1. 牧畜の經營形態の分類とその牧畜方法は次の如きものである。
Ai 遊牧………………………………………放牧
Aii 移牧………………………………………牧場放牧
Aiii 植民地的牧畜……………………………牧場放牧
Bi 有農牧畜…………………………………更生放牧
Bii 主農牧畜…………………………………更生放牧
2. 日本牧畜は農家經濟より見ると殆ど無畜に等しく,耕地の側から見て小規模な主農牧畜である。但し北海道は牛に依る小規模の有農牧畜と馬に依る主農牧畜とが結合したものと云へよう。
3. 日本に於ける牛馬の總頭數とその分布地域は殆ど徳川時代に於て決定して居り,其の後は著しく増減がなく,停滯してゐる。
4. 極く最近になつて馬の犠牲に於てその減少に比例して半の増加が行はれて居り,一部に微小な酪農的傾向が現れてきてゐる。
5. 馬の對面積密度の大なる地域は,廣い平坦面或は起伏の少ない面が牧場として利用され得る地方の周邊部に多く,島嶼或は半島等には少ない。
6. 牛の大密度地は,馬の牧場よりば廣くない平坦面或は起伏が小さくない面のある地方が生産及び育生地としてのものであり,その周邊の低地が使役地或は肥育地としてのものである。
7. 牛の多い地方と馬の多い地方とが重複する場合には,牛は山地に或は又島嶼や半島に分布し,馬が平地及び山麓を占めてゐる。
8. 豚は人口との關係が密接で,大都會附近に極めて密度が高く,最近に於て食用家畜を兼ねる様になつた牛が,肉食開始の時代に少なかつた地方に偏在して飼育され,肉需給關係を調節してゐる。(完)
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