日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
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目次
尼子賞受賞講演
総説
  • 高山 賢一
    2022 年 59 巻 4 号 p. 430-445
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    性ホルモン量は胎内および思春期において著明に増加し,女性らしさや男性らしさの成熟を促進し,生殖や成長を担う重要なホルモンである.一方で年齢を重ねると血液中のホルモンの値は徐々に減少し,女性は更年期に,男性も中年期以降は徐々に減少し「老い」を実感する原因となる.また高齢者における認知症,骨粗鬆症,サルコペニアといったフレイル症状につながることも報告され,性ホルモンは一生にわたり健康長寿において重要である.性ホルモンであるエストロゲンおよびアンドロゲンはそれぞれエストロゲン受容体,アンドロゲン受容体を介して機能する.古くから動物モデルの開発によりこれら性ホルモン受容体は筋力の維持,脳の機能,代謝,骨量の維持において重要な役割を果たす膨大な報告が既にある.細胞に侵入した性ホルモンと結合した性ホルモン受容体は核内受容体として機能し,ゲノム中の特異的な標的遺伝子の近傍に結合する.性ホルモン受容体は共役因子群と結合しエピゲノム状態を変化させることにより標的遺伝子の発現制御を行っている.しかしながら,各種組織における標的遺伝子の同定および性ホルモン受容体の働きは十分に解明されたとは言い難い.近年,次世代シークエンサーの発展,各種オミックス解析の発達により組織特異的な性ホルモンの作用を解き明かそうとする研究が報告されつつある.また性ホルモン受容体の動物モデルの解析により臓器連関によるシステムとしての生体作用の重要性も示唆されている.さらに細胞内での転写制御研究では新たな概念である細胞の運命を決定するスーパーエンハンサー,液液相分離によるタンパク質の複合体形成メカニズムが性ホルモン受容体の機能,病気と関連することが報告されている.最先端の研究報告では実験対象が動物モデルからヒトオルガノイド研究へ移行する必要性も示唆される.本稿ではこれら近年の研究を概説,振り返るとともに今後の性ホルモン研究の進展について考えたい.

老年医学の展望
  • ―SDMとACPの役割
    会田 薫子
    2022 年 59 巻 4 号 p. 446-455
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    長寿化に伴い医学的・倫理的に新たな課題が生じている.従来,末期腎不全患者には腎代替療法として血液透析を中心とする透析療法が行われてきた.しかし,高齢者のなかには体外循環に忍容性を持たない患者が少なくなく,血液透析によって益よりも害がもたらされる場合もあると報告されるようになってきた.老化が進行した高齢患者に対しては血液透析よりも対症療法と緩和ケアを軸とする保存的腎臓療法(conservative kidney management:CKM)のほうが生命予後と機能予後およびQOLに関して優位という報告もみられるようになってきた.こうした知見を背景に,西洋諸国ではCKMへのアクセスが拡大している.日本でも『高齢腎不全患者のための保存的腎臓療法―CKMの考え方と実践』(2022)が刊行された.これは日本における最初の「CKMガイド」である.暦年齢だけでなく高齢者総合機能評価等を踏まえた療法選択が望まれる.

    療法選択に関する意思決定支援について,同「ガイド」は共同意思決定(shared decision-making:SDM)を推奨している.SDMでは医療・ケアチーム側からは医療・ケアの情報を患者・家族側に伝え,患者側は自らの生活と人生の物語りに関する情報を医療・ケアチーム側に伝える.双方はコミュニケーションをとりつつ,患者の価値観・人生観を反映した物語りの視点で最善の選択に至ることを目指す.SDMのプロセスをともにたどりつつ,将来,本人が人生の最終段階に至り意思決定能力が不十分となった場合に備え,本人の医療・ケアに関する意向を事前に把握するために双方で対話を繰り返しておくと,それがアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)になる.ACPの適切な実施は最期まで本人らしく生きることを支援する.

特集
老年腫瘍学の現状と将来展望
  • 田村 和夫
    2022 年 59 巻 4 号 p. 456
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー
  • 津端 由佳里
    2022 年 59 巻 4 号 p. 457-463
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    我が国は超高齢化社会となり,がん治療担当医は高齢がん患者の治療に直面する頻度が急増している.高齢がん患者に対する治療方針の検討に際しては,1)機能評価(Geriatric assessment;GA)の実施による患者の能力・脆弱性と介入の必要性の評価,2)予定している治療のリスク評価,3)1)と2)の結果に応じて標準治療をmodifyする必要性の判断,の3つのステップがある.現時点で日本のがん診療においては最初のステップである高齢がん患者の脆弱性のスクリーニングおよびGAの実施も残念なことにまだ一般的ではない.しかしながら,GAを実施することでPSのみでは評価のできない問題点の抽出が可能であり,GAツールの普及とGA結果に基づいた介入方法の実装への取り組みが国内でも始動したところである.GAの実施とその結果に基づく介入は,患者と医療者のコミュニケーションを円滑にし,無益な有害事象を減少させるというGAの有用性に関するエビデンスもそろい始めており,患者個々を多面的に評価したうえで,GA結果を踏まえた治療方針の検討と,介入可能な要素に関して積極的に介入しつつがん診療を行っていくことが高齢者のがん診療では世界的にも標準化されつつある.今後GAの応用がさらに普及し,すべての高齢がん患者にGAを実施しその結果から有害事象や予後予測を行い個々の状態に合わせた治療内容の提示とサポート体制を提供することで,高齢がん患者の個別化医療がさらに推進されることを期待したい.

  • 吉田 好雄
    2022 年 59 巻 4 号 p. 464-471
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    高齢がん患者に対しては,術前の患者状態がfitであるかunfitであるかを判断し,患者家族と相談のうえ術式を決定することが極めて重要である.手術療法が必要な高齢がん患者に対する治療戦略は,いわば最大の個別化医療であり,個々に対する最適な治療法を決定するためには従来の術前検査で抽出されない因子の評価が必要なのである.本稿では,これらの評価法を中心に解説し,術前術後の虚弱な高齢がん患者に対する介入法を紹介する.

  • 澤木 正孝
    2022 年 59 巻 4 号 p. 472-477
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    がん治療はリスクとベネフィットのバランスで決められる.暦年齢のみで治療を手控えることは勧められない.標準治療は臨床試験で確立されるが,がん薬物療法では対象に高齢者が含まれることが少ないこと,薬剤の代謝・吸収・分布・排泄に関わる生理的機能変化の為,非高齢者における標準的抗がん薬をそのまま外挿してよいか,判断が難しい.がんが余命を左右するかを検討し,併存症・臓器機能を検証した上で治療のリスク・ベネフィットと患者の嗜好・QOLの価値観等を総合的に勘案し治療を選択する.高齢者機能評価による生命予後の予測,抗がん薬の有害事象予測,足りない社会的資源の抽出等の役割に加え,評価を用い老年医学の見地に立った医療チームによる適切な介入によって,協働的意思決定支援を伴う個別化した治療を可能とする段階にきている.この点で老年医学との連携はますます重要になっている.

  • 室伏 景子
    2022 年 59 巻 4 号 p. 478-482
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    放射線治療は,照射により得られる効果が照射による負の影響(有害事象など)を上回る場合に適応となる.放射線治療の目的は根治から緩和と幅が広く,一般的に緩和照射の方が治療の負担が少ない.高齢者に対する放射線治療は若年者と比べて,有害事象の発生頻度の増加や重篤化の可能性があり注意を要するが,有害事象は照射部位や線量,照射野の設定,照射法に大きく依存するため,患者の状況を把握し,適切な照射スケジュールや照射法などを検討することが重要である.

原著
  • 原山 茉優, 永井 宏達, 大川 夏実, 佐野 恭子, 楠 博, 玉城 香代子, 和田 陽介, 辻 翔太郎, 新村 健
    2022 年 59 巻 4 号 p. 483-490
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:地域在住高齢者における身体活動量とアパシーの関連を明らかにすることである.方法:本研究は地域在住高齢者を対象とした横断研究である.アパシーの評価には日本語版Geriatric Depression Scale15の下位項目のうち,アパシーに関する項目である3項目を用いた.身体活動量はリストバンド型身体活動量計を用いて,2週間あたりの中強度以上身体活動量,低強度身体活動量,座位行動を測定した.統計分析として,アパシーの有無と各強度別身体活動量の関連について,ロジスティック回帰分析を用いて検討した.結果:784名(平均年齢72.7±5.9歳)が解析対象となった.対象者のうち,アパシー群は103名(13.1%),非アパシー群は681名(86.9%)であった.多変量解析の結果,基本属性により調整したモデルでは,総身体活動量(OR=0.947,95% CI=0.912~0.984,p=0.005),低強度身体活動量(OR=0.941,95% CI=0.899~0.985,p=0.009),座位行動(OR=1.002,95% CI=1.001~1.003,p=0.007)がアパシーの有無に有意に関連していた.一方,中強度以上身体活動量はアパシーとの有意な関連が認められなかった(OR=0.916,95% CI=1.826~1.017,p=0.100).機能的な因子による調整を加えた最終モデルでは,身体活動量のすべての強度レベルにおいてアパシーとの有意な関連性はみられなくなり,うつ症状を表すGDS-12とアパシーとの強い関連が示された.結論:アパシーを呈する高齢者では,総身体活動量,低強度身体活動量が低下しており,座位行動が延長していた.しかしながら,それらはうつ症状の影響を強く受けており,身体活動量とアパシーの独立した関係は認められなかった.

  • 寺岡 かおり, 辻 大士, 神藤 隆志, 徳永 智史, 大藏 倫博
    2022 年 59 巻 4 号 p. 491-500
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:地域在住高齢者の体力の推移をパフォーマンステストにより把握し,新型コロナウイルス感染症流行下では平時より顕著な体力低下が生じているのかを明らかにする.方法:2016年から2020年にかけて開催された健診事業に参加した地域在住高齢者240人(男性107人,女性133人,平均76.7±5.1歳)を対象とした.握力(上肢筋力),開眼片足立ち時間(静的バランス能力),長座体前屈(柔軟性),Timed up and go test(TUG,複合的移動能力),5 m通常歩行時間(歩行能力),48本ペグ移動(手指巧緻動作)を評価した.線形混合効果モデルを用い,繰り返し測定データ(レベル1),流行前(2016~2019年)と流行下(2019~2020年)(レベル2),個人(レベル3)の階層性を持つデータとして扱った.調査年(レベル1)の固定効果を求めるとともに,調査年と流行前・下(レベル2)のクロス水準交互作用を確認し,2019年から2020年にかけての追加の低下幅(B)を推定した.結果:有意なクロス水準交互作用が確認された項目は,男性で長座体前屈(B=-2.56,95%信頼区間:-4.45~-0.66 cm),TUG(+0.39,0.21~0.56秒),5 m通常歩行時間(+0.15,0.04~0.27秒)であった.女性では開眼片足立ちを除くすべての項目である,握力(-0.58,-1.11~-0.05 kg),長座体前屈(-3.53,-5.11~-1.95 cm),TUG(+0.15,0.03~0.27秒),5 m通常歩行時間(+0.14,0.04~0.24秒),48本ペグ移動(+0.89,0.28~1.51秒)であった.結論:男女いずれも柔軟性や移動動作能力の低下が確認されたことに加えて,女性でのみ上肢筋力や手指巧緻動作が低下していた.

  • 松浦 潤, 白川 光浩, 高橋 奈津子, 瀧 由香利, 宮田 恵, 名畑 孝
    2022 年 59 巻 4 号 p. 501-506
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,介護付き有料老人ホームにおける薬剤耐性菌の発生状況やリスク因子を把握・検討することである.方法:2020年1月から12月までの12カ月間に,3カ所の介護付き有料老人ホームにて尿路感染症を起こした高齢者48人(男性11人,女性37人)について,カルテ上の検査結果や患者情報を後方視的に検索し,好気性病原細菌について解析を行った.結果:分離菌のうちEscherichiacoli(E.coli)が37.1%と最多であり,E.coliのうちESBL産生菌は26.1%であった.E.coliにおけるレボフロキサシン(LVFX)への感性は47.8%であり,耐性は47.8%,中間は4.4%,第3世代セファロスポリンのセフトリアキソン(CTRX)は感性73.9%,耐性は26.1%,ST合剤の感性は81.8%,耐性は18.2%であった.また,ESBL産生E.coliでは,LVFXには感性0%,耐性83.3%,中間16.7%という高い耐性を示したが,ST合剤には感性83.3%,耐性16.7%と高い感受性を残していた.背景因子については,LVFXに感受性を示すE.coliを有する群と耐性を示すE.coliを有する群では,有意な差は認めなかった.しかし,CTRXに感受性を示すE.coliを有する群と耐性を示すE.coliを有する群とでは,CTRXに耐性を持つE.coliを有する群ほど,有意にBMIが低く(p=0.0389),検体採取の1年以内に何らかの抗菌薬使用歴を持つものが有意に多かった(p=0.0418).結論:高齢者施設においてE.coliのLVFX耐性率は極めて高い.ESBL産生菌も増加しており,尿路感染症においてLVFXの使用は可能な限り控えることが望ましく,抗菌薬治療を実施する場合には薬剤選択は慎重に行う必要がある.

  • 於 タオ, 小熊 祐子, 朝倉 敬子, 髙山 美智代, 阿部 由紀子, 新井 康通
    2022 年 59 巻 4 号 p. 507-517
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:85歳以上の高齢者の割合が増加すると予想されている中,日本での集団を対象とした食事パターンと身体機能との検討は限られる.本研究は東京都在住の85歳以上の高齢者の食事パターンを明らかにし,身体機能との関連を検討することを目的とした.方法:The Tokyo Oldest Old survey on Total Health研究のベースライン調査データで推定された58項目の食品を33項目に集約し,エネルギー調整した後に主成分分析を行った.身体機能は握力,椅子立ち上がりテスト,通常歩行速度で行った3 m timed up and go testの結果を用いた.重回帰分析で交絡因子を調整し,各食事パターンと身体機能との関連を検討した.結果:解析対象者は年齢が87.3(86.2~88.8)歳(中央値(四分位範囲))であった.「副菜型;植物性食品」,「主菜型;魚ときのこ」,「主食型;めしとみそ汁」の3つの食事パターンを特定し,このうち,「主菜型;魚ときのこ」の傾向と握力が有意に関連した(偏回帰係数,B(95%信頼区間):0.48(0.13~0.83)).結論:東京都に在住する85歳以上の高齢者集団で魚やきのこの摂取が特徴的な食事パターンが握力と正の関連を認めた.

  • 佐藤 晶子, 内山 由美子, 浅井 八多美, 藤井 さと子, 鈴木 みずえ
    2022 年 59 巻 4 号 p. 518-527
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:A介護老人保健施設は2014年から看取りケアの質向上に取り組んできた.2017年人生の最終段階における医療に関する意向を確認する「終末期ケアについての説明および意向書」,2018年高齢者本人の嗜好や習慣,価値観や信念を聴き取り多職種で共有するノート「私の願い」を導入した.本研究の目的は,A介護老人保健施設における「私の願い」導入後のケアスタッフの思いと看取りケアの変化を明らかにすることである.方法:A介護老人保健施設の全ケアスタッフ対象に研究協力を依頼し,同意が得られた13名を対象とした.職種構成を考慮した上で日程調整を行い,2019年6月の2日間に分けてフォーカスグループインタビュー(Focus Group Interview:FGI)を実施した.インタビュー内容の逐語録を作成し,「私の願い」導入によるケアスタッフの思いと看取りケアの変化に関して質的に分析した.結果:FGIの内容を質的に分析した結果,【「私の願い」活用の困難感】【「私の願い」活用の効果】【本人の望むケアの模索と実践】【家族との意図的な関わり】【看取りケアの自信】【看取りケアの常態化】の6つのカテゴリーが抽出された.結論:「私の願い」導入後,ケアスタッフは聴取した言葉や内容を書面にすることや本人への聴きづらさなど「私の願い」の活用に困難を感じていた.一方,ケアスタッフは新たな一面を知る,ケアのさらなる可能性を感じる,多職種間の対話が活性化するなど「私の願い」の活用の効果を感じていた.そして,家族と意図的に関わり本人が望むケアを模索して実践することを重ねながら,看取りケアの自信を得て,看取りケアを常態化していた.

  • 水野 稔基, 井坂 昌明, 倉本 孝雄, 井ノ上 智美, 神出 計
    2022 年 59 巻 4 号 p. 528-535
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:地域在住要介護認定高齢者を対象に,身体活動量と睡眠状態の関連を検証すること.方法:対象は,通所介護サービスを利用する要支援1~要介護3の認定を受けた65歳以上の高齢者45名(女性33名,平均年齢83.2±4.4歳)とした.身体活動量はLife Space Assessment(以下LSA),睡眠状態はピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburg Sleep Quality Index;以下PSQI)より総睡眠時間,睡眠効率,PSQI総合得点を評価し,身体機能はTimed up and go test(以下TUG)と握力を測定した.統計学的分析は,LSAを従属変数とし,相関分析でLSAと有意な相関が認められた睡眠指標(総睡眠時間,睡眠効率,PSQI総合得点)およびTUGを独立変数とし,性別,年齢を調整変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った.睡眠指標の内,睡眠時間を投入した分析(モデル1),睡眠効率を投入した分析(モデル2),PSQI総合得点を投入した分析(モデル3)にそれぞれ分けて検証した.統計ソフトはR commanderを使用し,有意水準はすべて5%とした.結果:睡眠時間を投入したモデル1ではTUG(β=-0.375,p<0.01)と睡眠時間(β=0.383,p<0.01),睡眠効率を投入したモデル2ではTUG(β=-0.368,p<0.01)と睡眠効率(β=0.570,p<0.01),PSQI総合得点を投入したモデル3ではTUG(β=-0.392,p<0.01)とPSQI総合得点(β=-0.590,p<0.01)が独立して有意な変数として選択された.結論:要介護認定高齢者の身体活動量はTUGに加え,睡眠時間や睡眠の質などの睡眠状態が関連することが示唆された.身体活動量の改善には身体機能のみならず睡眠の量的・質的な評価も考慮したアプローチが必要と考える.

  • 井田 諭, 金児 竜太郎, 今高 加奈子, 大久保 薫, 東 謙太郎, 村田 和也
    2022 年 59 巻 4 号 p. 536-542
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,高齢糖尿病患者における孤独感と高次生活機能との関連性を検証すること.方法:対象は伊勢赤十字病院外来通院中の65歳以上の糖尿病患者とした.高次生活機能の評価には,自己記入式質問紙によるTokyo Metropolitan Institute of Gerontology Index of Competence(TMIG-IC)を用いた.孤独感の評価には,自己記入式調査票である日本語版孤独感尺度短縮版を用いた.目的変数をTMIG-IC得点,説明変数を孤独感,及び調整変数とした重回帰分析を用いて,孤独感の高次生活機能に関する調整後偏回帰係数を算出した.結果:170例が本研究の解析対象となった.孤独感ありは,91人(53.5%),平均TMIG-IC得点は11.3点であった.孤独感の高次生活機能に関する調整前,及び調整後偏回帰係数は,それぞれ-1.61(95% confidence interval(CI),-2.31 to -0.91;P<0.001),-0.88(95% CI,-1.52 to -0.23;P=0.008)であった.結論:高齢糖尿病患者における孤独感が高次生活機能低下と関連することが明らかとなった.孤独感を有する糖尿病患者を診た際の高次生活機能低下に関する注意喚起が重要と思われた.

  • 清水 辰徳, 小玉 鮎人, 菅原 薫, 浅野 真理子, 奥田 佑道, 大田 秀隆
    2022 年 59 巻 4 号 p. 543-550
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:認知症地域支援推進員の効率的な事業展開に向けて必要なことを検討する.方法:当センターがある秋田県において,25市町村の認知症地域支援推進員を対象に活動の現状を把握し,事業を効率的に展開するためにはどういったことが必要かを検討するための簡易アンケート調査を行った.結果:第一に認知症支援推進員の存在を地域住民に認知されていないことが判明し,その存在や活動を周知するような機会が必要であることが明らかになった.また推進員同士の情報共有や認知症の支援体制を構築するための社会資源を把握するツールなどが不足していることも明らかになった.また連携の面では,初期集中支援チームや疾患医療センターとの連携はとれているものの,認知症サポーターとの連携が不十分であることが判明した.さらに推進員の大きな役割である認知症ケアパスの作成や活動にはあまり関与しない実態が見えてきた.結論:今回の結果より,事業を効率的に展開するためのポイントとして,1.地域住民に対する認知症地域推進員を周知するための情報発信,2.認知症サポーターや民生委員との連携づくり,3.社会資源マップの作成やその把握,認知症ケアパスの有効活用,4.地域支援推進員が兼務しなくてよい労働環境の整備,5.認知症施策全体を理解するための学習の場づくり,の以上5点を提案する.

症例報告
  • 中村 宏信
    2022 年 59 巻 4 号 p. 551-558
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    症例は86歳女性.くも膜下出血で23年前にV-Pシャントが留置されている.発熱を主訴に救急外来受診.入院時診断は尿路感染症でCMZによる治療を開始した.入院時の腹部CTでV-Pシャントが上行結腸に迷入していることは判明していたが,腹膜炎や髄膜炎を示唆する臨床症状や画像所見に乏しいため,当初はV-Pシャントが熱源とはみなさなかった.ただ,尿培養で感受性良好な大腸菌が検出されているにもかかわらず,39度台の高熱が1週間にわたり遷延したため,V-Pシャントの腸管迷入に起因した逆行性の髄膜炎を想定して髄液検査を実施.髄液中の細胞数上昇などを認め,細菌性髄膜炎と診断した.脳外科のある他院へ転院しシャント抜去術を施行され,術後は速やかに解熱した.後日シャントチューブ先端および髄液培養から緑膿菌が検出され,CFPMの投与も行われた.水頭症悪化の徴候がないため,シャントチューブの再留置はしない方針で当院へ転院.リハビリなどを行い経過良好で退院となった.

    発熱を主訴に救急外来を受診する高齢者は非常に多く,まずcommon diseaseである肺炎や尿路感染症から考えるのは妥当な戦略だが,体内に人工物がある場合はそこが感染源になっている可能性を常に考慮する必要がある.成人におけるV-Pシャントの腸管迷入に関する文献を渉猟し考察した結果,V-Pシャントが腸管に迷入していても半数程度は無症状で経過し腹膜炎は呈しにくい一方,半数程度は髄膜炎をきたす可能性があることがわかった.V-Pシャントの留置された高齢者の発熱を診療する際には,こうした知見も参考に診療にあたる必要がある.

  • 宮脇 正次, 鳥羽 梓弓, 石川 讓治, 原田 和昌
    2022 年 59 巻 4 号 p. 559-564
    発行日: 2022/10/25
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル フリー

    症例はレヴィー小体型認知症・肥大型心筋症でフォロー中の80歳女性.X-3年以降,肥大型心筋症による左室流出路狭窄の圧較差は10 mmHg程度で安定していた.X年4月散歩中に前兆なく意識消失し当院へ搬送された.入院時の心電図等の精査の結果Adams-Stokes発作は否定的で,心臓超音波検査では左室流出路の圧較差に著変はなく,運動(臥位エルゴメーター)負荷でも左室流出路の圧較差は変化しなかった.ヘッドアップチルト試験では,症状はないもののヘッドアップ後1分で収縮期血圧が44 mmHg低下した.これまでの結果から起立性低血圧の影響も考えられたが,散歩中の意識消失の説明としては不十分と考えられた.そのため,姿勢による血行動態への影響を評価する目的で,座位での心臓超音波検査を行ったところ,圧較差は41 mmHgまで増大し,失神の一因になりうると考えられた.レヴィー小体型認知症における起立性低血圧は高齢者の失神の原因の一つである.しかし肥大型心筋症やS字状中隔等で左室流出路が狭小な患者においては,起立時の体液シフトによって左室内腔が狭小化し,圧較差が増大することも失神の誘因の一つとなりうる.そういった患者においては座位での心臓超音波検査が有用である可能性が示唆された.

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