高尿酸血症と慢性腎臓病(CKD)との間には強い関係が存在することが知られており,尿酸生成抑制薬を用いた介入試験では腎機能障害の進行を抑制する結果もいくつか報告されている.選択的尿酸排泄促進薬(SURI)であるドチヌラドはCKD患者においても良好な尿酸降下作用を示すことが報告されているが,腎機能に与える影響についての報告は非常に少ない.そこで今回われわれはCKD患者を含む尿酸排泄低下型高尿酸血症患者に対するドチヌラドの有効性と腎機能への影響を検討した.
尿酸降下薬未使用の高尿酸血症患者120例に対して随時尿中尿酸/クレアチニン濃度(U-UA/Cre)を用いた病型分類を施行し,尿酸排泄低下型を示した患者40例(平均年齢:62.3±13.4歳,男性:36例)を解析対象とした.ドチヌラド0.5mg/日から開始し血清尿酸値≤6.0mg/dLを目標に適時調整を行い,治療開始時と治療開始24週後における血清尿酸値,U-UA/Cre,推算糸球体濾過量(eGFR)を評価した.また対象患者のうちeGFR<60mL/min/1.73m2のCKD合併患者においても同様の検討を行った.
24週後のドチヌラド一日平均投与量は1.15±0.57mgで,ドチヌラド投与24週後の血清尿酸値は8.28±0.70mg/dLから5.50±0.85mg/dLと有意な低下(p<0.01)を,U-UA/Creは0.36±0.09から0.44±0.18と有意な上昇(p<0.01)を,eGFRは62.3±15.4mL/min/1.73m2から65.8±15.7mL/min/1.73m2と有意な増加(p<0.01)を認めた.24週後の血清尿酸値≤6.0mg/dL達成率はドチヌラド0.5mg群で50%,1mg群で78.9%,2mg群で90.9%であった.対象患者中CKD患者は19例(47.5%)で,CKD患者においてもドチヌラド投与により血清尿酸値は8.42±0.71mg/dLから5.86±1.02mg/dLと有意な低下(p<0.01)を,U-UA/Creは0.37±0.09から0.53±0.20と有意な上昇(p<0.01)を,eGFRは47.4±10.4 mL/min/1.73m2から53.2±13.3mL/min/1.73m2と有意な増加(p<0.01)を認めた.CKD患者におけるドチヌラド投与後のeGFRの変化量は血清尿酸値の低下量(p<0.05)および投与開始時のeGFR(p=0.02)と有意な正の相関を認めていた.
CKD患者を含む尿酸排泄低下型高尿酸血症患者においてドチヌラドは血清尿酸値の有意な低下とeGFRの有意な増加をもたらした.またCKD患者においてCKDステージ早期より十分な尿酸降下治療を行うことが腎保護に有効であることが示唆された.高い尿酸降下作用と腎保護作用を有するSURIドチヌラドは尿酸排泄低下型の多いわが国の高尿酸血症診療において,そして高尿酸血症合併CKD診療において重要な治療選択となる薬剤であると考えられた.
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