本研究では,長崎県長与町の果樹栽培地域において,農家間の社会関係および地域外アクターとの関係性が農業の維持に果たす役割を,社会関係資本の視点から明らかにした.社会関係資本については,「結束型/橋渡し型」および「構造的/認知的」の両区分に基づいて検討した.
研究対象地域では,柑橘研究同志会の活動のように戦後早くから地域的協働が進んでいた.1990年代後半以降は,農業存続への危機感から新たな協働が模索されている.地域内の役割などの構造的・結束型社会関係資本は,農業に関連する地域的協働を可能にしてきた.協力の規範や信頼といった認知的・結束型社会関係資本は,変化を伴いつつも高い水準で維持されている.行政との長期的な信頼の構築は橋渡し型社会関係資本として機能し,現在でも「ながさき型集落営農」などの新たな取組みを支えている.一方で,特定農家への役割の集中など,農業の地域的協働には新たな問題も生じていた.
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