ナミビア共和国北東部のブワブワタ(Bwabwata)国立公園で暮らす地域住民クエ(Khwe)の人々の生業活動が,公園内の自然環境に与える影響について明らかにした.4カ月の住み込みによる参与観察や聞取りと,植生調査や地形測量などの定量的調査の結果から,国立公園制定にともない設定された二つの区域では,採集・伐採活動の有無による植生構造の差異が推察された.また,伐採と栽植によって有用樹種の分布が偏り,村周辺の植生景観が影響を受けていることが判明した.一方で,伝統的に行われてきた野焼きや,一部の住民によって行われている農業は,周辺環境との有機的な関係が考慮されており,自然環境の維持や管理に関わっていることが示唆された.クエの人々が営む生業活動は,周辺植生に大きな影響を及ぼしその景観を形成しているが,自然環境についての深い知識と認識により,国立公園の自然環境の維持管理の役割を担っている一面もあることが考えられる.
農産物産地の形成と産地間競争に関する既往の研究では,イノベーションが競争を駆動するものとして認識されていたが,その具体的なプロセスと地域的差異については必ずしも詳しく論じられていない.本稿は農業において技術の研究開発から普及を経て導入に至る過程をつなげて把握すべく,イチゴの品種の育成・普及を素材として検討した.この結果,まず,規模の大きな産地は小さな産地より速く品種が普及する傾向にあること,大きな産地ほど多くの品種が育成・登録されていることが伺えた.また,大きな産地では県内の試験場で育成された特定の品種の最終的な普及率が高かった.これらの産地では農協を通じた系統出荷率が高く,農協は,新品種への転換の方針決定と情報提供により,普及の速さと最終的な普及率を高めていた.産地におけるイノベーションは,研究の規模と蓄積,生産者の組織化の態様という各産地の事情を反映した過程であるといえる.
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