亜鉛とゴムの直接接着におけるナフテン酸コバルトの加硫反応中の作用を調べるために, モデル実験としてスクアレンとナフテン酸コバルトの反応を行った. 反応生成物はカラムクロマトグラフィーにより分離され, 赤外吸収スペクトル, NMRスペクトルで分析された. スクアレンの加硫によりNMRスペクトルに現われる1.35ppmの小ピークは, 硫黄の付加した-CH=CHプロトンの化学シフトと考えられる. スクアレンとナフテン酸コバルトの混合物は窒素ふん囲気では反応せず, 空気中では150°Cにてナフテン酸コバルトは分解し, スクアレンの酸化が促進され, スクアレンのナフテン酸付加体が形成された. ナフテン酸コバルトと硫黄を加えて窒素ふん囲気で加熱したスクアレンのNMRスペクトルには, 1.25ppm(-CH
2-C_??_)の新しいピークが現われた. ステアリン酸コバルトを加えた場合も同じピークが現われ, 付加物が形成したことを示している. 亜鉛板をナフテン酸コバルトと硫黄を加えたスクアレン中に入れて加熱すると, 亜鉛面上に多量のコバルトと硫黄が移行してきた.
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