ポリ塩化ビニルに各種の無機充てん剤を添加し, その力学物性を検討したところ, タルク配合系だけが高充てんにおいても力学物性(降伏点強度)の低下が見られなかった. この特異な現象の原因を探るため, タルク中に含まれる有機成分を抽出, 単離し, エルカ酸アミド, パルミチン酸, n-ドコサン, ジ-2-エチルヘキシルフタレート, ジブチルフタレート, 1-ドコサノール, アジピン酸ジオクチル, および乳酸, ギ酸, 酢酸の金属塩を同定した.
充てん量が増加するに従い, 強度低下の起こるポリ塩化ビニルーマイカ配合系に, エルカ酸アミドを添加した結果, マイカ添加にともなう降伏点強度の低下が抑制されることがわかった. マイカ粒子界面付近についてのSEM観察により, マイカ表面より繊維状の物質が新たに発生していることをも確認した.
これらの観測事実を一般化するため, 類似構造を持つ長鎖アルキル脂肪酸アミド(ベヘン酸アミド, ラウリン酸アミド)をポリ塩化ビニルータルク配合系に添加した結果, 力学物性(降伏点強度)の上昇効果が明瞭に現れることを見いだした.
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