特別に調整された製造条件下で, ほぼ同一のHAF級の粒径および表面構造を有し, ストラクチャーの発達度のみが異る一連の6種のカーボンブラックを試作したが, 試作にあたり物理的結合を主とした二次的ストラクチャーによるゴム試験への影響を, できるだけ消去するため同一後処理工程で製品化を行ない, 化学的結合を主とした一次的ストラクチャーとゴム適性の関係を比較究明できるよう配慮した.
本報はこれらのカーボンブラックを使用し, 第1報として天然ゴムにつき試験したもので, 次の事項を確認することができた.
ストラクチャーの増加に伴ないそれぞれゴム特性の変化は
モジュラス……増加 抗張力, 伸び…低下
粘度, 硬度……増加 反撥弾性……低下
スコーチタイム…短縮 収縮率……減少
押出表面平滑性…向上
の傾向を示した.
また比較的高ストラクチャーのカーボンブラックは, オープンローラーあるいはバンバリーミキサーなどでゴムと混練りする場合, 同一外力に対し低ストラクチャーのものより多くのストラクチャーの破壊をうける. 一方比較的低ストラクチャーのカーボンブラックは破壊が殆んど行なわれず逆に圧縮されて, ゴム質へ分散されにくい状態となり, その結果有効表面積が減少することとなる. これらの現象はストラクチャーの水準とゴム特性の直線的な関係を妨げる.
さらにストラクチャーの増加に伴う耐摩耗および動的ゴム特性は同一ストラクチャー水準における粒径が, やや小さいカーボンブラックの特性に傾向が類似しており, カーボンブラックの品質改善上の重要な示唆となった.
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