ヨシ,オオイタドリおよびササの草地生態系におけるNa,Fe,Mn,Zn,Cu,Co並びにNiの動きと,これらの微量元素を供給するL,F,HおよびA_0層の能力について検討した結果を要約すると次のとおりである。1.Na,Mn,CoおよびNi含量はオオイタドリの落葉がヨシ並びにササの落葉より高いがヨシとササの間には有意差が認められなかった。FeとZnはササの方がやや高い,Cuは各草類別にその含量の差が認められなかった。2.LからH層までにはNa,Fe,Mn,Zn,Cu,Co並びにNiの含量は増加して,HあるいはA_0層で最大値になるが,置換性Naの場合には逆にHあるいはA_0層が最少値になった。3.ヨシ,オオイタドリおよびササ群落の落葉のNa,Fe,Mn,Zn,Cu,Co,およびNi含量は,各々0.123〜0.278%,181.7〜260.8ppm,27.1〜139.6ppm,18.0〜41.1ppm,11.3〜12.5ppm,0.43〜0.53ppm並びに0.33〜0.40ppmであり,したがってこの地域では微量元素の欠乏はない。4.微量元素の生産量を群落別に比較するとオオイタドリ群落>ヨシ群落>ササ群落の順である。5.ヨシ,オオイタドリおよびササ群落における落葉のNa,Fe,Mn,Zn,Cu,Co並びにNiが平衡状態のレベルに対して50%,95%,99%無機化並びに蓄積されるに要する時間は表3のとおりである。6.Naと微量元素の分解および蓄積のモデルは(1)〜(14)式のとおりである。7.これらの草地生態系におけるL,F,HおよびA_0層が破壊された場合平衡状態の微量元素のレベルに比較して99%減少するには約50〜310年要する。
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