17世紀のイギリスに活躍したニコラス・バーボン(N. Barbon)は,今日,「The Fire officeの創設者」と「重商主義思想の代表者」という2つの側面をもつ。本稿はこの両側面を統一的に把握するものである。そのとき,特に2つの点に注目する。
1つは,バーボンがThe Fire Officeの設立過程で,火災の発生にある法則性を感知し,これを「事故の不変の成り行き」(the constant course of accidents)と呼んだことである。ヤコブ・ベルヌーイ(J. Bernoulli)に先立つこの「大数の法則」の感知は,その後のバーボンの経済思想に対し,方法論的・経済論的に重大な影響を及ぼした。
もう1つは,バーボンがThe Fire OfficeとFriendly Societyとの対立をとおして,「基金なければ保険なし」(There can be no Insurance, unless there be a Fund Setled)という結論に至ったことである。The Fire Officeは,自らの保険基金(支払準備金)を利子生み資本(Zinstragendes Kapital)(=広義の貸付資本)に転化することで,保険の近代化を達成するが,このことは,晩年のバーボン銀行(The Land-Bank established, Anno Dom. 1695)の信用形成にも多大な影響を与えた。
バーボンの人物像は,この2点に注目するとき,全体的に把握される。
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