日本草地学会誌
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63 巻, 4 号
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研究報告
  • 河本 英憲, 嶝野 英子, 内野 宙, 出口 新, 魚住 順
    2018 年 63 巻 4 号 p. 183-189
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル オープンアクセス

    ダイズ(品種「スズカリ」)を子実肥大盛期と黄葉中期に収穫し,ホールクロップサイレージ(WCS)に調製した。コーンサイレージにこれらダイズWCSまたは輸入アルファルファ乾草(対照)を粗タンパク質含量が乾物中約15%になるように混合して牛に給与し,全消化管消化率と第一胃内容液性状を比較した。その結果,ダイズWCS飼料と対照飼料との間に繊維成分含量や可消化養分総量,第一胃内容液のpH,総VFA濃度に差はなかった。ただし,ダイズWCS飼料は粗脂肪含量が高くなり,第一胃内の酢酸/プロピオン酸比の低下とそれに付随する繊維消化率の低下を招きやすいことが示された。よって,ダイズWCSの粗脂肪含量の高さに留意すれば,アルファルファ乾草を代替でき得ることが示唆された。

  • 藤井 弘毅
    2018 年 63 巻 4 号 p. 190-198
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル オープンアクセス

    ガレガは落葉性多年草であり,茎葉生産を担うシュートの地上部は,毎年春期に更新される。本研究ではガレガのシュート地下部を構成する地下茎,不定根および根粒の形態の季節的変化の調査に基づき,シュートの生活史ならびに世代交代の様式を検討した。その結果,ガレガのシュートの地上部(茎葉)の生存期間は,春の出芽から越冬前までの約6カ月間,すなわち1生育期間のみであった。一方,シュートの地下部の生理機能維持の期間は,前年夏以降に発生してから地上部に茎葉を展開する当年を経て,翌年の夏ないし秋までの約2年に及んだ。ガレガのシュートの世代交代は,その地下部を含むシュート全体に着目すれば,新旧2世代がその生存期間を1年程度重複させつつ,その間に茎葉生産を担う中心的役割を,旧世代から新世代へ引き継いでいく様式であると考えられた。

  • 坂上 清一
    2018 年 63 巻 4 号 p. 199-204
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル オープンアクセス

    放牧地の草量変化に関する実測値から被食量を推定するための式を導出する手順(Linehanら1947 ; Lantinga 1985)に基づき,前後差法,内外差法,Bosch(1956)の推定式それぞれについて植物の成長速度関数と被食速度関数を決定した。逆に,速度関数として単純な定数や二次までの関数,あるいはその組み合わせ等を種々仮定し,新たな被食量推定式を複数導出した。各推定式の適合度を調べるため,Linehanらによる一連のデータ(Linehan・Lowe 1946 ; Linehanら1947,1952)とSharrow・Motazedian(1983)のデータを利用した。

    既存の推定式については,植物の成長速度関数や被食速度関数は定数や1係数1次関数であった。草本種の成長式として提案された2係数1次関数式(Turchin・Batzli 2001)の場合,保護ケージ併用の草量変化の測定値の他に環境収容力の値が必要であった。生物の成長式として合理的とされるロジスティック式(Verhulst 1838)を仮定すると,推定式そのものの導出が困難であった。実測データに対しては,不連続な成長速度関数を仮定するBosch(1956)の式による推定値が最も適合した。放牧状態での草の成長と禁牧状態での草の成長の間には,矮性化等の質的差異が表出する可能性があるので,単純で不連続な成長関数を仮定することが簡便で実用上の優位性があろう。

実用記事
周年親子放牧による高収益繁殖経営を目指して
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