動脈硬化症の原因としての脂質説, あるいは血栓説に対する諸家の論争は今日両者の見解の一致をみていないところであるが, いずれが主であり, いずれが従であるかはなはだ興味ある諸問題点を投げかけている. 著者らは第1報における, 血液凝固, 線溶能と脂質に関する研究に続いて, 新たに諸種動脈硬化性疾患における脂質代謝と, 血液凝固, 線溶系の一環としての血小板機能, とくに血小板粘着能および凝集能について比較検討を試みた.
動脈硬化性諸疾患では一般に血小板粘着能および凝集能の亢進を認めるが, 血中の総脂質量, 総 cholesterol, triglyceride, phospholipid などと相関々係を認めることは出来なかった.
一方, 高脂血症 (hyperlipidemia) と称する疾患では血小板凝集能と triglyceride ならびに Phospholipid との間に正相関を認めたが, 血小板粘着能と脂質分画には相関は認め得なかった. 糖尿病において動脈硬化症が高頻度に発生することは周知の処である. 本症と脂質代謝, 糖代謝, 血小板機能を詳細に検索したところ, 正脂血糖尿病では血糖値と血小板粘着能との間には正相関を認め, 高脂血糖尿病では凝集能と血糖値の間には負相関を認めた. 脂質代謝と糖代謝は不可分の関係に有るとはいえ, 両者を同時に血小板機能と比較し, 治療上に及ぼす影響も併せ考えるとき興味ある現象を発見できるようである. 脂質の変動を血小板機能の変化についても疾患別に若干の検討を行い併せ報告する.
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