本研究は,都市再生政策が早くから実施されているドイツのミュンヘンを事例として,都市再生政策の展開過程を整理し,1980年から2000年における都市空間の形態的・社会経済的変化という視点から都市再生の実態を分析することを通し,都市再生政策に伴って生じる空間再編の地域的差異の特徴を考察することを目的とする.ミュンヘンでは1970年代以降に都市再生政策が本格的に導入され,個別の既存住宅の改良を促進するための複数の施策のほか,主な事業として都市更新事業が実施され,既成市街地が面的に改善されていった.建築物の形態的側面からみると,都心2~4 km圏に位置する東西の都市更新事業の実施区域や,都市政策上の重点開発地域である中央駅周辺などの都心周辺において都市再生が活発である.特定区域における都市再生の活発さは,公的事業による直接的な開発行為,およびそれらを契機とした民間投資による開発を反映している.都市再生の社会的側面として,建物更新が顕著である都心周辺の更新度が「中・高」の地区においては,ドイツ人人口が維持され,または増加しており,社会経済活動の中心である18~64歳までの生産年齢人口の割合が高く,社会的な再生産がみられる.都市再生政策の実施を契機として,衰退地域が居住地としての魅力を回復し,都心周辺という立地条件を備えた開発地としての魅力を高めており,政策的判断を通して都市再生が特定地域で促進されるという選択的な都市再生が進行している.
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