損害保険研究
Online ISSN : 2434-060X
Print ISSN : 0287-6337
83 巻, 2 号
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<研究論文>
  • 榊 素寛
    2021 年 83 巻 2 号 p. 1-45
    発行日: 2021/08/25
    公開日: 2023/03/13
    ジャーナル フリー

    サイバーリスクは,現代において深刻化しつつある問題である。サイバーリスクは,世界中で様々な問題を発生させているだけでなく,そのリスクも日々変化し増加しつつある。しかし,損保実務上サイバーリスクに対するカバーのあり方は不透明であることに加え,今後大きな問題となることが予想されるにもかかわらず,国内外を問わず,保険法学にける研究が十分には行われていない。本稿は,保険法学分野で共通認識が形成されていないと考えられるサイバーリスクに関する研究の全体像を描くことで,今後のサイバーリスク研究を発展させるための土台を構築することを目標とする。そのための手法として,主として米国の研究を参照し,サイバーリスクの特徴を分析したうえで,保険法学分野でのサイバーリスク研究の現状を示し,今後予想される重要論点の分析を行う。

<研究ノート>
  • 山越 誠司
    2021 年 83 巻 2 号 p. 47-71
    発行日: 2021/08/25
    公開日: 2023/03/13
    ジャーナル フリー

    投資ファンドの専門業務賠償責任保険はアメリカで開発され,わが国でも徐々に普及しているが,保険の構造や機能,役割について十分理解されているとは言い難い。そこで,プライベート・エクイティ事業とアセット・マネジメント事業の構造や業務フローに沿って保険を分析評価することで,保険の輪郭を明らかにする。投資ファンド事業の性質上,投資家と事業者の間の利益相反性は避けられないものがあるが,投資ファンドの保険は,そのようなリスクを踏まえた約款構成になっており,補償や免責の内容も過去の様々な保険事故を経験しながら進化してきている。そして,今後の投資ファンド事業の発展や信認義務概念の拡大によるリスクの多様化を考えると,今まで以上に本保険の活用余地がある。このように,投資ファンド事業の実務を踏まえた投資ファンド向けの保険の意義について分析すると,本保険の発展が期待されることになる。

  • ― 17・18世紀イングランドにおける近代保険生成の一齣 ―
    永井 治郎
    2021 年 83 巻 2 号 p. 73-95
    発行日: 2021/08/25
    公開日: 2023/03/13
    ジャーナル フリー

    時価主義・比例てん補方式をとる損害保険契約において,保険金支払額は,‘損害額×保険金額/保険価額’の算式で計算される。本稿の目的は,この保険金額と保険価額の合一過程を,黎明期のイギリス保険各社に焦点を合わせつつ,追究することにある。The Fire Officeに代表される初期家屋保険各社(17世紀後半)にあっては,両者の合一は,おおむね緩やかな関係であった。ただ,初期家屋保険が抵当制度と深く結合していたため,これを保護する上で必要な限り,両者の関係に注意が払われた。一方,Sun Fire Officeに代表される初期動産保険各社(18世紀前半)にあっては,両者は,かなり密接な関係となる。それは初期動産保険が手形制度と深く結合したため,商品が滅失した場合,商品価額全額を回収する必要があったからである。比例てん補方式は,初期動産保険における両者合一の上に出現するとともに,保険の基本構造上の変化を示すものであった。

<寄稿(RIS2020優秀論文)>
  • 川合 岳, 木戸 拓海, 久木田 美穂
    2021 年 83 巻 2 号 p. 99-118
    発行日: 2021/08/25
    公開日: 2023/03/13
    ジャーナル フリー

    地震保険は複数の特性を有している。それに起因して価格以外の要因がその需要に影響していると考えられ,地震保険需要に影響を与えるそれらの諸要因を明確にすることが本研究の目的である。そこで,保険料率,世帯人数,持ち家率,教育(進学率),リスク認知(地震発生確率と地震発生意識)によって地震保険需要の変動を説明する諸仮説を設定した。そして,これらの仮説に基づいた重回帰分析において,教育(進学率)とリスク認知(地震発生意識)が地震保険需要に影響を与えていることが認められた。さらにこの結果を基にして,教育(進学率)とリスク認知(地震発生意識)の関係を説明する仮説を設定した。この仮説に基づいた単回帰分析を行い,教育(進学率)はリスク認知(地震発生意識)に正の影響を与えるという結果を得た。

<損害保険判例研究>
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