ビッグベール調製時におけるヒートダメージを,発熱温度,成分組成および羊による利用性との関連から検討するために,水分含量37%および24%で梱包したビッグベールを調製して試験を行った。水分含量37%のビッグベールの温度は梱包後7日目に56℃に達し,約20日間50℃以上の高温を示していた。一方,水分含量24%のビッグベールは梱包後4日目に31℃に達したが,その後低下し,27℃前後の温度であった。そこで,水分含量37%で梱包したビッグベールの中心付近を高温区,その周辺の非褐変部を中温区,また水分含量24%で梱包したビッグベールを低温区として設定した。1.ADF,NDF,ヘミセルロース,セルロースおよびリグニン含量は,中温区で最も高く,逆に高温区で最も低い値であった。一方,ADIN/T-NおよびNDIN/T-Nの値は,高温区で最も高く,最も低い低温区の11.6%および19.4%に対してそれぞれ15.0%および51.0%であった。2.発熱の影響をうけた中,高温区では粗蛋白質の消化率は低かったが,乾物,有機物,ADF,NDF,ヘミセルロース,セルロースおよびエネルギーの消化率は低温区にくらべて高い値であった。粗脂肪の消化率は高温区で最も高かった。TDNおよびDE含量は中,高温区で高く,DCP含量は低温区で高かった。3.ルーメン内のアンモニア態窒素濃度は,高温区が中,低温区にくらべて低位で推移した。またVFA濃度は高温区が中,低温区にくらべて高く推移した。4.窒素出納試験の結果,発熱温度が高くなるにつれて糞中排泄窒素は増加し,尿中排泄窒素は減少した。窒素蓄積率は高温区で高かったが,有意な差ではなかった。
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