老性変化研究の一環として, 年令の異なった (若年群-生後70日, 中年群-1年, 老年群-2年) SMA雌マウス合計103匹を用い, 処置前ならびにコーチゾン投与 (1mg/1日/体重25g, 6日間連続筋注) 後の変化, 回復過程の肝細胞の変化を比較検討した. 処置前, 投与終了後2日, 9日, 16日の肝組織について, 本編では光顕レベルにおける肝細胞数, 肝細胞体, ならびに核の大きさの微計測的検討と, コハク酸脱水素酵素活性, glucose-6-phosphatase 活性の組織化学的検索の成績を報告した.
肝細胞数は処置前には中年群にもっとも多く次いで老年, 若年群の順で, 処置後, 中, 老年群ことに老年群では明らかな減少を示し16日後にも回復しない. 若年群では処置後とくに減少せずむしろ増加の傾向を示す.
肝細胞体・核の大きさは処置前では老年群にもっとも大きく次いで中年, 若年の順で, 処置後, 中, 老年群では減少し, 16日後にも回復はみられず, 老年群では減少をつづける. それに対して若年群では処置後もとくに変化せず, その後増容の傾向を示す. コハク酸脱水素酵素, glucose-6-phosphatase の活性は処置前には中年, 老年群では若年群に比して高い. 処置後すべて低下するが, 若年, 老年群に比して中年群では軽く, 回復は速やかであった.
以上の所見から, コーチゾン処置による経過の様相において, 若年群が示した老, 中年群との差は, 成長途中にあるためと解せられる. 一方処置後の経過過程において老, 中年群の間に微計測的にはとくに顕著な差を見出すことができなかったが, 酵素組織化学的には老年群において, 私どもがすでに指摘した老性特徴をうかがうことができた. このような点から細胞内小器官レベルでの検討が必要である.
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