地理学評論 Series A
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85 巻, 1 号
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論説
  • 野尻 亘, 兼子 純, 藤原 武晴
    原稿種別: 論説
    2012 年 85 巻 1 号 p. 1-21
    発行日: 2012/01/01
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル フリー
    日本における自動車部品の中・長距離のジャスト・イン・タイムによる物流システムは,特にオイルショック以降,多品種生産,フレキシブルな生産への移行,通信情報システムの発達,完成車工場立地の広域化を背景として,完成車メーカー,部品サプライヤー,その物流子会社やサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)相互の協力により形成された.各部品サプライヤーからミルクラン方式で集荷する集散地の集荷物流センターと,完成車工場近くで,部品の仕分け・定時多回納入を行う配送納入センターを設け,その間は大型車で幹線集約輸送をする.それは,積合わせによる幹線輸送における規模の経済の実現と,きめ細かな仕分けや多頻度配送を可能とする範囲の経済を同時に実現するフレキシブルな物流システムである.各部品メーカーが物流コストを負担し,多様な物流が展開している本田技研熊本製作所と,完成車メーカー側が物流コストを負担して,3PLを元請にして集荷している三菱自動車水島製作所の具体的事例について比較,考察した.
  • 畠山 輝雄
    原稿種別: 論説
    2012 年 85 巻 1 号 p. 22-39
    発行日: 2012/01/01
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,2006年の介護保険制度改正に伴い新設された地域密着型サービスの地域差の実態とその要因について明らかにした.地域密着型サービスの地域差は,従来の介護保険サービスに比べて大きく,小規模市町村を中心としたサービスの未実施市町村と,充足指数の高い人口1~5万人程度の中規模町村の存在が要因となって生じていた.サービスの未実施市町村は小規模市町村に多いが,これは市町村による整備目標の未設定という,市町村の意向が反映された結果である.一方で大都市圏の中核都市では整備目標を設定したにもかかわらず,事業の採算性を考慮した事業者の消極的な参入という,事業者の地域的な参入行動が大きく影響していた.このように,サービスの地域差には市町村施策が少なからず影響しているものの,最終的なサービス供給量を規定している事業者の参入行動が大きな影響を与えていることが明らかとなった.
総説
  • 外枦保 大介
    原稿種別: 総説
    2012 年 85 巻 1 号 p. 40-57
    発行日: 2012/01/01
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,進化経済地理学の主要業績を読み解くことを通じて,進化経済地理学の発展経路を探索し,今後の可能性を検討することである.進化経済学は,ルーティンを鍵概念として議論を展開しており,議論の特徴の一つである方法論的な多様性や開放性は,進化経済地理学に受け継がれている.重層的空間スケールにおける経済システムの進化を議論する進化経済地理学のうち,本稿では,経路依存性と一般ダーウィニズムのアプローチの議論動向を取り扱った.前者のアプローチでは,地域の発展経路を描く手法が開発される一方で,経路依存性と均衡・非均衡との関係が再考されている.後者のアプローチでは,生物学の概念が導入され,特に「関連した多様性」は関心を呼んでいる.今後の可能性として,理論と実証をつなぐ中間概念の整備,有意義な事例研究の蓄積と既存研究の再評価,重層的な空間スケールにおける多様な主体の進化を取り扱うことを指摘した.
短報
  • ——群馬県東毛地域のニガウリ生産を事例に——
    岡田 登
    原稿種別: 短報
    2012 年 85 巻 1 号 p. 58-71
    発行日: 2012/01/01
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル フリー
    本研究では群馬県東毛地域を事例として,農協連携によりニガウリ生産が拡大した要因を,農協間の協力関係の構築とニガウリ栽培を導入した農家の経営内容に注目して明らかにした.2002年から東毛地域で全農群馬が主導し,東毛3農協が連携してニガウリの共同販売を開始できたのは群馬板倉農協と館林農協の販売担当者に農協連携による共同販売以前から協力関係が存在していたことがある.これによって,全農群馬は各農協への指示系統を確立させ,規格と販売先を指示し,栽培技術を共有させることができた.また東毛3農協管内の60歳未満男性専業者のいる農家がニガウリ栽培を導入したことが生産拡大の契機となった.これらの農家がニガウリの生産に成功したことで,その後キュウリやナス以外の作物を主体に生産している農家や,女性農業者,兼業農家,および60歳以上の農業者がその栽培を導入するようになり,その生産は拡大した.
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