耐干性の強いローズグラスと弱いハトムギをリン施与量と土壌水分を変えた土耕ポットに栽培し,リン栄養が作物の耐干性にどのような影響を及ぼすかを,両草種の地上部・根部の生育状況,養分吸収,根系の発達及び光合成速度などから検討した。その結果,1)両草種の地上部・根部乾物重は水ストレスにより減少し,その減少割合は両草種とも高リン区に比べ低リン区で大きかった。2)両草種の根の生育は水ストレスにより阻害されたが,それはリンの増施により軽減された。特に,耐性の弱いハトムギでは低リン区に対し高リン区の総根長は,約2倍,根表面積は約2.8倍の増加が認められた。3)水ストレス区における土壌深層部40cmから60cmの根乾物重の分布割合は,ローズグラスの高リン区では23%,低リン区では16%,ハトムギの高リン区で2%,低リン区では0%であり,低リン区では深層部での根の分布が認められなかった。4)両草種の見かけの光合成速度は水ストレスにより減少し,その減少割合はローズグラスに比べハトムギで大きかった。しかし,高リン区では葉の水ポテンシャルが低くなった場合でも低リン区に比べて高い光合成速度が認められた。5)葉の水ポテンシャルの低下にともない両草種の気孔抵抗は増加したが,高リン区では低リン区に比較し,より低い水ポテンシャル値でも気孔抵抗が低く維持された。即ち,作物葉のリン栄養が不十分であると,正常葉に比べ高い水ポテンシャル値で気孔が閉鎖しやすいことが明らかとなった。
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