痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
44 巻, 1 号
痛風と尿酸・核酸
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
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総説 1
総説 2
  • 瀨山 一正, 下岡 里英, 野村 希代子, 髙川(神原) 彩
    2020 年 44 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル フリー

    進化医学的考察から,現代人の遺伝子に組み込まれている遺伝情報は,ヒトの進化の過程での食も含めた生活習慣情報を基に構成されていると考えられている.これに対して産業革命以降の現代人の生活習慣は大きく変わった.食材構成の変化は,多岐にわたるが,主な変化は,植物性食材(野菜・果物)を減らして,その代わりに糖質と脂質(特に中性脂肪)を増やしている事である.そのため,現代食の代謝後に生じる体内での生理学的生化学的変化が,遺伝子に組み込まれている旧石器時代までの食の代謝後に生じる変化情報と乖離する.その結果,尿酸代謝に関しては以下のような影響が出る.現代食摂取後には,1)植物性食品の摂取を減らしたため,体内でのアルカリ成分の生成が減り,尿が酸性化する.2)エネルギーと栄養の供給過剰を起こし,小胞体ストレス反応を惹起する.

    尿酸代謝に関係した小胞体ストレス反応は,インスリン抵抗性を生じることである.その為持続的な高インスリン血症となり尿酸の尿への排泄を減少させる.また,過剰なフルクトース代謝によりATP過剰消費により尿酸の新規生成増を齎すと共に脂肪酸の新規生成を増やし肥満による炎症反応の強化が起こると考えられている.この提案では,1)植物性食品の摂取を増やして尿のアルカリ化を計る.目標とする尿pHの値は,6.45とする.2)尿酸生成を増やし,小胞体ストレス反応を促進する食品群(主に糖質と脂質)の摂取量を抑制して尿酸排泄を促進することで,前回提案した食の介入効果が一層有効になると考えられるので新たな食介入策を提案する.

原著 1
  • 桑原 政成, 丹羽 公一郎, 浜田 紀宏, 荻野 和秀, 太田原 顕, 水田 栄之助, 宮崎 聡, 東 幸仁, 久留 一郎
    2020 年 44 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル フリー

    高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは,高尿酸血症の治療の際に,尿酸排泄低下型か尿酸産生過剰型かの病型分類を行い,病型に合った尿酸降下薬を使用することが推奨されている.しかし,副作用の少ない新薬の登場により,腎機能が悪くてもキサンチンオキシダーゼ阻害薬が使用可能となった.キサンチンオキシダーゼ阻害薬は,尿酸産生を低下させることで血清尿酸値の低下が期待される薬であるが,尿酸排泄に及ぼす影響については不明な点が多い.本研究は,高尿酸血症をもつ患者を対象とし,キサンチンオキシダーゼ阻害薬であるフェブキソスタットの内服によって,尿酸排泄がどのように変化するのか,また簡易法での病型分類が変化するのかを検討した.20歳以上で,血清尿酸値8.0 mg/dl以上かつ,内服薬の変更を3か月前から行っていない患者を対象とし,フェブキソスタット内服開始前と,内服12週間後で,尿酸排泄に違いが生じるかを検討した.フェブキソスタットは10mgで内服開始し,2週間後に20mgに増量し,以後20mgで内服継続とした.尿酸排泄は,スポット尿の尿中尿酸(UA)/尿中クレアチニン(Cre)で評価し,尿中尿酸排泄率はFEUA(尿酸クリアランス/クレアチニンクレアランス比):((尿UA/尿Cre)/(血清UA/血清Cre))で検討を行った.16人の男性(54.4±15.1歳)を研究対象とした.フェブキソスタット内服によって,全体のFEUAは4.27±1.06%から3.71±1.40%に低下を認めた.FEUAは16人中12人で低下し,新たに5人がFEUA<4%の高度尿酸排泄低下型となった.フェブキソスタット内服により,尿中尿酸/尿中クレアチニンは16人中に15人が低下を認め(-0.17±0.11),新たに6人が尿酸排泄低下型となった.本研究の結果から,フェブキソスタットの内服により,高尿酸血症の簡易法による病型の観点から尿酸排泄低下型が増加することが示され,キサンチンオキシダーゼ阻害薬で尿酸産生を抑えたことが,尿中尿酸排泄率,尿中尿酸排泄量の低下につながった可能性が考えられた.高尿酸血症には,尿酸排泄低下が密接に関わっており,フェブキソスタットに尿酸排泄促進薬の併用が有効な可能性を示唆する.

原著 2
  • 此下 忠志, 古谷 真知, 佐藤 さつき, 銭丸 康夫, 藤井 美紀, 牧野 耕和, 小野江 為人
    2020 年 44 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル フリー

    高尿酸血症は動脈硬化性疾患としての心腎血管病発症の危険因子と考えられており,血清尿酸値を規定する各種の遺伝子が順次明らかにされている.一方ウロモジュリン(UMOD)遺伝子は家族性若年性高尿酸血症性腎症の原因となることが知られ,さらに近年のGWASの成績などから高血圧や慢性腎臓病の発症・進展に関わることが示されている.しかしながら当該遺伝子の尿酸代謝や血圧値に対する影響については詳細な解析がなされていない.そこでUMOD遺伝子の多型により,尿酸代謝や血圧値に差異が生じるという作業仮説を検証した.5%の有意水準で80%の検出力を得るために約900例が必要と算出された.そこで,対象は各種生活習慣病のため当院を受診した連続924症例とした.末梢白血球よりDNAを抽出し,リアルタイムPCRシステムを用いUMOD遺伝子多型,rs4293393について解析し,血清尿酸値(sUA),尿中尿酸排泄量(uUA/uCr),尿中尿酸排泄分画(FEUA),血圧値,腎機能検査成績等との相関について解析した.遺伝子多型の解析結果は,CC(2例),CT(72例),TT(850例)であった.そこで主としてCC/CT群(74例)とTT群(850例)とによる分散分析とした.血清尿酸値(mg/dl)は以下のとおり: CC/CT群 4.74±1.45, TT群 5.23±1.53(p=0.009).このようにTアレルホモ接合体で血清尿酸値が有意に高値であることが判明した.一方,各種尿酸代謝関連指数の成績は以下のとおり: uUA/uCr; CC/CT群 0.55±0.15, TT群 0.56±0.20(p=0.59),FEUA; CC/CT群 10.2±8.8, TT群 8.2±3.6(p=0.0028). 血圧値の成績は以下のとおり: SBP; CC/CT群 138±21, TT群 146±24(p=0.012),DBP; CC/CT群 82±15, TT群 86±15(p=0.014).UMODのrs4293393多型により尿酸排泄率が規定され血清値に反映されることが明らかとなり,その尿酸値の高い遺伝的体質の群で血圧が高値となることが明らかとなった.以上のとおりメンデルランダム化法の概念に則れば,尿酸代謝の変化が血圧値に関係することが示され,ひいては腎障害に関与する可能性が示唆された.

原著 3
  • 箱田 雅之, 笠置 文善
    2020 年 44 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル フリー

    国民生活基礎調査によれば,1986年以降の30年間において我が国の痛風患者数は約4倍,男性に限れば約5倍の増加を見ている.国民生活基礎調査は住民の自己回答に基づいていることから,他の指標として医師の診断に基づく診療報酬明細書(レセプト)データベースとの比較を行った.2013年と2016年の国民生活基礎調査で示された通院者率は,レセプトデータベース(2010年~2014年)による痛風有病率と同等の結果であった.したがって,国民生活基礎調査の結果は痛風患者の動向をほぼ正確に反映していると考えられた.痛風が急激に増加した要因であるが,痛風の有病率が国民生活基礎調査においてもレセプトデータベースによる解析結果においても60歳代から70歳代においてピークを示したことから,近年の高齢者数の増加がその背景にあると考えられた.さらに,高齢者の中においても,男性では痛風有病率は経年的に上昇傾向であり,痛風患者数の増加に寄与したと考えられた.今後も高齢者数は増加し続け,2042年にピークを迎えると推定されていることから,痛風患者数の更なる増加が予想された.

原著 4
  • Kosuke Honda, Akimitsu Kobayashi, Naoki Sugano, Hiroyasu Yamamoto, Tak ...
    2020 年 44 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル フリー

    Aim: The number of patients with hyperuricemia has steadily risen every year. However, it remains unclear whether the prevalence of urinary stones with uric acid (UA) origin is on the same trend. Therefore, we carried out a survey on UA stones in outpatients with urolithiasis.

    Methods: A retrospective survey was performed in a single municipal hospital. We enrolled a total of 312 patients diagnosed with urolithiasis during the 8 years observation period. All urinary stones underwent chemical component analysis and were divided into two groups: stones of UA component (UA group), and stones of non-UA component (non-UA group).

    Results: Component analysis revealed the following; calcium oxalate stones 45.5% (n = 142), calcium phosphate stones 1.9% (n = 6), mixed stones without UA component 46.2% (n = 144), magnesium ammonium phosphate stones 1.6% (n = 5), ammonium urate stones 0.32% (n = 1), pure UA stones 2.6% (n = 8) and mixed UA stones 1.9% (n = 6). Stones with UA origin account for 4.5% (n = 14). Urinary pH was lower in the UA vs. the non-UA group (5.6 ± 0.6 vs. 6.5 ± 0.7, p < 0.01). Furthermore, HbA1c and age were higher in the UA vs. the non-UA group.A male patient in the UA group showed substantially low serum UA level (2.5 mg/dL) with multiple bladder stones, casting a suspicion of hereditary renal hypouricemia.

    Conclusion: Calcium oxalate and mixed stones constitute approximately 90%. The prevalence of UA stones was 4.5%. The rate appears to remain unchanged over a past decade in Japan.

原著 5
  • 緒方 美樹, 野田 真佐美, 清田 由美, 川上 千香子, 嶋田 英敬
    2020 年 44 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル フリー

    痛風関節炎の尿酸降下療法に伴う結晶沈着の経時的変化に関する報告はあるが,滑膜肥厚に関しては明らかにされていない.そこで治療経過に伴う滑膜肥厚の変化を,尿酸降下薬の投薬量が安定した患者11例に対し関節エコー検査を実施し,治療前と治療後で比較した.結果,滑膜肥厚の改善と結晶沈着の減少が見られたのは8例で,改善がない症例と比較すると,罹病期間が短く,治療期間や最終痛風発作からの期間が長い傾向にあった.痛風発作により肥厚した滑膜は他の慢性関節炎同様,治療によって改善することが示された.

原著 6
  • 喜瀬 高庸, 横川 直人, 島田 浩太, 益田 郁子
    2020 年 44 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル フリー

    結晶性関節炎の診断では偏光顕微鏡による結晶の同定がゴールドスタンダードであるが本邦での実施状況は不明である.そこで2018年度に日本リウマチ学会に認定された173教育施設を対象に,関節液の鏡検の実施状況に関して実態調査を行った.

    106施設(61.3%)から回答を得た.診療科は整形外科 92施設(87%),リウマチ内科 57施設(54%),内科・総合内科 13施設(12%),リウマチ外科 11施設(10%)であった.関節液の結晶同定を実施することができないと回答した施設は8施設(8%)であった.鏡検を診断に用いていた施設での実施方法は,検査科 68施設(64%),外注 35施設(33%),医師 8施設(8%)であった.院内に偏光顕微鏡があると回答した施設に電話で詳細を確認した結果,そのすべての施設で,痛風検査用アナライザ(レバー操作で90度回転できる鋭敏色板を組み込んだアナライザ)を使用していた.

    本調査により本邦では偏光顕微鏡が使用されていないことが明らかとなった.本邦の結晶鏡検手順には最適化の余地が残されている可能性がある.

原著 7
  • 栗山 哲, 中野 知子, 田邉 智子, 槙田 真由美, 宮川 佳也, 込田 英夫, 平尾 磨樹, 長田 眞, 三穂 乙哉
    2020 年 44 巻 1 号 p. 61-74
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル フリー

    背景:Sodium-Glucose Cotransporter 2(SGLT2)阻害薬の心・腎保護のエビデンスが明らかにされてきた.その作用機序は多面的であるが,尿酸(UA)値低下作用もその一因と考えられる.本研究では,2型糖尿病患者においてSGLT2阻害薬投与による血清UA値の長期変動を検討した.

    対象と方法:SGLT2阻害薬の治療効果を長期観察し得た2型糖尿病患者90例を対象にし,後ろ向き観察調査を行った.

    結果:SGLT2阻害薬投与後,HbA1c,食後血糖値,1,5-AG,血圧,体重,BMI,TGなど糖尿病関連マーカーの改善と同時に血清UA値低下作用が確認された.この効果は,4週目から認められ48週間以上にわたり持続した.また,血清UA値低下は糖排泄増加と関連し,Fractional Excretion of UA(FEUA)の増加を伴った.さらに,尿中アルブミン排泄量(ACR)は低下,微量あるいは顕性アルブミン尿群に改善効果が確認され,一部にACRの正常化例の出現も認めた.SGLT2阻害薬6剤間の比較では,血清UA値低下作用を含めた各測定項目の変化に群間差異は認められず,これらの効果は一律の「Class Effect」と思われた.本剤の痛風発症抑制効果に関しては不明であった.

    結論:SGLT2阻害薬による血清UA値低下作用は,尿糖排泄増加とFEUA増加を伴う.高尿酸血症を合併する2型糖尿病患者にこの作用が有益か否かは今後の研究による.

原著 8
  • 末藤 美星, 嶋田 英敬, 古川 昇
    2020 年 44 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2020/07/25
    ジャーナル フリー

    68歳女性.10年来の糖尿病でシタグリプチン(50mg),グリメピリド(1mg)内服中,高尿酸血症はなかった.カナグリフロジン(100mg)追加投与開始約7か月後より血清尿酸値が上昇しはじめ,高尿酸血症が持続し10か月後には尿中ケトン体も検出されるようになった.この間,毎日水分摂取し,尿量も十分確保されていた.これらはカナグリフロジンの中止で改善したもののトホグリフロジンの投与でも再度見られた.これに対し,カナグリフロジンを隔日投与にすることで血糖降下作用とともに尿酸,尿ケトン体の正常化を認めた.本症例では,原因は明らかではないが,GLUT2アイソフォーム2やURAT1などの移送体に何らかの作用異常があり,尿酸の再吸収が阻害された可能性が考えられた.今後,SGLT2阻害薬を使用する際,尿酸値の低下だけでなく,稀ではあるが,尿酸値の上昇する症例があることも考慮すべきである.

第53回日本痛風・尿酸核酸学会総会記録
一般演題
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