一般消費者の金融リテラシーの向上は重要な政策課題となっているが,損害保険会社や損保代理店の社員の金融リテラシーに関する調査はほとんど行われていない。家森(2018a)は,2015年から2017年にかけて損害保険事業総合研究所の本科講座の受講生に対して実施したアンケート調査の結果に基づいて,損害保険会社等の社員の金融知識の水準などについての実態を明らかにした。本稿は,2018年と2019年の受講生約1,500人に対して実施したアンケート調査の結果をもとにして,損害保険会社等の社員の金融リテラシーなどの現状と最近の変化について分析した。その結果によると,損保社員の約4割が自己の金融知識の水準を「平均的」と考える一方,「詳しい」は2割,「劣る」が約4割であり,2015-17年と比較すると,自己評価には改善がみられた。また,学校で金融を学んだかを尋ねたところ,4割弱の人が学んだことがないと回答しており,他方で現在の業務で金融知識が必要だとの回答は約9割であったことから,社員向けの金融教育の必要性がうかがわれた。
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