地理学評論 Series A
Online ISSN : 2185-1751
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97 巻, 1 号
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総説
  • 大村 纂
    2024 年97 巻1 号 p. 1-14
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル フリー

    熱収支の諸過程は気候の成因,変化に重要な役割を果たす.従来の収支項の誤差は約±20 W m−2であった.この分野はほとんど伝統的とも言える計算のみによる方法に偏り,観測が軽視される傾向があった.筆者は熱収支項の実測値を収集したGlobal Energy Balance Archive(GEBA)と良質の放射観測のためのBaseline Surface Radiation Network(BSRN)を立ち上げ,さらに大気大循環モデルGlobal Circulation Model(GCM)の熱収支項計算過程の改良に参加して熱収支の精度の高い計算結果を得た.これらを使い新たに熱収支過程を解析して,以前は知られていなかった事実や現象の発見に至った.それらは短波放射に関してMissing absorption, Global dimming, Global brightening,大気長波に関してMissing emissionとよばれる現象で気候システム内の諸過程の理解を高める貢献をしてきた.大気長波放射は全球で増加しており,その率は現行の放射強制力を上回る.放射の長期高精度観測は気候システムのモニターの役割を果たし気候予報の逐次改良に貢献する.

短報
  • 穂積 謙吾
    2024 年97 巻1 号 p. 15-34
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究は,宮城県のギンザケ養殖業経営体が,主に1995年以降にどのように生産額を増加させたのかを,個別の経営体の生産活動と出荷活動に注目して明らかにした.宮城県のギンザケ養殖業においては,養殖面積を拡大する余地がなく,また海外産サケマスとの競合関係にあった.その中で経営体は,生簀1基当たりの種苗の搬入量を増加させられる仕組みを構築しながら所与の漁場で生産量を増加させるとともに,魚の品質を向上させ単価の下落を防止することで,生産額を増加させていた.種苗の搬入量を増加させられる仕組みの構築と魚の品質の向上を実現するための具体的な取組みは,経営体ごとに異なっていた.その背景には,特定の取組みの必要性や優位性が顕在化していないことがあった.以上から,経営体は自身の直面する条件に応じて種苗の搬入量の増加と魚の品質の向上に取り組み,生産額を増加させていたことが明らかとなった.

  • 原 将也
    2024 年97 巻1 号 p. 35-49
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル フリー

    本稿では,ザンビア北西部において,多民族地域が形成された背景と伝統的権威が地域社会で果たしてきた役割を歴史的に検討し,地方分権化の進む今日のサブサハラアフリカにおいて,伝統的権威のもつ可能性と問題点を考えるための基礎的情報を整理して提供する.ザンビアの前身である北ローデシアは,イギリス南アフリカ会社およびイギリス植民地省によって植民地統治された.保護領期には間接統治の下,チーフという地位が創出され,チーフは植民地統治者側でその末端として行政や司法に携わった.ただし,チーフは地域の実情に応じて統治を行っており,ザンビア北西部のカオンデの領域では,カオンデ以外の民族の移入者を受け入れ,複数の民族で構成される多民族地域が形成された.現在の地方分権化では,地域をよく知るチーフが,地域の統治において重要な役割を果たす可能性をもつ一方で,個人的意向を強く反映した偏った統治を行う危険性も秘めている.

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