軟質ビニルシート, レザー, スポンジレザーなどを製造する場合, 原材料の配合物中に水を混合して混練加工することは不可能である.
その理由は, コンパウンドに混じらず, 150°Cで加工中にビニルフィルムあるいはシートから水は蒸発し, 製品の表面は粗面となる.
本報では, 水の影響でビニル製品が失透したり, わずか軟化しているように感ずることに注目した.
ビニルスポンジレザーを準備し, レザーに水を吸収させ, レザーに対する水の軟化剤としての効果を観察した. すなわち, ビニルスポンジレザーを高温水に浸せきし, 高温で軟化させ (ミクロブラウン運動を活発にし), 可塑剤, 安定剤, その他の添加剤, あるいはビニルスポンジレザーに含まれる部分的分解生成物などをキャリヤとして, ビニルスポンジレザーに水を吸収させるように試みた. 高温水にビニルスポンジレザーを浸せきして軟化することに関し, 次のような結果を得た.
(1) 軟化度は, 水の温度が高いほど大きい.
(2) 軟化度は, 静置状態より, かく拌したほうが大きい.
(3) 温度にかかわらず, 水の吸収は約12分で平衡に達する.
(4) 水の吸収量は, 適当な条件下で約11~12%で, その軟化効果はビニル層に対して使用している可塑剤の同量に相当している.
(5) 浸せき水の温度は, 製品の外観変化のない程度の最高温度が望ましい. それは, 2次転移点付近の約60°Cが効果的である.
(6) 製品の吸水保持期間は2年以上である.
(7) 基布の軟化は, ビニル層の軟化に寄与していない. しかし, それはビニル層に対してマイナス要因ではない.
上述したように, ビニルスポンジレザーの高温水処理は実用性があるといえる.
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