稲わらを細切し,これに尿素5%(Ur),ブロイラーの排せつ物20%(Bm)及び糖蜜10%,20%及び30%の添加処理でサイレージ調製をした。それぞれの添加物は水に溶かして,稲わらに混ぜその混合物をラボラトリーサイロに入れて,1990年6月より15,30日並びに45日間貯蔵した。各種添加物で処理調製した稲わらサイレージの外観性状,一般成分,発酵品質及び消化性(DOMD%)を測定した。処理後15日目の外観性状,一般成分,発酵品質及び消化性は処理後30日目と45日目のものと,ほぼ同じであった。乳酸含量とpH値から,全ての処理区で発酵が認められ,カビの発生も見られなかった。pHは処理後15日目まで低下したが,その後45日目においてもほとんど変化がなかった。乳酸については,尿素と糖蜜を添加した処理区が最も高く,次いでブロイラーの排せつ物を添加した処理区の順であった。アンモニア態窒素については,尿素及び尿素と糖蜜を添加した処理では調製後15日目までは増加したが,他の処理区ではほとんど変化が認められなかった。発酵品質については,無添加の対照区を除いて,添加処理すべてが良好な発酵品質を示した。消化性については,ブロイラーの排せつ物と糖蜜及び尿素と糖蜜を添加した処理区が最も高い値を示した。また,大腸菌群については,ブロイラーの排せつ物を添加した処理ではほとんど認められず,対照区には多く認められた。これは,ブロイラーの排せつ物を添加した処理区のpHが対照区のpHより低かったためではないかと考えた。これらの処理サイレージを羊に給与した結果,無添加対照区とブロイラーの排せつ物のみを添加した処理区以外は良好な嗜好性を示した。以上の結果から,稲わらに各種の添加物を混合してサイレジー調製することにより,飼料価値を向上させることが可能であることがわかった。特に,ブロイラーの排せつ物と糖蜜,及び尿素と糖蜜を添加した処理区は良好な発酵を示し,稲わらの消化性も高めることができた。
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