高令脳血管障害者の増大に伴い, その脳卒中後遺症者についても, 単なる片麻痺のみでなく, いわゆる double hemiplegia のごとく, 発作の再発歴を有するものがふえてきている. 今回われわれは, 本院に関係した278例の脳卒中例のうちにみられた74例の再発作例について, 統計的に調査した. その結果は(1)再発率は27%, また再発までの期間は, かなりの幅があるが, 38%のものは, 1年以内におこしていた. これら再発群の死亡率は, 74例中の28例 (38%) であった. (2)われわれはまた, 再発群の予後推定およびその実態を検討するために, 臨床的に, 第2回発作後の経過を中心に, 交互両側型・同側反復型・両側同時あるいは漸次罹患型・急死型・亜急死型の5型に分けて分類検討して, その発生病因と予後を比較した. 5型のうち最大の交互両側型40例には17例 (42%) の死亡例があり, このうち, とくに仮性球麻痺症状を呈する群の予後の重大性を確認した.
また, これら再発群に対して, 3ヵ月以上の rehabilitation team approach を加えて, その成果を self care activities の独立度の面より評価して, 再発群に対する rehabilitation 実施上の予後推定上問題になるものとして, 仮性球麻痺症状・70才以上の年令・発作時昏睡時間・痴呆・失禁等の精神症状の出現, また大きな阻害因子としての, 再発作後も継続せる高血圧症・躯幹筋筋力低下などを指摘した. ついで, 再発例死亡者28例のうち剖検をなしえた26例について, その脳病変の部位, 性質左右対比を行い, さらに直接死因も追求した. また, 他の剖検老人脳にみられた所見より, 高令者の脳には, かなりの高頻度に両側性病変の存在することを指摘した.
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