損害保険研究
Online ISSN : 2434-060X
Print ISSN : 0287-6337
80 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
<講演録>
<研究論文>
  • ―ノーフォルト自動車保険制度試論―
    佐野 誠
    2018 年 80 巻 2 号 p. 29-64
    発行日: 2018/08/25
    公開日: 2020/05/18
    ジャーナル フリー

    近時,自動車における自動運転の進展に伴う法制度や保険制度への影響についての議論が盛んに行われているが,本稿では,自動運転車時代の自動車事故被害者救済制度としてノーフォルト自動車保険制度の導入を提案し,その具体的な制度設計を提示する。

    同制度の導入により,自損事故被害者,運行供用者,ハッキング事故の被害者,過失相殺減額を受ける可能性のある被害者等,自動運転化により従来の制度を前提とした場合には救済が不十分となる可能性のある被害者の救済が可能となる。

    また,自動運転化の進展により,全体としての自動車事故発生率の減少が見込まれることから,このファンドをノーフォルト自動車保険制度導入時のコスト増に充てることができ,これにより同制度に対する社会的受容性が高まることが期待される。

  • ―複数チャネルによる情報伝達をめぐって―
    根本 篤司
    2018 年 80 巻 2 号 p. 65-88
    発行日: 2018/08/25
    公開日: 2020/05/18
    ジャーナル フリー

    今般の募集規制改革では,保険販売チャネルの多様化とともに保険取引の情報の非対称性の問題が意識されている。本稿は,保険募集で扱われる情報の内容および情報収集コストの観点に立って,保険販売チャネルの現状と課題の分析を行う。具体的には,情報コストの負担抑制を目的とした直営方式の代理店チャネルの増加は,かえって保険募集の効率性を阻害する可能性を考察する。結論として,保険販売チャネルの垂直的統合を促すインセンティブを付与し,損害保険会社間の競争を活発化させること,販売手数料をめぐる代理店側の価格交渉力を強化すること,販売チャネルの製販分離の実現を目指すことが,複数チャネルの情報問題の解消に有効であることを指摘する。

  • ―イギリス法を比較対象として―
    榎木 貴之
    2018 年 80 巻 2 号 p. 89-151
    発行日: 2018/08/25
    公開日: 2020/05/18
    ジャーナル フリー

    降車時の転倒,車内での熱中症,車内からの物の投棄のように自動車の走行とは直接関連しない出来事に伴う損害に関しても自動車保険による保護を及ぼすべきかという問題がある(運行・運行起因性の問題)。本稿では,主にイギリス法との比較を通じ,これらの問題を検討した。

    その前提として,まず,イギリスの交通事故補償制度を概観し,それが日本の制度と通底していることを確認した。

    次いで,裁判例を比較した。運行概念に関しては,日本の伝統的な理論が抱える問題点を克服するためには,イギリスの判例理論を参照することが有用であると主張した上で,実際,日本の裁判例もそのようなスタンスをとりつつあると指摘した。運行起因性概念に関しては,平成28年に日本の最高裁が示した解釈がイギリスで構築されてきた判例理論に近似していると指摘しつつ,イギリスの裁判例を踏まえた上で,より広く運行起因性を認める解釈の方向性を示した。

  • ―連邦倒産法Chapter 11と,民事再生法・会社更生法の比較を通じた分析―
    木村 健登
    2018 年 80 巻 2 号 p. 153-194
    発行日: 2018/08/25
    公開日: 2020/05/18
    ジャーナル フリー

    本稿は,民事再生手続または会社更生手続下にある企業において,管 財人ないし再生債務者が旧経営陣たる取締役に対して責任追及訴訟を提 起した場合,これは D&O 保険の保護対象に含まれるかという問題につ いて,米国の事例との比較を手掛かりとした検討を行うものである。馴 れ合い訴訟の抑止という観点から,D&O 保険には一般に「被保険者請 求免責条項」が含まれているが,上記訴訟も当該免責条項の適用対象に 含まれるかが,従来の議論からは必ずしも明らかでないためである。 本稿の結論は,以下の二点である。第一に,管財人による訴訟の場合 については,免責条項の適用を否定すべきである。このような管財人に は,上記免責条項が懸念するような馴れ合いのおそれは存しないこと等 を理由とする。第二に,再生債務者による訴訟の場合については,免責 条項の適用を肯定すべきである。米国の場合に比して,再生債務者に対 する監督の程度が弱いこと等を理由とする。

<寄稿(RIS 2017優秀論文)>
  • ―北海道岩見沢市の米農家のケーススタディ―
    上智大学 石井昌宏ゼミナール
    2018 年 80 巻 2 号 p. 197-218
    発行日: 2018/08/25
    公開日: 2020/05/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,気象変動の影響を受けやすい米農家の収入リスク低減に寄与する金融商品の開発である。米の生産量に影響を与えるとされている気象要素は,気温,降水量,日照時間とされており,それらを組み合わせて規定されるペイオフを持つ天候デリバティブの開発を行った。そのプライシングにおいては,既存の価格評価方法である確率分布適合法とBurning Cost法の2種類を用いた。さらに,開発したデリバティブを導入した場合の米農家の収入リスクの変化を標準偏差とValue at Riskの2指標で測った。その結果,気温と日照時間両方に依存するペイオフを持つ天候デリバティブを導入した場合,導入前や1つの気象変数のみに依存するペイオフを持つ天候デリバティブよりも,両指標において収入リスクを減少させることが示された。

<損害保険判例研究>
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