最近,血清尿酸値測定の機会の増加に伴い,無症候性高尿酸血症の臨床上の取り扱いが問題となってきた.すなわち,将来,痛風性関節炎を高率に発症するのか,尿路結石・腎障害などの合併症を併発しやすいか否かである.そこでこれら諸問題の解決の一助とするため,われわれは某社社員4,150名の血清尿酸を測定した. その結果血清尿酸8.0mg/100ml以上の無症候性高尿酸血症は164例であった.それらに対し60.9±36.9カ月にわたり肥満度・痛風関節炎・タンパク尿・尿路結石などについて検討した.対象の平均年齢は49.0±4.7歳であり,血清尿酸は8.5±0.6mg/100mlであった.肥満度は母集団の105.9±12.3%に比し111.6±11.5%と有意に高値を示した(P<0.05).痛風関節炎発症は5例(3.0%)であり,年間罹患率は0.6%であった.タンパク尿の既往歴のある症例は6 例(3.7%)であり,観察期間中にはじめてタンパク尿を認めた症例は3例,計9例(5.5%)であった.既往歴で尿路結石を認めた症例は8例(4.9%)であり,観察期間中に尿路結石を認めた症例は8例(4.9%),既往歴および観察期間中とも認めた症例は1例(0.6%)であり,計15例(9.1%)であった.以上の成績のごとく無症候性高尿酸血症では痛風関節炎・タンパク尿・尿路結石などの発症率が健常人に比較して高いことが示唆され,その対策が心要と考えられた.
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