地理学評論 Series A
Online ISSN : 2185-1751
Print ISSN : 1883-4388
ISSN-L : 1883-4388
83 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
論説
  • ――青森県三戸町の包括業務委託の事例――
    佐藤 正志
    原稿種別: 論説
    2010 年 83 巻 2 号 p. 131-150
    発行日: 2010/03/01
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    地方自治体は現在,行財政運営の効率化の手段の一つとして公共サービス民営化を進めているが,自治体の地域特性に起因して民営化導入は地域差が見られる.特に周辺地域の自治体は専門サービス業者の不足を中心に,民営化導入は困難である点が指摘されてきた.本研究は青森県三戸町の包括業務委託を事例に,周辺地域の自治体の地域特性に応じた民営化後のサービス供給体制の変化とその要因を考察した.三戸町の包括業務委託ではサービス内容の維持と,サービス供給に携わる現業部門従業者の増加が進められた.一方で,包括業務委託の目的の一つである経費削減は進んでいない.三戸町では委託開始後,町と民間企業との間で長期的なサービス運営の協力体制の構築を行う協働的関係が築かれる一方で,町がサービス内容の設定を行い続けている.こうした委託方式や運営が採られた理由として,雇用機会の確保とサービスの持続の二点を町が重視したことが大きい.
  • ――時空間データの類型化と可視化――
    桐村 喬
    原稿種別: 論説
    2010 年 83 巻 2 号 p. 151-175
    発行日: 2010/03/01
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    本稿は,都市内部の居住者特性に関する入力変数の情報を最大限に活用した類型化および可視化手法としての自己組織化マップ(Self-Organizing Map: SOM)の有効性や網羅性を示すことを目的としている.SOMでは「マップ」と呼ばれる2次元空間を利用して,居住者特性の時空間的な変化を示すこともできる.そこで本稿では,SOMを用いて,阪神・淡路大震災前後の神戸市の既成市街地における時空間的な居住者特性の変化を明らかにする.
    SOMおよび「マップ」による分析の結果,被害が大きく,利便性の高い地域における若年層の増加や,製造業中心の地域における失業率の悪化や高齢化といった,従来の個別の事例研究において得られた成果と同様の結果が確認された.また,「マップ」によって,震災直後の居住者特性が従前よりも多様化したことが示された.こうしたことから,SOMは,都市内部における居住者特性の分析に対して非常に有効であり,網羅的に検討できる手法であることが示された.
短報
  • ――石川県七尾市の事例から――
    久木元 美琴
    原稿種別: 短報
    2010 年 83 巻 2 号 p. 176-191
    発行日: 2010/03/01
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    本稿では,延長保育サービスへのニーズが高い販売・サービス職業の卓越する地域として地方温泉観光地を取り上げ,サービスの導入・定着のプロセスとその地域的背景を明らかにした.北陸地方の代表的な温泉観光地である石川県七尾市では,市内認可保育所において高い比率で夜間の延長保育サービスが実施されている.この背景には,安定的な女性労働力確保を目的とした旅館組合による保育所設置と市による支援,さらにはニーズを見越した他保育所のサービス導入があった.本事例は,延長保育サービスに対する国家政策の介入がない段階において,認可外保育所が存立しない自治体で,地域固有のニーズに対応するために,企業,地域保育所,地方自治体が積極的に関与した事例として理解することができる.
  • ──大型店の出店規制に着目して──
    駒木 伸比古
    原稿種別: 短報
    2010 年 83 巻 2 号 p. 192-207
    発行日: 2010/03/01
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    本研究は,徳島都市圏における大型店の立地展開とその地域的影響が,出店規制に基づきどのように変化してきたかを明らかにした.徳島都市圏では,大店法の施行から現在に至るまで,大型店の出店に対する規制はそれほど厳しく行われてこなかった.そのため,大店法が強化された1980年代に,県外資本によって大型店の出店が進んだ.大型店の郊外化・大型化は,大店法が緩和された1990年代ではなく,大店立地法が施行された2000年以降に顕在化した.これらの結果は,大店法の施行期間において出店調整に対して行政の関与があったために独自規制や出店拒否が行われず,大店立地法の施行以降も新たな制度に基づく規制の実施に消極的であるという徳島都市圏における出店規制の実態から説明される.加えて,出店規制は,商業集積や消費者買物行動に対しても,間接的に影響を及ぼしてきたことが確認できた.
書評
記事
feedback
Top