用されたNo.14は嚥下機能を評価する質問である.これらの質問項目のうち,どちらか一方でも該当した者を口腔機能が低下している群(該当群),該当しない群を非該当群と定義した.また,栄養素等摂取量の評価には,食物摂取頻度調査票を用いた聞き取り調査を行った.結果:該当群の該当者率は,全体で32.9%,前期高齢者で28.2%,後期高齢者で40.1%だった.該当群と非該当群の該当者率は,男女間で有意差を認めなかった.後期高齢者では,該当群の総エネルギー,たんぱく質エネルギー比,たんぱく質,パントテン酸,葉酸,ビタミンB6,ナイアシン,ビタミンK,銅,亜鉛,リン,マグネシウム,カリウム,食物繊維総量の摂取量が,非該当群と比較して有意に少なかった.結論:後期高齢者の質問票の口腔機能類型質問に採用された基本チェックリストの質問項目で高齢者の口腔機能を評価したところ,前期高齢者に比べ後期高齢者で口腔機能に不具合を訴える者の割合が高かった.また,口腔機能に不具合を訴える後期高齢者では,複数の栄養摂取量が少ない傾向が示された.口腔機能の低下を示した者に対しては,低下している口腔機能に限定した対応をするのではなく,食事摂取状態も合わせて評価し,適切な栄養指導を行うことが重要であると考えられた.

  • 上村 一貴, 山田 実, 紙谷 司, 渡邉 敦也, 岡本 啓
    2021 年 58 巻 1 号 p. 101-110
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,高齢者のヘルスリテラシーが2年後のフレイルの有無に及ぼす影響を検討することとした.方法:解析対象は,65歳以上のフレイルでない地域在住高齢者218名〔平均年齢72.5±4.9歳(範囲:65から86歳),男性81名〕とした.機能的ヘルスリテラシーをNewest Vital Signにより,包括的ヘルスリテラシーをEuropean Health Literacy Survey Questionnaireにより評価した.包括的ヘルスリテラシーは総得点に加えて,ヘルスケア,疾病予防,ヘルスプロモーションの3領域の得点についても算出した.2年後のフォローアップ評価(郵送調査)における基本チェックリストの合計点が8点以上の場合をフレイル有とした.結果:フォローアップ評価の対象者253名のうち,226名から回答が得られた(追跡率:89.3%).欠損値ありの8名を除いた218名のうち,2年後にフレイル有となったのは25名(11.5%)であった.年齢,性別,教育年数,BMI,歩行速度,認知機能,Comorbidityで調整したロジスティック回帰モデルにおいて,包括的ヘルスリテラシーの得点のみがフレイルと有意な関連を示した〔1SDあたりのオッズ比(95%信頼区間)=0.54(0.33~0.87)〕.包括的ヘルスリテラシーのヘルスケア,疾病予防領域の得点についても同様に有意な関連を示し,いずれも得点が高いほど,フレイルのオッズ比が低いことを示した.結論:包括的ヘルスリテラシーが高い高齢者では,2年後にフレイルを有する危険性が低いことが明らかになった.

  • 北村 智美, 五十嵐 歩, 吉江 悟, 森田 光治良, 城 大祐, 飯島 勝矢, 山本 則子
    2021 年 58 巻 1 号 p. 111-118
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:高齢COPD患者における呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)の利用実態を明らかにする.方法:千葉県柏市の2012年4月から2013年3月までの医療・介護レセプトデータを用いた.同期間にCOPD(ICD10コードJ41-J44)の診断で外来受診が2月以上あり,COPD関連薬の処方が2月以上ある63歳以上の者を抽出し,入院・外来・在宅呼吸リハの利用実態を調査した.入院呼吸リハは,入院で呼吸器リハビリテーション料(I)(II)の算定が1回以上ある場合を,外来呼吸リハは外来で呼吸器リハビリテーション料(I)(II)の算定が1回以上ある場合を,在宅呼吸リハは医療保険・介護保険における訪問リハ・看護のいずれかの利用が1回以上ある場合を“利用あり”とした.結果:対象者2,682名の平均年齢は76.8歳だった.入院・外来・在宅呼吸リハ利用者はそれぞれ,61名(2.3%),25名(0.9%),101名(3.8%),年間利用月数の中央値は1カ月,2カ月,11カ月だった.対象者の平均年齢は,呼吸リハ非利用者と外来呼吸リハ利用者では76歳代だった一方,入院呼吸リハ利用者及び在宅呼吸リハ利用者では約80歳と高い傾向がみられた.要介護認定を有する者は,非利用者,外来呼吸リハ利用者で2~3割程度だった一方,入院呼吸リハ利用者では約半数を占めた.在宅呼吸リハ利用者ではほぼ全数が要介護認定を有しており,要介護3~5が半数以上を占めていた.結論:病院・在宅ともに呼吸リハ利用率は低いため,普及に向けた取り組みが必要である.各呼吸リハの利用期間や利用者の特徴が異なることから,呼吸リハ種別毎に介入内容や評価方法の検討が重要である.通院が可能なCOPD患者に対する外来呼吸リハの拡充や,呼吸リハ提供施設が不足している地域や定期的な通院が困難な患者に対する在宅呼吸リハの推進が必要と考えられる.

  • 庭野 元孝, 青山 恭子
    2021 年 58 巻 1 号 p. 119-125
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:経口摂取ができない患者の栄養改善のための静脈栄養の有効性は明らかだが,内科入院高齢患者に対する中心静脈栄養(TPN)が,退院時の栄養状態改善にどの程度寄与するのかは,不明な点が多い.TPN施行患者の退院時の栄養投与法別にTPNの有効性を比較検討した.方法:TPNを行った2013年4月から7年間の高齢患者493人を対象に,入院時と退院時10日以内のAlb・TLC・T-Cho,Znを測定して,栄養評価ツールCONUTを併用した.対象患者を生存退院群,在院死群に分け,さらに退院時の栄養投与法を経口(ON),経腸栄養(EN),末梢静脈栄養(PPN),TPNの4群に区分して,入退院時のAlb,CONUT,Znの改善度を比較検討した.また,退院時の栄養投与法別に男女数,平均年齢,在院日数,TPN投与期間,脂肪乳剤投与患者数と投与期間を調べた.結果:生存退院群では,退院時の栄養投与法がTPNでは,Alb悪化,CONUT有意差なし.腸管使用のONとENでは,Albは有意差を認めなかったが,CONUTは有意に改善した.Znは,ON,EN,PPN,TPNのすべてで有意に改善した.在院死群では,TPNでAlbとCONUTの有意な悪化,Znの有意な改善を認めた.TPNから離脱できないTPN単独のままの生存退院群では,Albは悪化して,CONUTの改善を認めないことがわかった.結論:TPN施行患者がTPNから離脱して,腸管使用のONとENまで回復して退院すると,CONUTの改善と在院日数短縮が認められた.経口摂取できない高齢患者の栄養状態をTPNで改善させて,腸管使用の段階にまで治療することの重要性が示された.また,Zn欠乏改善に対するTPNの有効性が明らかになった.

  • 岡村 毅, 小川 有閑, 髙瀨 顕功, 新名 正弥, 問芝 志保, 宇良 千秋
    2021 年 58 巻 1 号 p. 126-133
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:個人が尊重され,満足できる終末期そして死に向けて,一層の多職種による対話と協働が求められている.本研究の目的は,死が近い人を支える現場のスタッフは,(1)倫理的葛藤はどこにあると考えているのか,(2)医療についてどのように考えているのか,(3)宗教についてどのように考えているのか,の探索である.方法:宗教者のケア現場における関与をテーマとした学際研究の一部として施行された.僧侶(主インタビュアー)と研究者(同副)が,高齢者福祉施設および医療施設(慢性病床)のスタッフ9名に対して半構造化インタビューを行った.結果:倫理的葛藤は「本人の意思を知ることの難しさ」,「家族との不協和」,「死を望む人もいる」,「生きる意味を失っている」,「スタッフも慣れていない」,「家族も慣れていない」の6主題が生成された.医療については,「連携への感謝」,「説得力のある説明」,「死を受け入れない」,「仲間の死を共有できない」,「冷たく感じられる」,「薬物治療中心である」,「本人中心ではない」,「本人の負荷が大きい」の8主題が生成された.宗教については,「救済への期待」,「病院には入りにくい」,「施設ではすでに関与している」,「宗教色は出してよい」,「望ましい宗教者像」の5主題が生成された.本人の意思や本人の絶望に関する葛藤は福祉施設・医療施設ともに見られた一方で,福祉施設での看取りの増加に対して,スタッフや家族が十分に慣れておらず葛藤していることが示唆された.医療に対しては,むしろ医療施設のスタッフが批判的であった.宗教との協力は,福祉施設では施設内で宗教者が活動している事例もあり前向きな意見が多いが,病院では困難が大きいことが示唆された.結論:超高齢社会における終末期ケアの質,死の質の向上に向けて,医療,ケアの専門家と,伝統的な宗教者の対話が有意義である.

  • 平田 文, 石坂 正大, 沢谷 洋平, 柴 隆広, 浦野 友彦
    2021 年 58 巻 1 号 p. 134-142
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    はじめに:要介護高齢者が地域で生活を続けるためには,サルコペニアなどの老年症候群の徴候を早期に発見し,適切な対応をしていくことが重要である.本研究の目的は,地域在住の要支援・要介護高齢者における嚥下機能の特徴を調査し,嚥下機能,栄養状態,サルコペニアなどの身体機能の関連性を明らかにする.方法:対象は,通所リハビリを利用している要支援1,2,要介護1の高齢者90名(男性55名,女性35名,平均年齢77.2±8.3歳).調査項目は,聖隷式嚥下質問紙,20品目摂取可能食品数調査,サルコペニアの簡易スクリーニング方法であるSARC-F,舌圧,握力,骨格筋指数(SMI),簡易栄養状態評価表(MNA-SF)だった.結果:聖隷式嚥下質問紙で「嚥下障害あり」「嚥下障害疑い」と判定された嚥下機能不良群は75名(83.3%),「嚥下障害無し」と判定された嚥下機能良好群は15名(16.7%)だった.対象者の30%以上に症状を認めた質問は,「食事中にむせることがありますか」「食べるのが遅くなりましたか」「硬いものが食べにくくなりましたか」だった.嚥下機能を従属変数とし,6つの調査項目全てを独立変数として強制投入したロジスティック回帰分析の結果,SARC-Fにおいて有意差を認めた(OR 1.994,95%CI 1.154~3.446,p=0.013).判別的中率は82.8%だった.結論:地域在住の要支援・要介護高齢者は嚥下障害のリスクが高く,特に咀嚼を含む口腔期に症状を呈していることが明らかになった.さらに,嚥下機能とSARC-Fに関連性を認めた.サルコペニアを早期に発見し予防することは,嚥下障害を防ぎ在宅生活を継続するために重要であることが示唆された.

  • 井田 諭, 金児 竜太郎, 今高 加奈子, 藤原 僚子, 勝田 真衣, 白倉 由隆, 大久保 薫, 東 謙太郎, 村田 和也
    2021 年 58 巻 1 号 p. 143-151
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:サルコペニア合併高齢糖尿病患者に対する多面的治療プログラムの,筋力,身体機能,及び骨格筋量への影響を検証すること.方法:伊勢赤十字病院,糖尿病代謝内科に通院している65歳以上の糖尿病患者を対象とした.サルコペニアの診断はAsian Working Group for Sarcopenia 2019を元に行った.四肢骨格筋量の測定は多周波生体電気インピーダンス法,筋力は握力,身体機能は5回椅子立ち上がり検査でそれぞれ評価した.多面的治療プログラム(蛋白質摂取量の適正化,レジスタンストレーニング,及びサルコペニアに関する患者教育)開始前と12週後に,筋力,身体機能,四肢骨格筋指数,及びその他パラメーターを評価し,前後比較した.統計処理には対応のあるt検定を用いた.結果:14例(男性3人,女性11人)が本研究の解析対象となった.平均年齢は74.4±4.7歳であった.多面的治療プログラムにより,握力(男性:23.2±5.6 kgから25.6±5.5 kg,P=0.014,女性:15.5±5.0 kgから18.9±5.0 kg,P<0.001),及び5回椅子立ち上がりテスト(11.2±2.5秒から8.6±1.7秒,P=0.002)の有意な改善を認めた.また,HbA1c(8.1±0.7%から7.7±0.9%,P=0.004)の有意な低下も認められた.一方,四肢骨格筋指数の増加傾向はあったものの有意差は認めなかった.結論:サルコペニア合併高齢糖尿病患者に対する多面的治療プログラムにより,筋力及び身体機能の改善が認められた.

症例報告
  • 和泉 賢一, 小野 恭裕
    2021 年 58 巻 1 号 p. 152-157
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    症例:84歳女性.主訴:食欲不振,意識レベル低下.既往歴:末期腎不全,甲状腺機能低下症,2型糖尿病,難聴.現病歴:以前より甲状腺機能低下症を指摘されていたが,服用できていなかった.近医診察にて食欲不振,意識レベル低下を認めた.原因として甲状腺機能検査異常を認め,全身状態が悪く入院加療目的で当院紹介となった.検査所見:JCS 10,TSH 681.7 μIU/mL,fT4 0.40 ng/mL,総CK 170 U/L,pH7.33,Na 124 mEq/L,Cr 3.85 mg/dL,eGFR 9 ml/min/1.73 m2.臨床経過:末期腎不全ではあるが,透析治療は拒否されていた.検査所見より,粘液水腫昏睡と診断し,レボチロキシンNa水和物25 μg経口投与から開始,中心静脈カテーテルにて経静脈栄養を行った.入院約3カ月にて,回復退院となった.考察:粘液水腫昏睡の過去の日本の6例の報告では,高齢者が多い印象であった.レボチロキシンNa水和物25~50 μg内服から開始する症例が多く,治療法について本症例と類似していたが,本症例のような高齢で高度な腎不全を伴う症例は認めなかった.また,ガイドラインのない症例の治療方針決定においては,本人に寄り添い,意思を何度も確認することがより重要と考えた.結論:今回,我々は透析を希望されない末期腎不全高齢者の症例における粘液水腫性昏睡の1例を経験した.治療や経過について,貴重な症例と考え,報告する.

  • 桝田 志保, 吉田 守美子, 工藤 千晶, 辻本 賀美, 安井 沙耶, 遠藤 ふうり, 三井 由加里, 倉橋 清衛, 遠藤 逸朗, 轟 貴史 ...
    2021 年 58 巻 1 号 p. 158-163
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    甲状腺クリーゼは致死的かつ緊急疾患であるが,他疾患に起因する症状と区別がつきにくいことや,高齢者では典型的クリーゼ症状を呈さない場合があり,診断は容易ではない.今回,消化器症状で発症し,心房細動と心不全の加療中に,甲状腺クリーゼと未治療バセドウ病の診断に至った症例を経験したので報告する.症例は70歳の女性.甲状腺疾患の既往はなく,多発筋炎でプレドニゾロン服用中であった.X月中頃より下痢・嘔吐が出現し,徐々に増悪し,労作時呼吸困難も出現した.X+1月8日に嘔気と倦怠感のため消化器内科に入院し,脱水に対して補液を行った.さらに消化器症状,発熱,呼吸困難の症状が悪化し,入院4日目にうっ血性心不全,頻脈性心房細動の診断で循環器内科において利尿薬を中心とした治療が開始された.入院7日目にFT4 9.95 ng/dL,FT3 >30 pg/mL,TSH <0.01 μU/mLとTSH抑制を伴う甲状腺ホルモン過剰が判明し,内分泌代謝内科へ紹介された.TRAb 22.6 IU/Lと上昇がありバセドウ病と診断するとともに,不穏,39℃の発熱,140回/分以上の頻脈,肺水腫,頻回な下痢を認め,確実な甲状腺クリーゼの状態であった.チアマゾール,ヨウ化カリウム,ヒドロコルチゾン,ランジオロールなどによる甲状腺クリーゼの包括的治療を行い,後遺症を残すことなく救命できた.甲状腺ホルモンの低下とともに,心不全診断時に認めた左室壁の局所運動異常と心電図のST-T変化は改善し,たこつぼ型心筋症も合併していたと考えられた.後の検査で入院時から甲状腺中毒症が存在し,すでに甲状腺クリーゼの状態であったことが判明した.本症例は,入院時に高熱や多動などの意識障害を呈さず,倦怠感が目立ち,基礎疾患や服用薬の影響など診断を困難にする要因が重なり,甲状腺クリーゼの診断までに時間を要したと考えられた.

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