多孔質ケイ酸カルシウム水和物(Porous hydrate calcium silicate:PS)の施用が芝生のケイ酸栄養,刈り取り乾物車,葉色,窒素含有率に及ぼす影響を宮城県鳴子町東北大学農学部附属農場(2:1〜2:1:1型中間種鉱物を主体とする非アロフェン質黒ボク士)で3年間にわたる圃場試験により検討した。PS300g/m^2の施用により,茎葉のケイ酸含有率はベレニアルライグラス(Lolium perenne L.)で29%,ペントグラス(Agrostis palustris Huds.)で35%,トールフェスク(Festuca arundenacea Schreb.)で23%,ケンタッキーブルーグラス(Poa pratensis L.)で27%増加した。さらに,1996年と1997年にPS施用に対する影響をシバ(Zoysia japonica Steud.)とコウライシバ(Zoysia tenuifolia Willd.)の自然交雑種である"みやこ"を供試して検討した結果,両年とも生育期間を通して茎葉のケイ酸含有率がPSの施用量に応じて増加し,PSは芝生の生育期間を通して高いケイ酸供給能を維持していることが明らかとなった。特に,最終刈り取り時におけるケイ酸含有率の増加を無処理区と比較すると,100g/m^2施用区では1996年で9%,1997年で11%,300g/m^2では1996年で15%,1997年では18%増加した。PSの施用は刈り取り乾物総重量に影響を及ぼさなかった。また,芝生の審美面の重要な指標の1つである葉色は,1996年は試験期間を通して,5.6〜6.4と相対的に高い値を維持した。1997年も低温寡照であった生育初期と生育後期のごく短期間を除き,5.4〜6.0と良好な値を維持した。さらに窒素含有率は1996年では,PS施用により若干減少する傾向があるものの,1997年では明らかな差は認められなかった。このように,PSの施用により葉色及び窒素含有率を良好な状態に維持しながら,芝草中のケイ酸含有率の増加が認められた。以上の結果から,多孔質ケイ酸カルシウム水和物の施用は芝生の審美面を維持しながらケイ酸栄養の改善に有効であることが示された。
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