自賠法16条1項における被害者の損害賠償額の支払請求と老人健康保険者の代位請求が競合した場合の取り扱いについて,最高裁平成20年2月19日判決は,「被害者優先」との見解を示した。この判決を受けて,自賠責保険実務は,健康保険者等からの代位求償があった場合,「被害者優先」の取り扱いに変更された。ただし,労災保険者からの代位請求については従前の「按分説」に基づく実務を継続しているとされる。
しかしながら,この自賠責保険実務上,労災保険者からの代位請求を従来通りの取り扱いとすることが果たして妥当といえるのであろうか。そこで,本稿は,まず,上記平成20年判決について概観し,それに対する検討を加え,労災保険に対する射程について考察するものである。
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