牧草の平衡水分,カビの発生,乾物の減耗と環境湿度との関係を明らかにするため,8つの室内試験を行なった。湿度の調整は塩類の過飽和溶液か比重の異なる硫酸溶液を用いて,瓶,シャーレ,デシケータなどで行なった。結果の要約は次のとおりである。1)70%R.H.未満での牧草の平衡水分は13.0±2.1%であり,湿度間での差はみられなかった。70〜80%R.H.では18.2±2.2%で,湿度とともに高くなる傾向も認められ,80%R.H.以上では湿度とともに急激に上昇し,100%R.H.においては53.3±12.0%で,同一湿度における変異も大きくなった。2)同一湿度における平衡水分は,イネ科牧草にくらべ,マメ科牧草が高く,また生育段階の早いもの,葉部割合の多いもの,低水分で貯蔵したもの,調製中の発酵程度の少ないものなども高かった。3)カビの発生がみられた水分含量の最低は16%であったが,最高39%までみられないこともあった。一般的には20〜23%以下の水分含量になるとカビの発生は殆んどみられていない。4)環境湿度としては75〜80%R.H.以下に置かれた牧草は殆んどカビの発生がみられていない。カビが発生した時の水分含量は湿度によって差があり,発生までの日数にはそれぞれ差があるにもかかわらず,95%R.H.では35%前後と高い水分になってから発生しているが,85%R.H.では25%前後と低かった。5)乾物減耗は95%R.H.で9〜25%におよんだが,85%R.H.では0〜5%に下り,それ以下の湿度では殆んど起っていない。高水分で同一湿度におかれたものは平衡水分は低いにもかかわらず,乾物減耗は大きかった。また発酵程度の少ないものも減耗が大きかった。6)強く圧縮された牧草ほど当然,吸湿の割合は少なく,内外層の水分含量にも差がみられた。通常の梱包程度に圧縮された牧草が周囲の湿度の影響を強く受けるのはごく表層のみである。すなわち,水分13%の乾草は95%R.H.においても表面から0〜2cmまでしかカビは発生せず,逆に水分25%の乾草は75,53%R.H.におかれても表面から15〜19cm以上の深さではカビの発生がみられ,乾燥しなかった。
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