日本復帰で問題になっている沖縄は, 戦前戦後の特殊事情から日本内地に比べて高脂肪 (60g~80g), 低蛋白 (55g~65g), 高カロリーの食餌環境下にあり, そうした環境下にある成人病の発生ならびに進展は興味があり, 同じような外来をもっている沖縄と熊本の病院の内科系患者についてその実態を調査し, 比較検討を行なった.
1) 人間ドックに入った正常者の血清総コレステロールは沖縄では熊本に比べて各年代とも約10%~15%高く (200mg/100m
l~220mg/100m
l), アメリカ人と結婚している日本婦人の値はアメリカ人の値に近く, アメリカ籍の日本人2世の値は沖縄に住む日本人の値に近かった.
2) 高血圧患者で Keith-wagner IIa 以上の眼底所見を有する者の割合は熊本がやや多いが, 眼底出血を合併している者の割合は逆に沖縄が多い.
3) 循環器疾患患者の中で臨床的に脳出血と診断されたものの割合は両地方似ているが, 発作平均年齢は沖縄が高齢で, 脳血栓の割合は熊本2.63%に対し. 沖縄は4.51%で. 沖縄がはなはだしく多い (発作平均年齢は似ている).
4) 心筋硬塞も熊本 (0.49%) に比し, 沖縄 (2.25%) が多い. しかし狭心症 (労作性および中間型) は両地方の発生率に差がない.
5) 沖縄は糖尿病に対する社会的, 個人的認識が非常に低く, 内科系外来患者に対する糖尿病患者の割合は沖縄が2% (300名) で熊本の2.5% (210名) に比べてやや低いが, 沖縄の場合, 最近発病したと思われる者が多く, 過半数は過肉食者で, 肥満している者が多く, とくに男子や若い人にその傾向があり. 56%は250mg/100m
l以上の高コレステロール血症を有していた (熊本は20%).
6) 糖尿病患者の高血圧, 心電図異常, 網膜症の合併率は熊本が沖縄に比しやや高いが, 蛋白尿の合併は逆に沖縄のほうが高率であった.
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