地理学評論 Series A
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82 巻, 2 号
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会長講演
  • 石原 潤
    原稿種別: 会長講演
    2009 年 82 巻 2 号 p. 73-90
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
    中国の集市(伝統的市)は,定期市と毎日市からなり,長い歴史の中で発展をとげ,民国期には5万余が存在していた.革命後の社会主義化の流れの中で,集市には一定の規制が加えられ,集市の数は次第に減少し,特に左寄りの政策が実行された時期には取引が衰退した.しかしながら改革開放期に入ると,集市取引はむしろ奨励され,多数の集市が復活・新設され,集市取引高も年々急拡大した.都市部では出稼農民や失業者が,農村部では兼業農民が市商人に参入した.ところがこのような集市の繁栄にも,近年,明らかに陰りの傾向(集市数の減少,集市取引高の停滞,小売販売総額に対する集市売上高の割合の低下)が見て取れる.常設店舗の叢生,モータリゼーションの進展,退路進庁政策,スーパーマーケットの普及等が影響していると考えられる.
論説
  • 大橋 めぐみ, 永田 淳嗣
    原稿種別: 論説
    2009 年 82 巻 2 号 p. 91-117
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
    従来型の食料供給体系に対するオルタナティブな流通としてショートフードサプライチェーン(SFSCs)が注目を集めている.本研究では,1991年の牛肉輸入自由化以降2004年までの岩手県産短角牛肉流通の動態を,供給連鎖の短縮・単純化,密な主体間相互作用,特定の場所との密な相互作用というSFSCsの動的システムとしての三つの特徴の効果発現の条件に焦点を当てて分析し,SFSCsの安定的な存立のための条件を探った.本研究の事例は特に,特定の場所との関係強化という方向で安定化を図ってきたが,ローカル性による差別化は容易ではなく,消費者の嗜好への対応や行動原理への地道な働きかけが必要であった.同時に,需給調節や資源循環型技術の実現といった課題を克服し,三つの特徴の効果発現を通じてSFSCsの安定的な存立を図るには,流通業者や生産者の公益性や助け合いを重視する行動原理の維持・強化が重要であった.
  • 伊藤 徹哉
    原稿種別: 論説
    2009 年 82 巻 2 号 p. 118-143
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究は,都市再生政策が早くから実施されているドイツのミュンヘンを事例として,都市再生政策の展開過程を整理し,1980年から2000年における都市空間の形態的・社会経済的変化という視点から都市再生の実態を分析することを通し,都市再生政策に伴って生じる空間再編の地域的差異の特徴を考察することを目的とする.ミュンヘンでは1970年代以降に都市再生政策が本格的に導入され,個別の既存住宅の改良を促進するための複数の施策のほか,主な事業として都市更新事業が実施され,既成市街地が面的に改善されていった.建築物の形態的側面からみると,都心2~4 km圏に位置する東西の都市更新事業の実施区域や,都市政策上の重点開発地域である中央駅周辺などの都心周辺において都市再生が活発である.特定区域における都市再生の活発さは,公的事業による直接的な開発行為,およびそれらを契機とした民間投資による開発を反映している.都市再生の社会的側面として,建物更新が顕著である都心周辺の更新度が「中・高」の地区においては,ドイツ人人口が維持され,または増加しており,社会経済活動の中心である18~64歳までの生産年齢人口の割合が高く,社会的な再生産がみられる.都市再生政策の実施を契機として,衰退地域が居住地としての魅力を回復し,都心周辺という立地条件を備えた開発地としての魅力を高めており,政策的判断を通して都市再生が特定地域で促進されるという選択的な都市再生が進行している.
  • 佐藤 峰華, 岡 秀一
    原稿種別: 論説
    2009 年 82 巻 2 号 p. 144-160
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
    シラビソAbies veitchii,オオシラビソA. mariesiiの優占する日本の亜高山針葉樹林帯には,いわゆる縞枯れ現象wave-regenerationが発現する.これは,天然更新の一つのパターンであり,特に北八ヶ岳にはその広がりが顕著である.北八ヶ岳・前掛山南斜面における亜高山帯針葉樹林で,空中写真判読を行い,いくつかの更新パターンを検出した.さらに,その違いが何に由来するのかを検討するために,現地で林分構造,齢構造,ならびに土壌条件について調査を行った.その結果,成熟型更新林分,縞枯れ型更新林分,一斉風倒型更新林分,混生林型更新林分という構造と更新パターンを異にする四つの林分が識別された.これらの林分が出現する範囲はほとんど固定されており,縞枯れ型更新林分は,南向き斜面のごく限られた領域にしか生じていなかった.これらの林分の配列は土壌の厚さや礫の混在度ときわめてよい対応関係を持っており,縞枯れ現象を発現させる自然立地環境として,斜面の向き,卓越風向などとともに,土壌条件が重要な役割を果たしていることが明らかになった.
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