1. 酢川(pH=1.2-1.8)と須川(pH=4.0-5.0)の特異性は高湯温泉と附近の1小流が決定してゐる。他の支流のpHは大部分は5.6である。
2. 酢川のpH 1.2は他に比較して極めて強い酸性である。pHの變化は水量の増減に反對である。
3. pH分布では3段の變化をみせ,酢川1,須川6の水量の割合で合する地黙の變化が最も大である。この變化はFe, SO
4, Clについても同様であらう。
4. 水温は意外に複雑な條件に支配されるらしいが全體として安樂椅子状の變化を示してゐる。
5. 酢川には水中生物は全く見ることが出來ず,須川ではカハゲラのみしか發見出來なかつた。
6. 珪藻は魚類の棲息限界であらうといはれるpH 5.0の所に於て見出された。
7. 魚類,水稻等はpHの變化が少なければ漸次高度の酸水にも適應して行くが急激な變化に對しては耐へられない。
8. 飲用水としては勿論,灌慨水としても使用することが出來ない爲特殊の水路系統を示してゐる。
9. pHの大は發電所の設置を不可能にし,舟,橋の耐久力を減じ,又鐵の多いことと共に石礫をもろくしてその利用度を低くさせてゐる。
10. 須川沿岸の果樹園とpHとの關係は未詳である。
終りに臨み本稿を草するに當つて文獻を貸與され,酢川及須川の水の分析,原稿の訂正等絶へず御指導と御援助を下さつた吉村先生,並に御鞭撻下さつた恩師長井先生に厚く感謝する。
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