地理学評論 Series A
Online ISSN : 2185-1751
Print ISSN : 1883-4388
83 巻 , 5 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
論説
  • 渡辺 雅樹, 岡 秀一
    原稿種別: 論説
    2010 年 83 巻 5 号 p. 465-478
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    本稿では,埼玉県南東部見沼田圃の耕作放棄地に注目し,植生分布の特徴とその成立要因を解明した.空中写真判読および植生調査を行った結果,1998年には調査地の大部分をヨシ群落が占めていたが,それ以降多くがセイタカアワダチソウ群落に変わり,ヨシ群落は水域の周辺に限定的に出現していた.地下水位,微地形,および土壌特性を対照すると,ヨシは地下水位が高いところ,セイタカアワダチソウは地下水位が低いところで群落を形成しており,地下水位が高くても,地表面の勾配や土壌硬度が大きいところには,セイタカアワダチソウ群落が出現することがわかった.こうした植生分布の変化は,水田耕作放棄による影響,2000年に造成された水域の影響,ならびに踏圧の影響によって生じたものと考えられた.
短報
  • 日下 博幸, 羽入 拓朗, 縄田 恵子
    原稿種別: 短報
    2010 年 83 巻 5 号 p. 479-492
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,2000年7月4日に東京で観測された局地豪雨を対象に,GPS可降水量とヒートアイランド現象に着目した気象観測データの解析を行った.その結果,この日,大気の状態は不安定で,平野スケールの地上風の収束場が都心に位置しており,山岳から都心に移動してきた降水系に伴う発散風と海風としての南風の局所的な収束が都心で生じていたことが確認された.さらには,可降水量の増加域は降水域と一致しており,その値は降水の数時間前に増加し,約1時間前に最大になる傾向にあったことがわかった.しかしながら,ヒートアイランド現象は明瞭に見られたものの,それに伴う都心での明瞭な水蒸気の集積は認められなかった.本事例の場合,ヒートアイランドが東京で強い上昇流を引き起こしながら水蒸気を集積し豪雨を発生させたと考えることは難しい.
  • 足達 慶尚, 小野 映介, 宮川 修一
    原稿種別: 短報
    2010 年 83 巻 5 号 p. 493-509
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    本稿では,ラオス中部のヴィエンチャン平野に立地するドンクワーイ村を対象として,1952年以降の水田の拡大過程と世帯増加・自然条件・農業政策との関連性を検討した.同村では,2005年時点で約90%の世帯が自給的な天水田稲作に従事している.天水田の開田は世帯数の増加に対応して進められ,その面積は1952年から2006年の54年間に約4.3倍に増加した.特に1980年代から1990年代にかけて急速に開田が進行し,雨季の河川の増水による湛水リスクのある低地へも天水田域が拡大した.
    政府による農業の集団化政策を受けて,村では1979年に農業組織の一形態である水田協同組合が組織されたが,生産米の分配方法に対する不満から大半の世帯は1年で脱退したため,同政策による天水田面積の増減は生じなかった.ただし,組合に残った一部の世帯は河川の氾濫原を利用した浮稲栽培や乾季の灌漑水田稲作を開始し,稲作形態が多様化した.浮稲栽培や灌漑水田稲作は,組合の解散後も受け継がれ,多くの村民が携わるようになったが,1997年以降の灌漑水田面積は微増にとどまっている.乾季作の作付面積は,割高な灌漑設備の維持・使用の費用と,雨季作の収穫状況を踏まえて増減調整がなされており,雨季作の不作時におけるセーフティー・ネットとしての性格を有する.
  • 伊藤 慎悟
    原稿種別: 短報
    2010 年 83 巻 5 号 p. 510-523
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    本研究は仙台市を事例に,1960年代に開発された戸建住宅団地の年齢構成と高齢化の差異を明らかにし,その差異に影響を及ぼしている要素を導き出すことを目的とする.まず,1975年の5歳階級別人口比率において,第一,第二世代の偏りに団地間で差異がみられ,仙台駅からの距離といった団地属性との関連性が強いことが判明した.市域縁辺部にある住宅団地の多くは,第一,第二世代に偏った年齢構成をしているが,2005年に至って居住者の入れ替わりはあまりみられず,第一世代の加齢と第二世代の転出によって急激に高齢化している.これに対し,仙台駅から比較的近い位置にある住宅団地は,若年単身世帯の受け皿としての機能も有し,高齢化があまり進んでおらず,両者における差異が明瞭にみられた.
  • 鈴木 重雄
    原稿種別: 短報
    2010 年 83 巻 5 号 p. 524-534
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    日本各地で人間による樹林地の利用圧の低下や竹林管理の粗放化に起因する竹林の拡大が報告されている.本研究では,広島県竹原市小吹集落において,最近40年間の,たけのこの生産状況の変化と竹林化の生じた土地利用に着目し,竹林の拡大した要因を検討した.その結果,竹林面積は1962年から2000年の間に2.6倍に拡大していた.たけのこ生産が盛んに行われていた1986年以前だけでなく,国内産たけのこの需要が低迷し,高齢化等によりたけのこ生産が衰退した1986年以降の期間も,竹林の拡大は継続し,特に畑と樹園地で急激に竹林化が生じていた.1962年から2000年の竹林拡大のうち36%が1962年の農地で生じており,耕作放棄や竹林への転換がなければ起こらなかったと推測できた.竹林は所有者による植栽終了後も竹林管理の粗放化により拡大していた.加えて,竹林に隣接する農地の耕作放棄により拡大しやすい空間が生じたことも,急激な拡大に影響していることが明らかとなった.
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