メタミクト鉱物の研究は種々の立場から研究せられ,それら個々の結果に対する解釈が,メタミクト鉱物の誘電特性を研究することによつて,ある程度たがいに関連性があることが明かとなつた。すなわちメタミクト鉱物の加熱に伴う結晶化作用の過程における状態変化は,サマルスキー石型鉱物のごとく一次的に起る場合と,ユークセン石型およびフェルグソン石型の如く二次的に行われる場合,さらにカツレン石型の如くその状態変化がやや不規則に生する四種類に分類して考えることができる。 従来示差熱分析によつて明かにされた300~400℃の発熱ピークと700℃前後における発熱現象は誘電的性質によつても認められると共に,一方示差熱分析では示されなかつたフェルグソン石の低温における状態変化が誘電特性,特にその誘電損失の変化より明瞭に指示せられた。 それらの状態変化の結晶構造的な意味を解釈するために,その二,三の鉱物を常温から200℃,400℃,600℃,800℃に加熱した試料について,ガイガー管X線廻折計数装置によつて図上に現れた廻折図形を吟味した。すなわちユークセン石は400℃で結晶作用が開始され700℃前後において再び結晶構造上に変化を生することを確めることができた。フェルグソン石は水晶山産のものがメタミクト化されていないので,それを他の産地の加熱した試料と比較し,ユークセン石と同様に300℃前後の低温度から結晶化作用が起り700℃附近でやや構造変化が生することを確めた。サマルスキー石については各温度に加熱したノレルコの資料がないために充分な吟味をすることができなかつたが,誘電的性質あるいは示差熱分析の結果から本鉱物の結晶化作用は500~600℃以上の比較的高温度に加熱しなければ起らないのではないかと思われる。 まだX線的な資料が乏しいので結晶化作用の過程を構造的に解明することは困難であるが,一般に結晶化はかなり低い温度から行われ,しかも比較的急速度に進行するという事実と,高温度において二次的な構造上の変化とが認められた。
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