地理学評論 Series A
Online ISSN : 2185-1751
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87 巻, 3 号
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論説
  • 周  雯婷
    2014 年 87 巻 3 号 p. 183-204
    発行日: 2014/05/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    本研究では,上海の古北地区における日本人集住地域の形成・変容過程を,空間的側面と社会的側面から明らかにした.1990年代の中国では,外国人政策により,日本人を含めた外国人は外国人住宅地に居住を強いられた.2003年以降は,外国人政策の緩和の中で,以前の外国人住宅地とその周辺には日本人のみが多く居住するようになった.それが現在の古北地区である.日本人向けの生活関連施設の集積が進むにつれ,日本人の新規居住者が増加した.日本人の属性は,1990年代には駐在員がほとんどであったが,2000年代以降,駐在員,現地起業者,現地採用者など多様になった.日本人の居住パターンは,日本人が他の外国人と混在する形態から多様な日本人の集住が進む形態へ変化したといえる.以上の分析から,日本人集住地域の形成・変容要因は,諸外国とは異なる社会主義体制下の中国特有の外国人政策の影響,および日本人向けの生活関連施設の集積であることが指摘できた.

  • 橋本 操
    2014 年 87 巻 3 号 p. 205-223
    発行日: 2014/05/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    本稿は,北海道平取町を事例に,ヒグマの採食行動の季節性を踏まえ,ヒグマが出没する集落環境とそれを形成する人間活動を分析することで,ヒグマが集落へ出没する人的要因を明らかにした.まず平取町を含む日高地域を対象に,ヒグマの胃内容物データより,人間活動に起因する食物の採食時期を把握した.次に平取町において,ヒグマが出没する地点の土地利用を分析した.さらにヒグマの駆除に携わる狩猟者12名に聞取り調査を行い,周年的な農業,駆除活動の情報を得た.その結果,①春から初夏に,農地周辺,捕獲場所から近い林野,藪地にエゾシカの駆除死体が埋設されたり,回収されずに放置されており,ヒグマがそれらを摂取できること,②酪農・畜産農家が所有するデントコーン畑は,住宅地から離れ,森林に近接して立地するため,晩夏から秋の成熟期に被害が多いことが明らかになった.

  • 池田 真利子
    2014 年 87 巻 3 号 p. 224-247
    発行日: 2014/05/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    本研究は,ベルリンの特殊な歴史を背景とし旧東ドイツのインナーシティ地区においてベルリンの壁崩壊以降大規模に発生した占拠運動の一事例である文化施設タヘレスに着目し,文化的占拠としての場所の変容を,アーティスト・施設運営側への聞取り調査と,タヘレスを巡る外的状況の変遷から明らかにした.占拠運動は分断期に忘却されていた地区の歴史・文化的価値を再発見する役割を担い,ジェントリフィケーションの過程において文化シーン創生を誘発したが,それは経済的価値へと置換されていった.タヘレスは文化的占拠として観光地化し,芸術空間としての真正性において内部批判を生み出したが,一方ではそれにより施設存続が可能になるという葛藤を抱えた.タヘレスは,土地を巡る資本との対立構造において自由空間として意識され,ジェントリフィケーションなどの資本主導の都市変容に直面する文化施設としてシンボリックな意味を担っている.

  • 阿部 康久, 金 紅梅
    2014 年 87 巻 3 号 p. 248-266
    発行日: 2014/05/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    本稿では日系電機・電子部品メーカーA社の中間材を扱う上海における三つの販売部門を取り上げ,製品特性の違いにより取引先企業の本社所在地別構成や人材現地化の程度にどのような差異があるのかを検討した.結論として三つの総括部のうち,中国企業向けの販売比率が最も高い第1総括部では,管理職などへの中国人人材の登用が進んでおり,現地法人からの提案を受けるかたちで中国市場の需要に合わせた製品の開発・販売も行われていたが,それが低い第2総括部と第3総括部ではこのような傾向はみられなかった.特に第3総括部では,垂直統合型の製品を販売しているため,グループ企業などの日系企業への販売が多く,中国人人材の管理職への登用はあまり進んでいなかった.同社では今後一層人材の現地化を進めていく必要性が認識されていた.その一方で同社は,日本本社が取引に関する決定権を持ち続けながら,本社の現地法人への支援機能を強化する方針も採っていた.

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