第1報では, 主にナイロン6タイヤコードの湿熱, 乾熱処理による劣化について物性変化を追跡比較した.本報ではナイロン6の湿, 乾熱処理による官能基, 結晶性などの変化を調べるために, 耐熱剤を用いてないナイロン6フィルムに湿・乾熱処理を施したものの, 赤外線吸収スペクトルを比較検討した.その結果, (1) 乾熱処理フィルムでは, 空気酸化により生成されたと思われるG=O吸収の1753, 1735cm
-1の吸収が認められたが, 湿熱ではこれらの吸収は生じなかった. (2) 湿熱, 乾熱共に〓偏光でより強い吸収を示す1660cm
-1吸収が認められた.この吸収は主鎖切断により生じたG=Gであると推定した. (3) Sandemanによりmtermediate structureの吸収とされている990cm
-1 (われわれは970cm
-1と測定した) 吸収は乾熱処理では200℃でも残存したが, 湿熱処理では148℃, 158℃で完全に消滅した. (4) 955,928cm
-1の結晶性バンドは湿, 乾熱により強度を増し, 比重の増加と同一傾向を示した.
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