日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
6 巻, 4 号
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  • 宮崎 学
    1969 年 6 巻 4 号 p. 245-252
    発行日: 1969/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年, リハビリテーションに関する研究の進歩とともに, 脳卒中後遺症の対策もまた長足の発展をみるにいたった. しかし, 脳卒中後遺症のリハビリテーションにおいては, 依然として機能回復訓練および外科的整復手術による運動麻痺の改善が対策の要諦をなしているため, 薬物療法は補助療法の一手段とみなされているようである.
    しかしながら機能回復訓練が実施困難または不可能な発病直後ないし重症例においては, 必然的に薬物療法が対策の主導的役割を果さざるをえないし, また訓練ないし手術が可能なものにおいても, 対象例の多くが壮老年者によって占められている事実を勘案すると, 訓練ないし手術による侵襲は可及的僅少にとどめ, 一方, 薬物療法に対してより大きな役割を託することが理に適した措置であると思う.
    今回, シチジン系の核酸誘導物質 Citicoline を陳旧かつ症状固定の脳卒中後遺症患者に連用してその臨床効果を Double-blind, Cross-over 法によって検定したところ, 本剤は脳卒中後遺症の主症状である筋強直 (rigidity) および関節拘縮 (contracture) に対して明らかに有効であることが実証された.
  • とくに血圧ならびに眼底所見との関連において
    吉田 公平
    1969 年 6 巻 4 号 p. 253-265
    発行日: 1969/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    循環器管理の立場から, 高血圧症あるいは動脈硬化症における爪床皮膚毛細血管像の意義を検討し, 本検査法を評価する目的で, その顕徴鏡写真による形態分析を行ない, 血圧ならびに眼底所見との関連をみた.
    検査対象は愛知県東加茂郡旭町の40才以上の住民623名と, 対照としての名古屋市内の高校生401名である.
    まっすぐな頭髪針型の毛細血管型は高校生と40才代ではもっとも頻度の高い型であり, 加令とともに低率となるが, 交叉あるいは捻転を示す型は中高年者に高率であり, 加令とともにその傾向が一層著明であった. 迂曲のみ著明で交叉や捻転などのない型は, 中高年者に比し高校生に多く, また種々の形の蹄係が混在する像は中高年者に多くみられた. 血圧との関係は, 高校生の高血圧者には, 種々の変形した蹄係が混在する像, 動脈脚径の静脈脚径に対する比 (A/V比) が1/2以下のもの, 乳頭下静脈叢を認めるものが多く, 中高年の高血圧者には, まっすぐな頭髪針型のものが少なく, 交叉あるいは捻転を示すもの, 水平血管網を伴ないあるいは蹄係の短い未熟型を呈するもの, 2/3以下の小さいA/V比を示すもの, 乳頭下静脈叢を認めるものが多かった. 眼底所見との関係は, 中高年者で眼底異常所見のないものは, まっすぐな頭髪針型のものにもっとも高率であり, 眼底異常所見を有するものは, 頭髪針型以外の変形した毛細血管型のものに多かったが, なかんずく交叉あるいは捻転などを示す型のものに高率であって, II度以上の眼底変化の頻度もこの型に高かった, また乳頭下静脈叢を認あるもの, 2/3以下の小さいA/V比を示すものなどに有所見者の比率が高く, さらにA/V比が小さくなるにしたがい, 眼底変化も高度となる傾向がみられた. 以上のごとく, 高血圧者と眼底所見の異常を示すものには概ね共通した毛細血管の形態を認めたが, 眼底所見と毛細血管像との関係は, とくに50才を過ぎたものにおいて密接となる傾向を認めた.
  • 半沢 敦正, 久山 栄一, 波柴 忠利, 木畑 正義, 水川 士郎, 藤井 靖久
    1969 年 6 巻 4 号 p. 266-274
    発行日: 1969/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年, 動脈硬化症に関する研究は基礎ならびに臨床医学の両分野において多大の注目をあびている. われわれは動脈硬化性諸疾患 (糖尿病, 心筋梗塞, 脳軟化症等) における脂質代謝と, 血液凝固, 線溶系, および血小板系に関して臨床的検討を試みた. また, 高脂血症を呈する動脈硬化性諸疾患に対して抗脂血剤, Dextran sulfate を使用し, 脂質の変動と血液凝固, 線溶系, ならびに血小板系の変化について検討した.
    上述の動脈硬化性諸疾患における脂質と, 各脂質分画について, それぞれ高脂血症を呈するものと, 正常脂血群とに分類し, 凝固線溶系について比較検討したところ, 凝固系 screening test および線溶系では総脂質量,その他, cholesterol, triglyceride, phospholipids についてもまったく正常値群と高脂血群で差は認めえなかった. しかし凝固因子の単独測定, TGTにおいては, 総脂質量の高値群即ち高脂血症群と正常脂血症群とで比較してみると, 高脂血症群に於ては第II因子, 第V因子, BaSO4吸着血漿因子群および血清因子群で活性高値を認めた. すなわち, これ等動脈硬化性諸疾患において, 高脂血症群は正常脂血を示すものに比し凝固能の亢進を認めることができた. また, 血小板系に関しても, 血小板第3因子能, 及び粘着能は高脂血症群で亢進を認めた.
    Dextran sulfate (MDS) を動脈硬化性諸疾患の高脂血症群に使用し, 血液凝固系に及ぼす影響を検討した. TEGにてr, kの延長, maの短縮, すなわち血液凝固能抑制効果を認めた. 特に血清 cholesterol の低下と凝固抑制効果は平行している. 凝固因子としては第V因子, 第VII因子, 血小板第3因子能の活性低下を認めた.
  • 第1報 臨床的研究: 骨そすう症とアミノ酸代謝
    大畑 雅洋
    1969 年 6 巻 4 号 p. 275-281
    発行日: 1969/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    骨そすう症におけるアミノ酸代謝を検討する目的でアミノ酸経口負荷試験を行った. 対象は健康老年者7名と本症の重症患者11名, 軽症患者5名であった. 本症患者は, 肝, 腎疾患やその他の重大な疾患を有しないものを選び, 骨そすう症の診断基準は腰椎側面断層写真で椎体濃度と椎間板濃度の比が1.0以下のものとし, さらに椎体の圧迫骨折のあるものを重症, ないものを軽症とした.
    被体者に早朝空腹時, 体重に比例した量のアミノ酸混合剤を水とともに服用させ負荷前, 負荷後1, 2, 3, 4時間に採血し, 血清1mlの遊離アミノ酸をガスクロマトグラフィー法により分析した.
    負荷したアミノ酸混合剤に含まれかつ測定し比較しえたアミノ酸はバリン, ロイシン, フェニルアラニンである. バリンについては負荷前値は正常者63±7.7, 本症 (重症) 76±8.0 (平均値±標準誤差, 単位はμg/ml) で有意差はないが, 負荷後1時間値はそれぞれ151±9.0と215±21.3で本症患者 (重症) は正常者より有意に高く, 4時間値も本症患者 (重症) (178±16.3) が正常者 (139±8.7) より有意に大きかった.バリンの最高値も本症患者 (重症) が263±24.6, 正常者が192±5.5で本症患者が有意に高い値を示した. 軽症骨そすう症患者は1時間値が157±17.2, 4時間値が167±31.8, 最高値が226±25.3で正常者と骨そすう症 (重症) との中間的な値をとり, 正常者とのあいだに有意差はない.
    ロイシン, フェニルアラニンについては本症患者と正常者のあいだに差がみとめられなかった. バリンは腸管吸収が速く, 肝臓での代謝の緩慢であることが知られている. バリンの1時間値と4時間値が本症患者で高いことは, 本症患者に軽微な一般的アミノ酸代謝異常があり, バリン負荷がそれを鋭敏に検出したか, あるいはバリンそれ自体の代謝異常のあることを示すと考えられる.
  • 第2報 実験的研究: サイロカルシトニンの骨たんぱく・アミノ酸代謝に及ぼす影響
    大畑 雅洋
    1969 年 6 巻 4 号 p. 282-287
    発行日: 1969/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    サイロカルシトニン (Thyrocalcitonin, TCT) は血中カルシウム低下作用があり, それは骨吸収抑制作用によるとされる. TCTは骨そすう症の治療に有効である可能性が示唆されているので, TCTのたんぱく・アミノ酸代謝に及ぼす作用を検討した.
    1) ウィスター系雄ラットにブタ甲状腺から抽出されたTCTを週6日間, 毎日50mMRC単位を皮下注射した. 3週間後, 絶食させたラットの一部から採血し, 残りのラットに2%バリン水溶液を1ml/100g体重, 経口負荷して1時間ごとに4時間まで数匹ずつ採血した. バリン負荷を行わなかったラットの大腿骨を採取し, ソフテックス撮影してその相対的骨皮質巾を計測した. さらにその骨の軟部組織をとり, 骨髄を除去し, 乾燥脱灰し加水分解してアミノ酸分析を行った. その結果バリン負荷曲線にはTCT処理群と対照群の間に有意差は見出されなかったが, TCT処理群の大腿骨の相対的骨皮質巾 (27±0.6%〔16〕) は対照群 (25±0.4%〔13〕) より大きく, 骨端部のアミノ酸分析では測定しえたアミノ酸アラニン, グリシン, バリン, ロイシン, ハイドロキシプロリン, フェニルアラニンのうち, フェニルアラニンの有意の増加がTCT処理群にみとめられた (フェニルアラニン, 対照7±0.6μg/mg〔5〕, TCT 10±0.8〔5〕).
    2) 同系ラットに非絶食時TCTを20mMRC単位あるいは5mMRC単位を静脈注射して1時間後に静脈血を採取してアミノ酸分析を行った. 絶食ラットにも同様にTCTを静脈注射して1時間後の血中アミノ酸を測定した. その結果, 非絶食時の20mMRC単位注射群にアラニン (74±16μg/ml〔5〕, 対照135±17〔5〕), グリシン (53±7, 116±17), ロイシン (25±5, 65±16), フェニルアラニン (19±2, 25±1) の低下, 5mMRC単位注射群にフェニルアラニン (20±1) の低下をみとめた. 絶食ラットではTCT注射群と対照群のあいだに血中アミノ酸値の有意差をみとめなかった.
  • 動脈硬化性変化について
    堀内 成人, 佐々木 陽, 乾 久朗
    1969 年 6 巻 4 号 p. 288-294
    発行日: 1969/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者には動脈硬化症の合併が高率であるが, 一方動脈硬化症は加令とともにその頻度が高くなる. 糖尿病患者の動脈硬化症について検討する場合, 同様な集団の糖代謝正常のグループと比較することが必要である. 成人病センターを受診した糖尿病患者 (初発見のものが多い) 1205名について, ブドウ糖50g経口負荷試験 (オートアナライザー法) で2時間後の血糖値200mg/dl以上のもの, 140~199mg/dlのもの, 120~139mg/dlのものの3群に分かち, 一方ドック入院者で2時間後の血糖値119mg/dl以下のもの313名を対照として, 年代別 (40~59才と60才以上の2群) および高血圧の有無 (収縮期血圧150以上または拡張期血圧90以上を高血圧, 収縮期血圧149以下および拡張期血圧89以下を正常血圧) によって組別けし, それぞれについて動脈硬化の頻度を比較検討した. その結果糖尿病患者には高血圧が比較的早期に発症し, その合併頻度は対照群に比してかなり高く, しかも糖代謝の悪化とともに高血圧合併の割合が高くなる. 一方網膜血管硬化症発症の頻度は糖代謝異常の強いものに高率となるが, 高血圧, 加令もその発症の大きな因子として影響している. また尿蛋白の出現も糖代謝の増悪とともに高率となるが高血圧の影響も強い. しかしPSP, 腎クリアランス (GFR, RPF) 異常の頻度は糖代謝異常との間に関係は認められず, 高血圧, 加令が強い影響を及ぼしている. また心電図も高血圧群に異常率が高く糖代謝異常による影響は認められない.
    すなわちわが国の糖尿病患者については高血圧, 尿蛋白陽性の合併が高率であるが, 眼底, 心, 腎の動脈硬化症の合併は高血圧, 加令なども重要な因子として作用しており, これらの影響による部分が強く, 比較的軽度の糖代謝異常ではそれが動脈硬化に関与する因子は少ないものと考える.
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