日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
6 巻, 6 号
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  • 米白人と日本人の比較
    奥富 次郎
    1969 年 6 巻 6 号 p. 355-372
    発行日: 1969/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    腎臓の老性変化の人種による相違を検討すべく, 日本人男子240例, 米白人男子180例の剖検腎について組織学的, 微計測的検索ならびに統計的検討を行った.
    本質的老性変化としての腎臓重量の逐令的減少と実質細胞である尿細管主部上皮細胞数の逐令的減数が両人種ともに認められたが, それらの逐令的の消長過程には興味ある人種差が認められた. すなわち日本人例では米白人例に比して腎重量の減少は顕著に, 実質細胞数の減数は早期に認められた, 尿細管主部上皮細胞の核の大きさには人種差が明らかであったが両人種ともにその年令的変化は認めえなかった.
    さらに糸球体の大きさの人種差を明らかにし, その逐令的の消長過程では米白人例では年令的変化をみないのに対し, 日本人例では60才以後に縮小するのを認めた. 糸球体係蹄細胞数も逐令的に減少するが顕著な人種差はみなかった. すなわち米白人例では高令者における細胞肥大の像をうかがわせた.
    腎臓内動脈硬化の発現と逐令的な増強過程にも人種差がみられ, 日本人例では米白人例より早期かつ顕著であった. この腎臓内血管変化と腎重量減少および腎実質細胞減数との関連性を考察し, 腎臓髄質における線維増生像ならびに硝子化像の逐令的様相の人種差を明らかにするとともに本質的老性変化との関連を考察した.
    腎臓の老化過程にみられるこれらの人種差についてその原因を考察するとともに, その本質的老性変化は人種の別なく認められた事を明らかにした.
  • 米白人と日本人の比較
    三輪 忠彦
    1969 年 6 巻 6 号 p. 373-391
    発行日: 1969/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老性変化の病理形態学的研究の一環として214例の米白人男子例と231例の日本人男子例の剖検肝臓について, その逐令的変化の人種差を中心として組織学的および微計測的に比較検討した.
    1) 両人種間に共通した老性変化として, 肝重量および肝細胞数の逐令的減少をみとめ, 肝細胞数の減少の始まるころから2核肝細胞数は増加し, ピークに達した後に再び減少するが, これと相前後して肝細胞核の容積増大がみられた.
    このような逐令的消長と肝内動脈硬化の消長の間にはとくに有意な相関関係をみとめなかった.
    2) 老化の本質的特徴には人種間の差をみないが, その過程において興味ある差がみられた.
    即ち, 米白人肝では実質細胞の減数が日本人例より10才早くから現われるとともに2核肝細胞の増加のピークもまた10才若年側にずれている. しかし, その後の逐令的減数は米白人例ではゆるやかに進行するのに対して, 日本人例では70才代より急激に顕著となり, 核の増大傾向も米白人例に比べて若干強くなっている.
    また, 肝重量, 肝細胞数, 肝細胞体ならびに肝細胞核の大きさの絶対値は米白人例においてすべての年令層で日本人例に比べて大きく, その差は統計的に常に有意であった.
    老性変化発現様相のこのような差について, 遺伝的な人種差も否定できまいが, むしろ環境の影響, とくに肝臓に対しては, 栄養条件の差およびこれに伴う発育成熟過程の差も十分考慮されねばならない.
  • 村松 睦, 岸本 篤郎, 平井 俊策, 奥平 雅彦
    1969 年 6 巻 6 号 p. 392-399
    発行日: 1969/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高令脳血管障害者の増大に伴い, その脳卒中後遺症者についても, 単なる片麻痺のみでなく, いわゆる double hemiplegia のごとく, 発作の再発歴を有するものがふえてきている. 今回われわれは, 本院に関係した278例の脳卒中例のうちにみられた74例の再発作例について, 統計的に調査した. その結果は(1)再発率は27%, また再発までの期間は, かなりの幅があるが, 38%のものは, 1年以内におこしていた. これら再発群の死亡率は, 74例中の28例 (38%) であった. (2)われわれはまた, 再発群の予後推定およびその実態を検討するために, 臨床的に, 第2回発作後の経過を中心に, 交互両側型・同側反復型・両側同時あるいは漸次罹患型・急死型・亜急死型の5型に分けて分類検討して, その発生病因と予後を比較した. 5型のうち最大の交互両側型40例には17例 (42%) の死亡例があり, このうち, とくに仮性球麻痺症状を呈する群の予後の重大性を確認した.
    また, これら再発群に対して, 3ヵ月以上の rehabilitation team approach を加えて, その成果を self care activities の独立度の面より評価して, 再発群に対する rehabilitation 実施上の予後推定上問題になるものとして, 仮性球麻痺症状・70才以上の年令・発作時昏睡時間・痴呆・失禁等の精神症状の出現, また大きな阻害因子としての, 再発作後も継続せる高血圧症・躯幹筋筋力低下などを指摘した. ついで, 再発例死亡者28例のうち剖検をなしえた26例について, その脳病変の部位, 性質左右対比を行い, さらに直接死因も追求した. また, 他の剖検老人脳にみられた所見より, 高令者の脳には, かなりの高頻度に両側性病変の存在することを指摘した.
  • 玉熊 正悦, 石山 賢, 小泉 澄彦, 高野 達哉, 後藤 佐多良
    1969 年 6 巻 6 号 p. 400-406
    発行日: 1969/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    最近, Lysosome 酵素の膜外遊出と各種の代謝異常やショックの重症化などとの関連性が注目され, とくに細胞の老化, 臓器の加令に伴う変化などにも Lysosome 膜の透過性亢進ないし膜外に遊出した Lysosome 酵素の影響している可能性が指摘されている. 果して動物やヒトの肝臓で, Lysosome 顆粒の膜透過性ないし解裂の度合に老若の間で差があるか否か検討した.
    肝組織を0,25M Sucrose を含む Tris Buffer で homogenize し, 超遠沈でえた上清分画と Lysosome 顆粒分画について, それぞれ従来から Lysosome に局在することの知られている酵素活性を測定し, 上清分画の活性Sと顆粒分画の活性の比で Lysosome 酵素膜外遊出の程度とした. その結果 acid RNase を指標とする限り, マウスやハムスター肝では上述のS:P比が加令とともに増加し, 6週目の値に比較して2年目ではほぼ倍に達していた. これに反しモルモットでは加令とともに幾分S:Pの増加傾向を認めるが, 個体間のバラツキが大きく一定の相関を認めがたかった.
    次に上腹部疾患で開腹術が行われ, 術前肝機能に異常がない25才より85才までの23例について, 術中の生検材料から同様の検討を行った. この際ヒト肝の acid RNasc 活性 Peak はpH 6.0にあり動物の Peak (pH 4.5) より中性例にあるため緩衝液として動物の際の Acetate Buffer の代りに phosphate Buffer を用いた. その結果 acid RNase はヒトでもやはり加令とともにS:P比の増加することを確認したが, β-glucuronidase には年令との相関を認めなかった. Lysosome 膜透過性ないしS:P比の加令による影響が, 指標をする酵素の種類や動物の種により異る理由は必しも明らかでないが, RNA分解酵素の Lysosome 膜外活性が年令とともに増加する上述の成績は, 著者らがすでに報告したヒト肝含量の加令による減少傾向と合わせ興味ある所見と考える.
  • 前川 正, 伊藤 琢夫, 小林 紀夫, 鈴木 芳郎
    1969 年 6 巻 6 号 p. 407-413
    発行日: 1969/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Clofibrate 投与の高コレステロール血症および血小板凝集能に及ぼす影響を Chandler らの回転チューブ法を用いて検討した. Lanolin 飼育家兎に clofibrate を併用投与すると, 血清総コレステロール値を低下せしめるとともに, 亢進した血小板凝集能を正常化する傾向を示す. この傾向は lanolin 投与を中止して clofibrate のみ投与すると一層顕著となる. かかる動物では Chandler 法における thrombus length および thrombus wieght の減少がみられたが, thrombus formation time の変化は著明でなかった. しかし, 血小板凝集能と血清コレステロール値の間には直接の関係がみられなかった.
  • 1969 年 6 巻 6 号 p. 413
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 加令および実験的骨粗鬆症における骨の物理的性状
    藤田 拓男, 折茂 肇, 大畑 雅洋, 岡野 一年, 吉川 政己, 成瀬 信子, 小川 安朗
    1969 年 6 巻 6 号 p. 414-419
    発行日: 1969/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Wistar 系雄ラットの各月令および低カルシウムおよび低蛋白食飼育後に大腿骨, 脛骨を採取, 重量, 比重, 皮質幅, 破壊強度, 定荷重屈曲度を測定した. 加令とともに骨破壊強度は増加したが, 定荷重屈曲度は減少し, 骨の弾力性が低下することが認められた. 低カルシウム食および低蛋白食により著明な骨萎縮が起こったが, 低カルシウム食によってのみ定荷重屈曲度の増加が認められた. Thyrocalcitonin は主として骨の比重と皮質幅を増加せしめ, valine は破壊強度と皮質幅を増加せしめ, 実験的骨粗鬆症のある面において防止効果を示したが, 骨粗鬆症の発生機序には複雑な多くの要素が関与し, 防止効果についても条件の検討が重要である.
  • 伊藤 昌孝
    1969 年 6 巻 6 号 p. 420-427
    発行日: 1969/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    ネフローゼ症候群の患者および抗腎血清による実験的ネフローゼ症候群のネズミについて, 血漿の lecithin: cholesterol acyltransferase (LCAT) 活性を測定し, 血漿コレステロールおよび燐脂質濃度と比較検討するとともに, LCAT とネフローゼ症侯群における高コレステロール血症の成因との関係について考察を加えた.
    ネフローゼ症候群の場合には血漿をそのまま incubation することによる遊離コレステロールの減少率は, 対照に比べて大幅に低下しているが, 血漿コレステロールの増加が著明なために, 実際に血漿1mlあたりで単位時間内にエステル型に変化したコレステロールの量には, ほとんど変化がないか逆に軽度に増加しているとの結果をえた. 不活化人血漿を基質として用い, 反応系における基質の変化による影響を除外して検討した結果, 実験的ネフローゼ症候群においてLCAT活性は低下しておらず, 逆に軽度に亢進している時期もあるとの成績をえた. しかしその亢進の程度は血漿コレステロールの大幅な増加に比べると軽度である. そのために, 増加するコレステロールを十分に処理できない場合があると考えられた. 実験的ネフローゼ症候群の発症後4日目の時点でエステル比の低下が認められたが, これは肝における遊離コレステロールの合成の亢進と, それに対応しえない LCAT 活性の相対的不足の結果と考えられる.
    LCAT活性は生体内でのエステル型コレステロールの turnover と関連していると思われるが, ネフローゼ症候群の場合にLCAT活性が亢進しているが, 遊離コレステロール量にくらべて相対的には不足している本研究の結果は, ネフローゼ症候群においては血漿のエステル型コレステロールの turnover rate は増加しているが, turnover time は延長しているとの最近の McKensie らの報告と一致している.
  • 実験的骨粗鬆症に対する Thyrocalcitonin の効果
    折茂 肇
    1969 年 6 巻 6 号 p. 428-437
    発行日: 1969/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    低Ca食飼育による実験的骨粗鬆症の発生予防ないしは治療における Thyrocalcitonin (TC) の効果につき骨乾燥重量, 灰分量の測定, 骨密度および骨組織像を示標として種々検討を試みた. 骨粗鬆症においては骨吸収昂進像が認められこれが骨量の減少の主因となっており, 一方ではTCに強力な骨吸収抑制作用が存在する点から骨粗鬆症に対するTCの効果が期待されたが, 実際にはそれほど著明な効果は認められなかった. すなわち低Ca食と同時にTCを投与し, 骨粗鬆症発生に及ぼすTCの予防効果につき検討した実験では尾骨においてのみTCの効果が認められ, 大腿骨, 脛骨および上腕骨においてはその効果は不明であった. さらに骨粗鬆症治療におけるTCの効果につき検討した実験でも同様に尾骨においてのみ軽度の効果が認められたに過ぎなかった. 投与したTCの量はそれぞれ20, 100, 500mU/100GMで十分な量と考えられるが, 低Ca食飼育による骨粗鬆症に対してはその発生防止ないしは治療効果は予期に反して軽度であった. なおその理由についても種々の考察を加えた.
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