地理学評論 Series A
Online ISSN : 2185-1751
Print ISSN : 1883-4388
ISSN-L : 1883-4388
84 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
  • 梶田 真
    原稿種別: 総説
    2011 年 84 巻 2 号 p. 99-117
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2015/09/28
    ジャーナル フリー
    本稿では,政策的・社会的背景と関連づけながらBleddyn Daviesの研究を展望し,彼の研究のどの部分がどのような観点から地理学者によって注目・受容されたのか,そして,両者の関係がどのように変化していったのかを考察した.
    Daviesが地域的公正概念を案出した主たる契機は,10カ年保健福祉計画にあると考えられ,福祉国家の時代における彼の研究は問題告発的なものにとどまらず,問題解決のための政策や制度のデザインにまで広がっていた.福祉国家が転換期を迎えた1970年代後半以降,Daviesと彼を所長とするPSSRUのメンバーはより安い費用でよりよい効果を達成することができるケアシステムの提案のために注力した.彼等の努力はコミュニティケア実験プロジェクトと福祉の生産アプローチに結実した.1970年代における公共サービスの地理学の台頭の中で,地理学者は彼の地域的公正概念に注目した.しかし,体制批判的なスタンスが英語圏地理学において支配的な地位を獲得した1980年代以降,地域的公正概念は改良主義者の道具として強く批判されるようになり,後期のDaviesやPSSRUの研究はほとんど紹介・参照されることはなかった.
短報
  • 田力 正好, 安江 健一, 柳田 誠, 古澤 明, 田中 義文, 守田 益宗, 須貝 俊彦
    原稿種別: 短報
    2011 年 84 巻 2 号 p. 118-130
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2015/09/28
    ジャーナル フリー
    岐阜県南東部および愛知県西部を流れる土岐川(庄内川)流域の河成段丘を,空中写真判読によりH1~4面,M1~3面,L1~3面の10段の段丘面に分類した.それらの段丘面のうち,L2面は,構成層中の試料の14C年代値,構成層を覆う土壌層中の指標テフラ(鬼界アカホヤテフラ),段丘面の縦断形と分布形態,段丘構成層の厚さに基づいて,酸素同位体ステージ(MIS)2の堆積段丘面と同定された.M2面は構成層と指標テフラ(阿蘇4テフラ,鬼界葛原テフラ)との関係,構成層およびそれを覆う風成堆積物の赤色風化に基づいて,MIS6の堆積段丘面と同定された.これらのことから,これまでMIS6の堆積段丘の報告がほとんどなかった中部地方南部において,その分布が確認された.M2面とL2面の比高から,土岐川流域の隆起速度は0.11~0.16 mm/yrと求められた.
  • 高屋 康彦
    原稿種別: 短報
    2011 年 84 巻 2 号 p. 131-144
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2015/09/28
    ジャーナル フリー
    花崗岩地形の形成過程を理解するためには, 酸性条件下の化学的風化で生成される二次生成物の特徴をとらえる必要がある.そのため本研究では, 風化変質実験を実施した.実験では同一形状に整形した花崗岩および鉱物4種(黒雲母, 斜長石, アルカリ長石および石英)と酸溶液とを56日間反応させ, 試料表面の化学組成をXPSで求めた.低pH条件下の花崗岩の変質では, 黒雲母が顕著に溶解してケイ素酸化物(水酸化物)が形成された.中性から弱酸性条件下では, 斜長石の溶解によるpH増が黒雲母からの鉄酸化物(水酸化物)の沈殿を促進した.同時に, 黒雲母の溶解による水溶液中のMgなどの陽イオンの存在が斜長石の変質におけるアルミニウム酸化物(水酸化物)の沈殿を遅らせた可能性がある.このような構成鉱物間の相互関係は, 黒雲母の反応性を高めている.野外での花崗岩風化の特徴の一つである鉄錆の生成は, 斜長石の溶解によって促されることが明らかになった.
  • 佐々木 亮道
    原稿種別: 短報
    2011 年 84 巻 2 号 p. 145-159
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2015/09/28
    ジャーナル フリー
    庄内平野東縁に分布する活断層群のうち鳥海山南西麓(日向川以北)を調査対象とし, 当該地域における活断層の分布と変位地形の特徴を明らかにした.鳥海山南西麓付近では, 平野との境界付近に断続的に分布する小丘陵の西麓に比高の大きい断層崖が位置し, 東麓付近では地形面が逆傾斜したり逆向き低断層崖が存在したりする場合が多い.これらのことから, 小丘陵西麓には主断層である東傾斜の低角な逆断層が存在し, 東麓には副次的な西傾斜のバックスラスト(共役断層)が存在すると考えられる.一方, 酒田衝上断層帯の西側に隣接する連続性の良い丘陵(丸森丘陵)では, 東麓に比高の大きい断層崖が形成されていると推定される.平野沿いの断層群の第四紀後期の平均鉛直変位速度は, 北部では 0.5 mm/yr以下, 南部では0.7~0.8 mm/yr以上である.
書評
記事
feedback
Top