在日外国人の集住地区をめぐっては,その特徴や形成要因に関する厚い研究蓄積があるものの,集住による社会的影響は十分に解明されていない.本研究では,在日外国人に対するインターネット調査を実施し(9割弱は日本語版の調査票に回答),集住が近隣ネットワークを介してホスト社会への統合にどう作用するのかを定量的に検証した.分析の結果,在日外国人の集住と統合の間には直接的な関係がないものの,近隣ネットワークが媒介する有意な負の間接効果が確認された.その間接効果として,(1)日本人との近隣ネットワークは統合を促進するものの集住がそのネットワーク形成を妨げる効果,(2)外国人との近隣ネットワークは統合を妨げるものの集住がそのネットワーク形成を促進する効果,という二つの経路が示された.本研究から,在日外国人の集住と統合を結ぶ媒介因子として,近隣ネットワークとその種類に着目することの重要性が示唆された.
本稿ではアルコール依存症者のライフヒストリーを通じて依存症者の場所の変容を明らかにする.人文地理学の「癒しの景観」研究では,依存症からの回復には安定した場所の確立が重要であるとされてきた.本稿では,場所概念を再検討した上で「癒しの場所」概念を提起する.場所を日常的に繰り返し経験される社会関係の中で変化する出来事ととらえ,それを生成するリズムに着目する.依存症者は当初,飲酒のリズムにおいて「癒しの場所」を得るが,それは規範的な社会生活のリズムとの不一致によって損なわれる.依存症者は回復のための会合である自助グループや,非公式的な集まりにおいて,社会生活のリズムに準拠しながら主体的に社会関係を構築することで「癒しの場所」を生起する.さらに,祈りのような身ぶりの反復から生じる自他の生への肯定からも,場所が生成される.このような「癒しの場所」の創出は,喪失感や恐れを受容する過程を伴うものでもあった.
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