収集地を異にするミヤコグサの特性を比較する目的で,北海道から九州まで全国各地から収集したミヤコグサの66系統を1981年9月に播種し,1983年5月まで調査した。緯度及び標高と調査17形質との相関を求めると同時に,施肥区及び無施肥区の平均値を比較した。緯度と有意な正の相関を示した形質は葉色,茎色,株重及び収穫期で,高緯度の系統は葉色及び茎の紫色が濃く,収穫期は晩いが株重が重い傾向にあった。一方,標高と有意な相関を示した形質は草丈,茎数,茎の太さ,株重,開花期,収穫期,種子収量及び秋の草勢で,標高の高い地点から収集した系統は草丈が低くて,茎数も少なくて細く,株重は軽くて開花期も晩いうえ,種子収量や秋の草勢が劣る傾向を示した。収集地の異なる系統の平均値及び主成分分析の結果から,北海道から収集した系統は開花期は晩くて採種性が劣るが,株重が重く,いわゆる晩生型の特徴を持つことが明らかとなった。一方,東海・中国・四国の系統は開花期が早くて採種性が優れているが,株重が軽くて,いわゆる早生型の特徴を持つことが明らかとなった。九州の阿蘇及び久重山系の系統は開花期が晩く,株重も軽く,高標高適応型を示した。なお,施肥区の草丈,株重及び種子収量は無施肥区と比較して高かったが,施肥区の再生,秋の草勢及び生存株率は無施肥区と比較して低かった。
抄録全体を表示