人間ドックなどにおける多種目の検査による健康診断成績の評価の方法の一つとして“期待年令”(いわゆる“生物学的年令”) を利用することを試みた.
対象として大阪府立成人病センター人間ドック入院者中から, 各種検査において明らかな異常を認めない男子425名を用いた. まず約90種類の検査項目のうちから24項目を選んで年令に対する偏相関係数を求め, その結果からさらに10項目を選定し, 次のような年令に対する重回帰式を得た.
期待年令=74.140+0.108〔最大血圧〕-0.266〔一秒率〕+0.158〔クンケル反応〕+0.032〔コレステロール〕+0.040〔GTT 2h〕-0.83〔GFR〕-0.034〔RBC〕-0.261〔網状赤血数〕+6.234〔Scheie As〕+0.244〔聴力損失〕
正常群159例についてこの回帰式によって期待年令を求めると, その平均は56.57才となり, 実年令との差の分散は21.35となった. しかし個々の症例については, かなり差の大きいものもみられた.
次に肝障害, 糖尿病, 冠硬化, 高血圧などの症例について, この計算式で期待年令を求めると, 実年令より5~8才高くなり, とくに合併症を伴う高血圧でその差は約10才に達し, 疾患を期待年令という形で表現することができた.
最後に糖尿病, 肝障害, 高コレステロール血症, 高血圧の模擬的症例を設定し, 期待年令式の個人における診断能力について検討した. その結果, 検査所見の軽度の変化でも期待年令にきわめて鋭敏に反映されることが認められた.
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