損害保険研究
Online ISSN : 2434-060X
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78 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
<論文>
  • 吉澤 卓哉
    2016 年 78 巻 1 号 p. 1-25
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
     国際通信を利用した保険の越境取引(cross-border supply)は今後拡大する可能性があるが,国際取引であることを日本国内の顧客が認識しないまま保険募集や保険契約締結が行われ,監督当局の許可を受けないまま海外直接付保(保険者の立場からは,海外直接引受)がなされてしまう惧れのある状況になりつつある。  そこで,本研究では,まず,保険の通信による越境取引に関して,保険業法はいかなる規制が設けているか,そして,当該規制が近い将来に予想される上述の問題状況に適切に対応できるか否かを確認する。その結果,適切な対応が困難であることが判明する。  次に,立法論としていかなる制度を採用すべきかを検討するが,検討にあたり,他の先進国における規制状況を概観する(本号はフランス,ドイツまで)。
  • 鴻上 喜芳
    2016 年 78 巻 1 号 p. 27-49
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
     生産物賠償責任保険itself免責の適用範囲が争われた事例の控訴審判決が平成21年に出されており,これに関する判例研究がある。本稿では,この事例と米国ISO約款を手がかりに日本におけるitself免責の課題を明らかにする。結論として,1点目は,仕事の目的物免責について「仕事の目的物とは,作業が行われた対象物であること」を約款上明記すべきであること,2点目は,「保険の対象となる生産物・仕事をいかに記載しようともビジネスリスクとして免責となる範囲が同一となるよう」約款上の手当てが必要であること,3点目は,保険法対応の約款改訂によって日本ではitself関連免責が大幅に拡大され完成品全般が免責とされたが,これはビジネスリスク免責の適正な範囲を超えており,米国の減損財物免責を参考に免責範囲を縮小する必要があること,を指摘した。
  • 古村 聖
    2016 年 78 巻 1 号 p. 51-76
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
     近年の家族形態の変化に伴い,世帯を一人の個人として分析を行う単一家計モデルの立場を離れ,世帯内に意思決定主体として複数個人の存在を許容するNon-unitaryモデルのもとで消費者の行動を分析する重要性が指摘されている。本研究では,独自に行ったアンケート調査「家計管理と生活に関するアンケート」をもとに,世帯の損害保険需要の意思決定プロセスを明らかにすることを目的とした。具体的には,損害保険の中でも,地震保険に関する需要行動をNon-unitaryモデルの一つである家計内交渉モデルに基づいて分析を行った。主な結論は二つである。一つは,地震保険需要について妻が主導権を握った時に,加入する確率が高くなる。このことは,夫と妻(男女)で地震保険に対する選好が異なることを意味している。二つ目は,夫婦のうち,相対的に教育水準が高い,また交際当初の貯蓄残高が高い者が地震保険需要に対して主導権を握る傾向が強い。この結果から,地震保険に対する需要行動に関して,経済力のある者が世帯の意思決定において主導権を握ることを想定する家計内交渉モデルによるアプローチが有用であることが示唆される。
  • 藤井 卓治
    2016 年 78 巻 1 号 p. 77-112
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
     英文海上保険契約に含まれる準拠法分割指定条項は,抵触法的指定かそれとも実質法的指定か。貨物保険と船舶保険は渉外性が異なり英国約款が使用される意味も異なるが,英国約款の特殊性を認識した上で保険契約者の意思を推定すれば,いずれの場合も抵触法的指定と解するほかない。英法と日本法はそれぞれどの領域に適用されるのか。約款の解釈については英法が適用され(英国約款は英法でしか解釈できない),契約の枠組については日本法が適用されるというのが保険契約者と保険者の意思である。  告知義務違反やワランティ違反は純粋に約款解釈上の問題であり,船舶,貨物いずれの保険においても英法が適用される。譲渡は,貨物保険の場合には被保険者としての地位の譲渡であり,約款解釈上の問題すなわち契約内部の問題であるため英法が適用されるが,船舶保険の譲渡は保険契約から生じる権利の譲渡であり契約の外部の問題であるため日本法が適用される。
<保険教育シリーズ/論文>
  • 佐々木 一郎
    2016 年 78 巻 1 号 p. 113-134
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
     家計が直面する様々な危険を処理するうえで,民間損害保険会社等の任意保険は重要なリスクマネジメント手段の1つである。だが,現在のわが国の学校教育現場では,リスクや損害保険について学ぶ機会はほぼ皆無である。損害保険の知識不足のために,損害保険商品の価値が過小評価され,本来であれば加入しておいたほうがよいと思われるケースにおいても未加入のまま,損害保険が有効活用されないことも考えられる。  本研究では,民間の任意自動車保険に焦点を当て,自動車保険の主観的知識量と未加入行動との関係をロジットモデルにもとづき分析をした。分析の結果,自動車保険の知識量が多いケースと比較して,保険知識量が少ない場合,未加入率が約2.5倍高くなることが示された。実証分析結果より知識不足のために未加入が誘発されている可能があることを踏まえると,中学・高校等における学校教育現場での保険教育のよりいっそうの充実が重要である。
<研究ノート>
  • 松本 絢子
    2016 年 78 巻 1 号 p. 135-164
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
     2015年7月24日,経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会より,報告書「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」が公表された。この報告書では「法的論点に関する解釈指針」として,中長期的な企業価値向上のための適切なインセンティブ付けという観点から,取締役会の上程事項,社外取締役の役割・機能等,役員就任条件,株式報酬といった,従来明確な解釈がなされずに来た法的論点について指針を示したことで,実務界から注目を浴びている。  そこで,本稿では,その解釈指針の中でも,国内外からの優秀な人材確保という点で重要な機能を果たす役員就任条件において主要な論点として取り上げられた,会社補償と会社役員賠償責任保険(いわゆるD&O保険)に着目し,会社補償の在り方を中心に,D&O保険との関係やD&O保険に係る保険料の全額会社負担についても考察する。
<講演録>
<損害保険判例研究>
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