地理学評論 Series A
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85 巻, 6 号
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論説
  • ——長崎市の介護事業所を事例に——
    宮澤 仁
    原稿種別: 論説
    2012 年 85 巻 6 号 p. 547-566
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2017/11/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,長崎市を事例地域に地域密着型サービスの介護事業所が取り組む地域交流・連携の実態を明らかにした.まず,外部評価報告書の内容を分析した結果,事業所から地域社会に積極的に働きかけるタイプの取組みに地域差が確認された.全体の傾向として事業所は,所在地の自治会をパートナーとして交流・連携に取り組むことでさまざまな効果を享受していたが,そこにも地域差が存在した.次に,その要因として①地域の環境条件と②事業所の運営方針を想定し,交流・連携に積極的な姿勢を示す複数の事業所と地域社会を調査した結果,各事業所はそれぞれの運営方針を反映した交流・連携の必要動機をもっていること,その実践形態には地域の環境条件が踏まえられていることが明らかとなった.このことは,地域交流・連携の深化には事業所の姿勢や体制を整えるとともに,地域の特性に配慮した交流・連携手法の採用が重要になることを示唆している.
  • 大呂 興平
    原稿種別: 論説
    2012 年 85 巻 6 号 p. 567-586
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2017/11/16
    ジャーナル フリー
    日本の牛肉輸入自由化から20年が経過した.この間,豪州からの牛肉輸入量は急増したが,開発輸入を目的に豪州生産拠点を築いた日本企業はほとんどが撤退し,豪州産牛肉の大半は豪州企業との相対取引により調達されるに至った.本研究では,この取引形態の変動を説明すべく,開発輸入の前提となった生産条件,市場条件,および企業間の能力差の変化を,変化の動因たる主体の行動に注目して分析した.日本企業進出の根拠は,日豪間に大きな内外価格差があったにもかかわらず,豪州企業には日本市場が固有に必要とする品質を実現する能力がなかった点にあった.しかし,時間とともに,日本固有の中長期肥育牛肉の需要は急減し,日本の外食消費や豪州・東アジアにおける短期肥育牛肉の需要が増大した.日本では生産者による低コスト化・高品質化が進んだ一方,豪州では多国籍巨大パッカー傘下の企業が短期肥育牛肉の世界販売を本格化させた.これらの変化が積み重なり,日本企業は自社生産の合理性を失った.
総説
  • ——LEADER事業を中心に——
    梶田 真
    原稿種別: 総説
    2012 年 85 巻 6 号 p. 587-607
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2017/11/16
    ジャーナル フリー
    本稿では,1990年代以降,ボトムアップ型・内発型の農村開発の推進を図ってきたEU・LEADER事業に関する学術研究の展望を行った.これらの研究は,農村開発をめぐるアクター間の権力関係の問題や,効果的なパートナーシップ構築における専門的な支援者の重要性,事業評価を通じた学習やエンパワーメントの重要性を明らかにしている.また,現場の動きを踏まえた理論化を通じて,内発型・外来型の二分論を超えた新内発型農村開発論の提起も行われている.こうした成果は,地域的・制度的な文脈の違いはあるものの,現代の日本の農村においてボトムアップ型・内発型農村開発を進める上での重要な論点を示している.また,現場の動きと社会理論の双方を踏まえて,より精緻な農村開発理論を提示しようとする試みは,農村開発に関わる研究者の研究戦略を考える上でも多くの示唆を与えるものである.
短報
  • 森田 匡俊, 奥貫 圭一, 塩出 志乃
    原稿種別: 短報
    2012 年 85 巻 6 号 p. 608-617
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2017/11/16
    ジャーナル フリー
    高齢化に関して,都市部における老年人口の多さが社会的問題になりつつある.ところが,高齢化率のみを見ると,都市部では総人口も多いために問題を過小評価する可能性がある.そこで本稿では,愛知県を対象地域として,老年人口密度の分布を考慮した高齢化率の空間的分布パターンの把握を試みた.まず,高齢化率と老年人口密度についての階級区分図から,両値の空間的分布パターンを比較検討した.次に,2変量ローカル・モラン統計量を用いて両値の空間的相関関係に基づく地区の類型化を行った.その結果,老年人口密度の高い都市部における高齢化と,高齢化率のみが高い農山村部における高齢化とを,その性質の違いを踏まえて同時に把握できた.そのほか,都市部における高齢化を二つのタイプに分けて把握できた.また,可変地区単位問題による分析結果への影響を考察した結果,愛知県では,1 kmメッシュデータの利用が有効であった.
  • ——1910年利根川大水害による移住をめぐって——
    三木 理史
    原稿種別: 短報
    2012 年 85 巻 6 号 p. 618-632
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2017/11/16
    ジャーナル フリー
    本稿の課題は,「群馬県庁文書」の活用によって,1910年利根川大水害の罹災者の対応を,移住者送出に視点を据えて明らかにし,これまでの移民研究の空隙を埋めることにある.本稿は,群馬県多野郡の朝鮮移住と全県的に推進された北海道移住に重点を置いて考察を行った.群馬県は,商品作物生産が盛んで,かつ農業外労働市場が豊富なため,元来移住者送出数が少なかった.多野郡では,出身者の日向輝武の勧誘活動により,1900年代初めから移住者送出が本格化していたところへ大水害が発生した.しかし,同郡罹災者に東拓の朝鮮移住情報は浸透せず,彼らは新聞広告から情報を得て渡航した.一方,県主導の北海道移住では,義捐金からの補助金拠出に加え,日下部宗三郎ら地元の先駆的移住者の積極的勧誘が促進要因であった.その結果,全般に死者が少なく,耕地や家屋の被害多大な地域で移住者送出依存の高かったことが明らかとなった.
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