痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
48 巻, 1 号
痛風と尿酸・核酸
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
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総説
原著 1
  • 中山 昌喜, 松尾 洋孝, 太田原 顕, 荻野 和秀, 箱田 雅之, 浜田 紀宏, 細山田 真, 山口 聡, 久留 一郎, 市田 公美, 四 ...
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 48 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/07/25
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    電子付録

    2017年に刊行された世界初の『腎性低尿酸血症診療ガイドライン(第1版)』(「GL」)について,主な利用者である医師を対象に,その普及・活用状況について事後評価を行った.その結果,日本痛風・尿酸核酸学会員,日本小児腎臓病学会員,その他の3群の合計193名から均等に回答を得た.普及状況と,実装状況の一部については有意な3群差が認められ,日本痛風・尿酸核酸学会員と日本小児腎臓病学会員以外の医師に対するGLの理解や普及が課題と考えられた.また3群間に有意差はないものの,教育や連携への使用については肯定的な回答が4割程度と他より低い傾向にあった.より多くの患者及び主治医に当GLが活用されるためには,ディシジョンエイドのほか,定量的評価の設定を含めた普及・活用の指針の策定が有用と考えられた.

原著 2
  • 大山 博司, 諸見里 仁, 大山 恵子, 藤森 新
    2024 年 48 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/07/25
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    腎機能低下例に対する尿酸降下薬長期投与の有効性についてはアロプリノールとフェブキソスタットでは報告されているが,トピロキソスタットについてはほとんど行われていない.トピロキソスタットの長期投与が可能となった2014年9月から2023年9月までの9年間で,トピロキソスタット開始前の推算糸球体濾過量(eGFR)が60 mL/min/1.73m2未満で,かつ5年以上トピロキソスタットが投与されている痛風・高尿酸血症症例53例を選び出して,トピロキソスタットによる腎機能への影響を検討した.トピロキソスタット投与期間が6年目以降では症例数は漸減し,最長の8年間は13例であった.トピロキソスタットは1日40 mg(20 mg×2)で開始され,1日平均投与量は96.4 mg~105.3 mgであった.血清尿酸値は8.9±1.6 mg/dLから1年後には5.6±0.8 mg/dLに有意に低下し,その後も各年度とも平均5 mg/dL台で推移しており,6.0 mg/dL以下の症例が73.6 %〜95.5 %とコントロールは良好であった.eGFRは治療開始時の53.2±5.0 mL/min/1.73m2から1年後には56.0±6.2 mL/min/1.73m2,2年後も56.2±6.5 mL/min/1.73m2に増加し,3年目以降は漸減したが5年後までは治療開始時の数値よりも高値で推移していた.すべての年度で血清尿酸値が6.0 mg/dL以下を達成できていた症例は18例と少なかったが,そのような症例では血清尿酸値は2年以降平均4.0 mg/dL台で維持され,eGFRは53.8±3.9 mL/min/1.73m2,から1年後56.6±4.4 mL/min/1.73m2,2年後は57.8±5.0 mL/min/1.73m2まで改善し,3年後を除き5年後まで有意な増加が維持され,7年後までトピロキソスタット開始時よりも高値で推移していた.トピロキソスタットは中等度の腎機能低下を長期にわたって改善する作用を有する可能性があると考えられた.

原著 3
  • 藤森 新, 大山 博司, 諸見里 仁, 大山 恵子
    2024 年 48 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/07/25
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    高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは60分法クリアランス検査によって病型分類を行うことが推奨されているが,現行の判定法では尿酸の排泄能力が低下していなくても尿酸排泄低下型と判定されてしまう場合が存在する.痛風患者を対象に実施した2,272例のクリアランス検査結果を検討したところ,尿酸の排泄能力が低下していないのに尿酸排泄低下型に判定されるケースが22例存在した.このようなケースを尿酸排泄低下型と判定すべきでなく,尿酸排泄低下型の判定は,尿中尿酸排泄量0.51 mg/kg/時以下,および,尿酸クリアランス7.3 mL/分/1.73 m2未満で行うべきと考えられた.22例を正常型として病型分類を行うと,尿酸排泄低下型1,684例(74.1 %),腎負荷型309例(13.6 %),混合型224例(9.9 %),正常型55例(2.4 %)となり,約40年前に検討されたガイドラインに記載されている病型分類と比較すると,尿酸排泄低下型が14.1 %高率で,混合型が15.1 %低率となった.厚生労働省の調査によると1975年に比べて2019年には日本人男性の体重が約10 kg増加している.体重増加によって尿酸産生量の指標である単位重量あたりの尿中尿酸排泄量が低く算出されて尿酸産生要因が減少した結果,尿酸排泄低下型の頻度が増加したものと推察された.今後,現在の日本人の体格を考慮した病型分類基準の改定を行う必要があると思われた.

原著 4
  • 今田 恒夫, 鈴木 奈都子, 大瀧 陽一郎
    2024 年 48 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/07/25
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    目的:痛風・高尿酸血症治療の地域差についてはこれまで十分に検討されていない.本研究では,厚生労働省公表のレセプト情報によるNational Data Base(NDB)データを基に算出された,性・年齢調整標準化レセプト出現比Standardized claim-data ratio(SCR)スコアを用いて,痛風治療薬の都道府県別使用状況を検討した.
    方法:2020年のNDBから算出されたSCRスコア(東北大学 公共健康医学講座 医療管理学分野作成)を指標として,痛風治療薬全体と各薬剤の都道府県別使用状況を比較した.
    結果:痛風治療薬全体のSCRスコアは高い順から,高知(SCRスコア126.9),大分(115.4),佐賀(114.5),低い順から富山(82.4),埼玉(86.8),千葉(87.3)と地域差がみられた.痛風治療薬全体のSCRスコアと有意な相関を示した薬剤は,相関係数の高い順から,フェブキソスタット(相関係数r=0.91),アロプリノール(r=0.60),コルヒチン(r=0.57),クエン酸カリウム/クエン酸ナトリウム水和物(r=0.31)であった.コルヒチンのSCRスコアは高い順から,高知(SCRスコア 175.8),鹿児島(150.9),宮崎(142.0),低い順から秋田(60.0),滋賀(66.9),鳥取(67.3)であった.無症候性高尿酸血症に対する治療の度合いをある程度反映すると考えられる痛風治療薬全体/コルヒチン使用スコアの比率は高い順から,秋田(1.69),鳥取(1.55),静岡(1.47),低い順から沖縄(0.70),鹿児島(0.72),高知(0.72)であった.各薬剤間のSCRスコアが有意な相関を示した薬剤の組み合わせは,コルヒチンとフェブキソスタット・アロプリノール,フェブキソスタットとドチヌラド,クエン酸カリウム/クエン酸ナトリウム水和物とベンズブロマロンであった.
    考察:痛風治療薬使用のSCRスコアは地域によって異なり,西日本で高い傾向にあった.また,痛風治療薬全体/コルヒチン使用のSCRスコアの比率は地域差が大きかったことから,無症候性高尿酸血症に対する治療状況も地域によって大きく異なる可能性が示唆された.また,各薬剤のSCRスコアでは特定の薬剤間で有意な相関を示したことから,よく用いられる薬剤の組み合わせパターンの存在が示唆された.
    結論:痛風治療薬の使用は都道府県によって差があることから,地域の状況に応じて,痛風・高尿酸血症治療の均霑化を進める必要があると考えられた.

原著 5
  • 前田 真歩, 草野 悠, 福内 友子, 髙栁 ふくえ, 山岡 法子, 諸見里 仁, 大山 恵子, 大山 博司, 金子 希代子, 藤森 新
    2024 年 48 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/07/25
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    大豆は高プリン体野菜と考えられ,その加工品である納豆の過剰摂取は痛風発作の危険がある.市販の納豆に含まれるプリン体をHPLCによる2つの方法(塩基別総プリン体分析法と分子種別プリン体一斉分析法)で測定した.納豆に含まれるプリン体総量は56.6mg/100gで,従来報告されている含有量の約50%と少なく,原料の乾燥大豆と比較して高分子核酸の含有比率が低く,腸管で吸収されやすいヌクレオシドとプリン塩基が多いことが明らかとなった.選択的尿酸再吸収阻害薬のドチヌラドで血清尿酸値6mg/dL以下を達成できている痛風・高尿酸血症患者63例に対して,管理栄養士によってプリン体と納豆を食する習慣についての聞き取り調査を行い,納豆を摂取する食習慣で4群に分類して血清尿酸値と尿中尿酸排泄量を比較した.納豆を週に5日以上食する習慣の患者(11例)と納豆を食さない患者(26例)とでは,それぞれ血清尿酸値は5.5±0.3mg/dLと5.5±0.4mg/dL,尿中尿酸排泄量は681.1±289.4mg/gCrと528.8±204.5mg/gCrで有意差はみられなかった.また,1日のプリン体摂取量に占める納豆由来のプリン体の割合は納豆を週に5日以上食する習慣の患者において6.9±2.8%とごく少量に過ぎなかった.納豆は健康価値の高い食品であり,1日1パック(40g)までの納豆摂取の食習慣は尿酸値への影響は少なく,痛風・高尿酸血症の患者においても勧めて良い食品と考えられた.

第57回日本痛風・尿酸核酸学会総会記録
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