損害保険研究
Online ISSN : 2434-060X
Print ISSN : 0287-6337
82 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
<研究論文>
  • ―2018年と2019年の調査結果を中心にして―
    家森 信善, 橋本 理博
    2020 年 82 巻 3 号 p. 1-34
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    一般消費者の金融リテラシーの向上は重要な政策課題となっているが,損害保険会社や損保代理店の社員の金融リテラシーに関する調査はほとんど行われていない。家森(2018a)は,2015年から2017年にかけて損害保険事業総合研究所の本科講座の受講生に対して実施したアンケート調査の結果に基づいて,損害保険会社等の社員の金融知識の水準などについての実態を明らかにした。本稿は,2018年と2019年の受講生約1,500人に対して実施したアンケート調査の結果をもとにして,損害保険会社等の社員の金融リテラシーなどの現状と最近の変化について分析した。その結果によると,損保社員の約4割が自己の金融知識の水準を「平均的」と考える一方,「詳しい」は2割,「劣る」が約4割であり,2015-17年と比較すると,自己評価には改善がみられた。また,学校で金融を学んだかを尋ねたところ,4割弱の人が学んだことがないと回答しており,他方で現在の業務で金融知識が必要だとの回答は約9割であったことから,社員向けの金融教育の必要性がうかがわれた。

  • ―ドイツにおける議論の変遷と現状―
    石上 敬子
    2020 年 82 巻 3 号 p. 35-60
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    本稿は,「約款規制の事業者間契約における意義」について,ドイツの約款規制規定(旧AGBG,BGB第305条以下)をめぐる法状況から日本法へ示唆を得るための序論的研究である。まず,ドイツの規定を日本の定型約款規定(特に民法新548条の2)と対比させつつ確認し,続いて,規制の展開に対する議論の変遷を概観して現状を明らかにした。全体としてみると,判例では長年にわたり,積極的かつ厳格な約款規制が展開されてきており,これに対する批判が実務からも学説からも高まり,とりわけ改正論が社会的にも注目を集めるようになっている。現行法に対する批判は,①「普通取引約款」(BGB第305条)の定義につき,「商議[Aushandeln]」,つまり具体的な交渉がなされた場合を除外するという要件を緩和して規制を免れうる範囲を広げること,②不当条項規制の判断基準(BGB第307条,第310条第1項)につき,事業者間契約の特質を考慮した,消費者契約とは異なる基準とすべきこと(とりわけ不当条項リストを基準として及ぼすべきでないこと),に向かっている。特に,判例の硬直性のゆえに,立法論であれ解釈論であれ,少なくとも現在の判例よりゆるやかな判断を可能にする枠組を示すことが急務とされる。本稿では具体的な改正提案もいくつか紹介した上で,続く検討課題を示したい。

<研究ノート>
  • ウドムスワンナクン プームパット
    2020 年 82 巻 3 号 p. 61-81
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    近年,取締役の違法行為の抑止効果がD&O保険によって減殺される問題やD&O保険の約款条項の解釈論などについて議論がなされている。本稿は今まであまり検討されてこなかった問題であるD&O保険の和解への影響に焦点を当てて検討する。本稿はアメリカにおけるD&O保険の和解への影響に関する理論的・実証的な研究を考察する。アメリカにおける議論を検討した結果,次の点を指摘できる。D&O保険が訴訟当事者の和解の選択,和解のタイミング,和解額に影響しうる。場合によっては,D&O保険が違法行為抑止効果減殺問題の観点から望ましくない和解をもたらすことがある。しかし,様々な制約により,保険会社は望ましくない和解に抵抗できない可能性がある。アメリカの学説では,この問題を解決するために,和解内容の開示及びEntity Coverageのコインシュランスをより高く設定することが提案されている。

<講演録>
<損害保険判例研究>
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