前植生の生産力を生かし,かつ新しい草種を追播で導入するために,追播に適する草種の選定を行った。さらに,放牧地における追播法として,追播直後から放牧を続け,前植生による披陰を除去する方法の可否を検討した。追播法はすべてドリル播きにした。まず,1区面積1.5m×1.5mの小規模試験で8草種の放牧および採草条件下における追播適性を比較した。放牧地の前植生はケンタッキーブルーグラス主体であり,採草地はオーチャードグラス主体であった。追播翌年の結果では,ペレニアルライグラスとアカクローバが放牧地,採草地ともに定着が良好であった。また,トールフェスク,チモシー,アルファルファは定着がみられなかった。オーチャードグラス,シロクローバ,メドゥフェスクは,播種当年の定着は確認されたが,翌年には既存牧草との区別が出来ず,追播のための適否は判定出来なかった。つぎに,比較的大規模にペレニアルライグラス,シロクローバ,トールフェスクをそれぞれ放牧地に追播し,放牧条件下における各草種の定着を調査した。その結果,ペレニアルライグラスおよびシロクローバは十分な定着を得たが,トールフェスクの定着はみられなかった。以上の結果から,ペレニアルライグラス,アカクローバ,シロクローバは追播に適することが判明した。また,追播直後からの放牧は,追播幼植物が喫食されたり踏圧を受ける不利益以上に前植生による被陰がとり除かれる益があり,定着に有利なことが判明した。
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