損害保険研究
Online ISSN : 2434-060X
Print ISSN : 0287-6337
80 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
<研究論文>
  • 佐々木 一郎
    2019 年 80 巻 4 号 p. 1-23
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2020/05/23
    ジャーナル フリー

    本研究は,損害保険のうち任意自動車保険に焦点を当て,販売・営業,コールセンター,事故時の初期対応,損害査定,示談交渉,保険金支払事務手続の6つの業務について,人(営業マン,事務員)から受けたいサービス,AI・ロボットから受けたいサービス,及び,AI・ロボットを選好する消費者の特徴を分析した。全国の20~59歳の男女2000サンプル(2018年3月収集)のデータを用いた分析の結果,AI・ロボットからサービスを受けたい割合が高い損害保険サービスは,保険金支払事務や損害査定であった。事故受付や示談交渉など,緊急対応や対面対応が必要な業務では,AI・ロボットからサービスを受けたい割合は低いことが示された。AI・ロボットを選好する消費者の特徴は,男性,20代,未婚者,任意自動車保険のネット・通販チャネル利用者であることが明らかになった。損害保険会社は,消費者のAI選好を把握し,営業マン・事務員とAIの役割分担の最適化を決定する必要がある。

  • 崔 桓碩
    2019 年 80 巻 4 号 p. 25-56
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2020/05/23
    ジャーナル フリー

    損害保険大手3グループは海外M&Aを積極的に行っている。海外M&Aのメリットは,事業ポートフォリオの分散,利益の増加等により持続可能な成長を達成できることである。しかし,被買収企業の業績が悪化したり,買収プレミアムを超えるシナジー効果が実現できなかったりする場合には,買収時に発生したのれんを損失計上しなければならないため,買収企業の財務リスクを高めるデメリットも存在する。

    本稿では,まず,損害保険大手3グループにおける海外M&Aの現状を把握し,ついで,これらグループが行った4件の海外M&Aに対し,市場がどのように評価したかをイベント・スタディ手法を用いて,AR(異常収益率)とCAR(累積異常収益率)の分析を行った。

  • ―貿易の潮流と課題を踏まえて―
    新谷 哲之介
    2019 年 80 巻 4 号 p. 57-91
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2020/05/23
    ジャーナル フリー

    貨物海上保険における被保険利益の所在やその概念の射程は,貿易実務のデジタル化の研究を進めるなかで課題として浮き彫りになることがあり,また,近時の国際的サプライチェーンに見られる貿易取引の傾向からも課題となることがある。

    わが国の外航貨物海上保険契約は,その準拠法として日本法と英国法の両者を分割指定しているが,英国法は判例法を基礎とすることから,被保険利益についてもその法律上の解釈には進展がある。本稿ではこうした被保険利益にかかわる最新の解釈について理論的な整理を行うとともに,これを最新の貿易事情に照らし,実務上の被保険利益の在処について検討を試みる。

<研究ノート>
  • ―損害保険会社に勤務する人を対象にして―
    浅井 義裕
    2019 年 80 巻 4 号 p. 93-116
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2020/05/23
    ジャーナル フリー

    損害保険会社を取り巻くリスクが多様化しているなか,適切なリスクとリターンのバランスを追求するERMの推進が課題となっており,先進的な取り組みが公表されるなど,ERMの枠組みは整えられている。一方で,ERMの導入によって,実際に適切なリスクとリターンをもたらすようになっているのかを直接検証することは難しい。そこで,本稿では,損害保険会社の社員を対象としたアンケート調査を実施し,「ERMの取り組みの社内での浸透」をもって,ERMの整備の効果を計測しようと試みている。本稿の調査の結果,明らかになったことは以下の通りである。第1に,職位が上がるほど,ERMは重要であると回答する人の割合が高くなっていることが確認できる。第2に,部門によって,ERMを重要であると考える人の割合が異なることが明らかになった。第3に,東京海上日動火災,三井住友海上火災保険,損保ジャパン日本興亜の3社で,ERMは重要であると考えている人の割合が高いことが確認できた。

<判例評釈>
<寄稿>
  • 石井 優, 久保 治郎, 髙野 浩司
    2019 年 80 巻 4 号 p. 145-217
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2020/05/23
    ジャーナル フリー

    海上保険実務と密接に関わる運送・海商の規律を120年ぶりに見直した改正商法が間もなく施行される。

    海上保険関連では,委付規定を削除した他,規律と実務の不整合を多くの箇所で解消している。保険法の告知に係る質問応答義務の規定を退け自発的申告義務を定めた意義は大きい。

    貨物保険の代位求償関連では,内航運送人の責任が軽減され,外航貨物の海上運送状下での荷受人の権利が規定された他,貨物損害賠償請求権に関しても,消滅時効を出訴期限とし,船舶先取特権は維持する等,実務面で意義ある改正がなされた。

    海難関連で,船舶衝突では1910年衝突条約の規定を選択的に採用した。海難救助では契約救助も明確に対象とし,船舶関係者が積荷等も含む救助契約を締結できると定めた他,不成功無報酬の原則を修正し環境損害防止費用の特別補償の規定を導入している。共同海損では成立要件や分担につき1994年YARとの整合が図られたが,対象となる損害・費用の範囲では,新たな規定の追加はなく現行条文の修正に止まった。

<損害保険判例研究>
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